弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係等の法律問題についての発信をしています。

タグ:法律相談

弁護士の満村です。

ここ数か月の間に発信者情報開示請求についての複数の相談を受けました。

一般論として、本当に不法行為となるような表現なのか疑わしい場合には裁判例などを通して十分な検討が必要ですし、交渉の場で請求されている慰謝料額が相当な額なのかという検討も必要で、やはり応じるべきでない相手方の主張には反論を加えなければなりません

その点、やはりこの問題は弁護士が入らないと難しいところがあるかと思います。

今回は報酬額も含め、僕が弁護士としてどういったことをしているか簡単に紹介したいと思います。

1 プロバイダからの意見照会について

発信者情報開示請求の「発信者」とされてしまった方が最初にそのことに気づくのは多くはプロバイダからの「意見照会書」かと思います。
そこには、あなたがどのサイトで、いつ、どういった内容の投稿をしたかが特定されており、
この投稿について開示を請求されていますよ、ということが書いています(開示を請求されているのはあなたではなくプロバイダです)。

これには「回答書」が一緒についていて、そこに
開示に同意するor同意しない、かどちらかを選ぶ欄があり、同意しない場合にはその理由を書きこみます。これをプロバイダに返送することになります。

ここに書かれた不同意の理由はプロバイダにとって、開示を請求してきている相手方とのやりとりの出発点にもなるものですので、まだ訴訟当事者でない我々にとってもテキトーにあしらうことはできないものになります。

例えば、「同意しない 理由:何が悪いか分からない。あいつが悪いと思う。」
なんて書けば、プロバイダにまともな理由が無いと伝えるようなもので、
せっかく自分の代わりに相手方と対峙してくれているプロバイダを敵に回すようなものです。

この回答書の作成を、裁判例などを調査した上で代わりにやる業務をしています。

これを分量に応じて4万円~5万円(税抜き)投稿数が1件増えるごとに1万円増額でやっています。
この場合、法律相談料はいただきません。

業界平均より安いかどうかは納得感のためにもご自身で調べていただければと思います。

2 示談交渉について

この回答書を出しても、投稿内容次第で個人情報が開示されてしまうことは当然あります。
そうなるとおそらく次は相手方から「あなたの投稿で傷つけられました。示談するには〇〇万円払って下さい」等が書かれた通知書(弁護士が作成していることでしょう)が届きます。

このとき、既に上の「回答書」に書いた不同意理由としてこちらの反論の骨子は提供できているはずなので、ご自身でこの通知書に返答することはできなくはないと思います。

また、回答書作成の料金の範囲で大体の慰謝料額の相場もお伝えするので相手方の言う示談金額が相当かどうかの判断もある程度はできるかと思います(相談時に分かっている情報の範囲内の話にはなりますが)。

弁護士費用これ以上は出せない・・・ということもあると思うのでここからはご自分で対応されることはナシではないかなと思います。
ただ、弁護士がついているか否かで相手の出方も変わり得ますし、相手方の主張を理解できないこともでてくるでしょうから勿論つけていた方が安心です。

この示談交渉については、
着手金10万(税込11万円)~15万円(税込16.5万円)
成功報酬 10万円(税込11万円)
法律相談料 なし

としています。

3 損害賠償請求訴訟について

示談が不成立となった場合は、次は損害賠償請求訴訟を提起されることになります。
もっとも、費用対効果の面で相手方もここまで踏み切るか確実なところは言えません。
と、いうか、相手方(及び代理人)次第では、訴訟はしたくないから示談交渉でごり押ししてくることが想像に難くありません。

ただ訴訟になってしまった場合は、弁護士費用も別途かかってきてしまいますし、訴訟での弁護士費用はその手間やかかる時間からいって、安くても30万円くらいはかかってきてしまうと思います。

