弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係等の法律問題についての発信をしています。

カテゴリ: 知的財産権

弁護士の満村です。

今回は、音楽の著作権についてですが、皆さまも例えば「路上ライブって適法なの?」「YouTubeで勝手に人気の曲を使ったり演奏したりしているのは違法じゃないの?」という疑問を抱かれたことがありませんか?

この疑問を解くにはまずは基本的な知識から習得していかなければなりません。

さらに応用的な音楽に関する著作権法の深みも知りたい方向けに最近の最高裁判例で「演奏主体性」が問題となった音楽教室事件を紹介します。
これは、JASRACが音楽教室から音楽の使用料を徴収しようとした動きに対して、音楽教室を開いている法人・個人事業主らが総出で反撃した裁判の結果である令和4年10月24日最高裁判決です。

この記事を読んでいただければ、日々社会にあふれる音楽の裏にある権利の問題が良く理解できるかと思います!

目次
  1. 音楽の著作物とは
  2. 路上ライブやYouTube等での音楽利用は違法なのか
  3. 音楽教室からの徴収事件(最高裁判決)

音楽の著作物とは

音楽を作曲すると、作曲者には著作権が発生します。

主に演奏権という権利が発生するのですが、その内容はこうです。「著作物(音楽)を、公衆に直接見せまたは聞かせることを目的として、演奏することができる権利(著作権法第22条)

CDやスマホでの音楽再生でも、基本的にこの「演奏」に含まれます

そして、「公衆に直接見せまたは聞かせることを目的として」という要件がありますが、不特定多数・不特定少数・特定多数の者の前で演奏すればこれを満たすとされます。特定少数のみセーフという要件になります。
個人的な練習や音楽鑑賞はもちろん、特殊な例ですが結婚披露宴の余興で素人が演奏する場合には多くの来賓がいても「特定少数」とされるだろうと考えられています。
来賓は親族・友人といった限られたコミュニティが想定されるし、素人が歌う分には影響も限定的で、「不特定少数への演奏」と評価しても差し支えないだろうということです。

要は、演奏されることによる影響が大きいか、小さいか、という要件と考えた方が簡単かもですね。

他方で、入会金を支払えばだれでも入会できるダンス教室での音楽使用について、「公衆に対するものと評価するのが相当である」と判断されたことがあります(社交ダンス教室事件)。
だれでも入会でき、入れ替わりもあることで、「不特定」に向けた音楽の再生と見れる、と考えられたものと思われます。

また、「営利を目的としない上演等(著作権法第38条)」について例外規定がありますので、例えば学園祭で一切入場料等をとらずに公衆に向けて演奏する場合には演奏権侵害にならないことになります。
じゃあ、投げ銭を貰おうとしている路上ライブで人の曲を使っていたら演奏権侵害じゃないの?という疑問がわきますよね。 というところで次に行きましょう☟

路上ライブやYouTube等での音楽利用は違法なのか

路上ライブは、ストリートで不特定多数を対象に演奏しますし、それで他のアーティストの人気曲を歌っていたりします。

「いやいや、よくないんじゃないの!?」と思ったことのある方もいるのではないでしょうか?

でも、これはあの著作権管理団体JASRACが「著作権侵害でない」と考えているようです。

路上ライブでは、多くの演奏者がギターケースか何かに投げ銭してもらえることを想定しているわけですが、これについては、「投げ銭をしなければ聴けないわけではない」ということで、演奏の対価と見なされていないようです。

ですので、営利を目的としないとされ、先ほどの38条でセーフということになるわけです( 参考 https://digireco.com/jasrac-interview2018/ )。

では、ライブハウスで高校生の下手なコピーバンドが仲間内を集めて演奏を披露するというのはセーフでしょうか?
これは一旦アウトです。

ライブハウスでは、入場料やドリンク代がかかりますから、「お金を払わないと聞けない」に当たるわけです。(下手過ぎて、その曲とは認識できないレベルならいいですが)

但し、ライブハウスでは、事前にライブハウスが著作権管理団体に使用料を包括的に支払っている(包括契約)ケースが多いため、実際にはセーフとなっているでしょう(そのような対応をしていないライブハウスでの演奏は・・・アウトです!)。

次に、YouTubeです。

ここで他人の音楽を使用すれば、「不特定多数」に向けた演奏になることは明らかでしょう。

しかし、YouTubeは、予め著作権管理団体と先ほどの包括契約を締結しているため、「歌ってみた」動画は適法となるんです(著作権管理団体が管理していない楽曲等は基本的にNGです)。