ここ最近の例で見たところ、権利侵害の性質として多くは名誉感情侵害(侮辱)が主張されていますから、裁判所で認容される慰謝料額はせいぜい2、30万円多くて50万円とかでしょう(1ケタ万円などかなり低額の裁判例もあります)。
勿論投稿内容や回数などによってはもっと高額になることもありますが。

これに相手方の弁護士費用の一部が損害額としてのってきて(特に発信者情報開示請求の費用)全部で50万円~100万円くらいかなあと思います
発信者情報開示請求の弁護士費用は全額認められるのか一部なのか裁判例でもわかれているので難しいんですが、、ある程度一律の基準が確立されてほしいものです。

で、すでにこちらの反論の骨子が弁護士による「回答書」である程度は分かっている上に、
発信者情報開示請求の本案訴訟で負けているというこの段階(新たな事実主張ができない限り権利侵害性が認められる可能性はそれなりに高い)
でさらに弁護士費用を払うのか、というのは考えてしまう問題だと思います。

勿論、つけた方が安心ですし、弁護士として無責任に「もう弁護士つけなくていいよ!」と言うことはできません。
ただ、弁護士なしの本人訴訟は制度上当然できますし、裁判所とも適宜話し合いながら所定の書式にすでに提供された反論の骨子を書き、「この事実は認める」「これは事実ではない」などと慎重に主張していくことは可能です。

もちろん積極的におすすめはしませんが、弁護士を頼まないのは選択肢としてはナシではないでしょう。

僕が受ける場合は、
着手金 15万円(税込16.5万円)~25万円(27.5万円)請求額や分量により決定
成功報酬 経済的利益(減額幅)の16%
法律相談料 なし


でやります。

4 最後に

今回書きたかったのは以上になります。


誤解もあるかもしれませんが、僕は権利侵害を無理にでも擁護してお金を儲けようなどとは思っていません(この件で儲けるつもりがそもそもありません)。
また、特定の人物や団体への対抗意識でやっているわけでもありません(そんな暇ではありません)。
ただこの件で困る人が増えるだろうなと思って、情報発信や助言等をしていて今に至るというだけです。

やったことはやったことと認める姿勢は必要です。
ただ、人の権利を侵害していないのであれば対抗しましょう。
権利を侵害してしまったのであれば反省しなければなりませんが、法的に正当な範囲で償う術を考えましょう。

この問題にこれまで関わってきた「いち弁護士」として今提供できることについて書きました。
メール、電話、Zoom等でも相談受け付けています。最初の連絡はこちらまでmitsumura@vflaw.net
回答書には期限もありますので出来る限り迅速に対応します。

なお、上でお示しした報酬額や一連の手続きに対する僕の考えについてのお問い合わせには、自分が当事者になったorなりそうという方に限定して対応することとなります。
多忙のためです。申し訳ありません。
上のような具体的な依頼はしないが、相談だけ聞いてもらいたいという方にも対応しています。
その場合、30分3000円(税込み3300円)としています。

では!

若い女子プロレスラーがSNS上で誹謗中傷を受け続け自死を選んでしまったという痛ましい事件が発生してから、ネット上の誹謗中傷への対策が社会的急務となっている気がしています。
弁護士としては、社会的責務を果たす意味でもこの問題に可能な限り注力していきたいと思います。
本記事では、皆さんが気になっているであろう「発信者情報開示請求」を実際にするにあたっての要件を解説していきたいと思います!
この請求が通れば、誹謗中傷をした張本人の個人情報を取得でき、損害賠償請求や刑事告訴ができます!

まずは、プロバイダ責任制限法第4条1項から分かる同請求の要件をまとめるとこうなります(用語が難しいですが後でわかりやすく解説します!)
①特定電子通信による情報の流通がなされた場合であること
②当該情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明白であること
③発信者情報の開示を受ける 正当な理由が存在すること
④発信者情報の開示を求める相手方が開示関係役務提供者であること
⑤開示を求める情報が発信者情報に当たること
⑥上記発信者情報を開示関係役務提供者が保有していること
これらを充たせば、誹謗中傷を行う人の情報を取れるわけです!
では、各要件ごとに解説していきますね。

①特定電子通信による情報の流通がなされた場合であること 

「特定電気通信」というのは、「不特定の者により受信されることを目的とする電気通信の送信」と定義されています。
難しいかもしれませんが、SNSの書き込みがされた場合や、電子掲示板への投稿、また、このようなブログ記事の投稿がされた場合といったことです。
同じ電気通信でもメールの送信は「不特定の者」に対してされるものではないのでこれに当たりませんね。
嫌がらせメールのようなものは大量になされることは考えにくいですし、個別にブロックしてしまえばすみますよね。基本的にみんなが見れるネット上に情報として残ってしまうこともありません。

②当該情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが明白であること  

まずは、当然ネット上の書き込みが自分のプライバシーや名誉権等を害するひどい内容のものであることが必要です。
例えば「生きている価値がない」とか 、根拠もなく「あいつは人のものを盗んでいる」とか、または「あいつは〇〇に住んでいるから嫌がらせをしてやれ」みたいなことですね。
企業が被害者であれば、「あの会社は毒入りの食品を売っている」とかになりますね。

これに加えて違法性阻却事由が無いことが必要です。ごく簡単にいうと、言論に公共性があり、公益目的があるような場合は、たとえ権利侵害的表現がなされても違法なものとされません。例えば、記者が政治家の汚職を暴いたところ名誉毀損で訴えられたら大変ですよね。 もちろん真っ赤な嘘なら違法になりますが。

難しいところなので、この辺の詳しい解説はまた別の記事でやりますね!

③発信者情報の開示を受ける 正当な理由が存在すること 

誹謗中傷している人の個人情報を、例えば個人的に嫌がらせをするために入手したり、それを欲しがっている人に売りつけたりする目的で入手しようとすることが認められたらそれはそれで大変ですよね。
これは、正当な権利行使の目的でしか開示請求はできませんよ、という要件です。
具体的には、記事等の削除請求、損害賠償請求、刑事告訴、謝罪広告などの名誉回復措置などの目的で請求することがここでの要件になります。

④発信者情報の開示を求める相手方が開示関係役務提供者であること 

開示関係役務提供者」、これまたよくわからない言葉ですね。
単に、サイト運営者やサーバーの提供者などのことと考えればいいです。
発信者ではなく、発信者の発信の土台を提供している会社ということですね。

⑤開示を求める情報が発信者情報に当たること 

どのような情報の開示を求められるのかということは、プロバイダ責任制限法の発信者情報を定める省令に規定されているんです。ここに規定されている情報以外は今のところ開示請求できません。
その開示請求できる情報は次のとおりです。
 ・発信者等の氏名・名称
 ・発信者等の住所
 ・発信者の電子メールアドレス
 ・侵害情報に係るIPアドレス、ポート番号
 ・インターネット接続サービス利用者識別符号
 ・侵害情報に係るSIMカード識別番号
 ・侵害情報が送信された年月日および時刻

⑥上記発信者情報を開示関係役務提供者が保有していること 

上に出てきた「開示関係役務提供者」が情報を開示する権限を有していて、さらに情報を抽出してそれを開示することが現実的に可能あることとと理解されています。
あまりに多大なコストや時間が係るような場合はこの要件を充足しません。別の請求先を考えるべきということになりますね。

法律相談について 

以上のような要件を充たす場合には、被害を受けた個人が自分で請求することもできます。もちろん法人も請求主体ですよ!
今後、どのような流れでこの請求をしていけば良いかということも記事にしようと思いますが、自力での請求はなかなか大変な作業になってしまいますので、弁護士に頼むことが一般的には推奨されます。
このようなネット上の誹謗中傷について、発信者情報開示請求を検討しているという方の相談を受け付けておりますので、mitsumura@vflaw.netまでメールをいただければと思います。
ではでは。

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