ただ、自ら歌う場合ではなく、アーティストの音源を直接流してしまえば、その音源の収録や編集等を行ったレコード会社の権利である原盤権を侵害してしまします。

また、そのアーティスト自身の持つ実演家人格権という固有の権利も侵害する可能性もありますので、このような使用はしてはいけません。

さて、本題の最高裁判決につなげるためにもう一つのケースを考えます。ここからさらに応用的になります。

カラオケスナックで客が歌を歌うというケースです。

スナックの客は誰が来てもいい店が普通でしょうから、そこで歌う行為は「不特定多数」に向けた演奏と言えそうです。

しかし、客が他の客に自分の歌の対価を要求することもないでしょうし、素人の歌が何か影響力を持つことも普通ありません。

また、一人ひとりの客の演奏行為を捕まえて使用料を個別に徴収するわけにもいきません。

しかし、著作権管理団体はどうしてもこの日本中で行われている演奏行為から使用料を徴収したかったのです。

なんと、クラブキャッツアイ事件において、下記の理由から、客のカラオケでの歌唱は、スナック運営者による演奏行為と同視できるという判決が出されました。

1 このカラオケテープ及びカラオケ装置を管理している主体はスナックであるということ 
2 及びこのカラオケ装置を使用して利益を得ているのはスナックであること

 
これをカラオケ法理などと言います。

そして、、JASRACの使用料徴収はこの理論を論拠として音楽教室にも及ぶこととなったのです・・・☟

音楽教室からの徴収事件(最高裁判決)

ヤマハ音楽振興会など250程度の音楽教室運営者らが、JASRACに対して、レッスンの際に音楽を演奏することについて、使用料を支払う義務がないことについて確認する訴訟を提起しました。

確かに、不特定多数の生徒が想定される音楽教室において、他人の曲を演奏した場合、演奏権侵害が起こりそうです。

実際に、教師がする演奏については、この使用料の徴収が認められることになりました。

しかし、カラオケ法理を引っ提げて最強に思えたJASRACは、「生徒の演奏についても教室側の演奏と同視して使用料を徴収できるか」という論点においては、まさかの敗北を喫しました。

なぜ、生徒の演奏は著作権上セーフなのか、最高裁は下記のような理由を示しました。

1 生徒の演奏は、教師から演奏技術等の教授を受けてこれを習得し、その向上を図ることを目的とし  
  て行われるのであって、前記課題曲を演奏するのは、そのための手段に過ぎない
2 生徒の演奏は、教師の行為を要することなく生徒の行為のみにより成り立つものであり、教師によ
  る伴奏や各種録音物の再生が行われたとしても、これらは、生徒の演奏を補助するものにとどまる
3 教師による課題曲の選定や生徒の演奏への指示・指導は、生徒が前記1の目的を達成することが 
  できるように助力するものにすぎない


先程のカラオケ法理のざっくりとした要件を超えて、より実質的な部分が重視され、このような結論となりました。
この件、地裁段階ではJASRACが生徒の論点でも勝っていたので、もしかするとJASRACの全勝もあり得ました。

JASRACの使用料徴収の動きに少し歯止めをかけた最高裁判決だと評価することができます。


今回は以上です!

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お問い合わせは、弁護士法人長堀橋フィル( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで!

映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」(8月2日公開)の製作委員会が、主人公の名前を「小説ドラゴンクエストV」から無断で使用したとして、著者の久美沙織さんから訴えられた事件で、久美さんの請求が棄却されたとのニュースが飛び込んできました。

ところが、「なぜ請求が棄却されたか」について詳しく解説するような記事はあまり見当たりませんので、私なりに著作権法の知識の紹介と共に解説していきたいと思います!

事件の概要をご存じの方は目次で「著作物性が認められなかった理由」の方に飛んでください。

目次

ドラクエ事件の概要

ドラクエのゲームでは主人公の名前を自由に設定できるところ、久美さんは小説版の主人公を「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」として、これのニックネームとしては「リュカ」としていました。

この命名に自身の創作性が認められるべきなのに、映画版ドラクエでは、主人公の名前を「リュカ・エル・ケル・グランバニア」と無断で改変して使ったとして、これが著作権侵害だと主張していたとのことです。

名前としては、かなり長い部類ですし、創作的な感じもするので著作物とされてもおかしくないのでは??と思う方もいるかと思います。

しかしながら、これについて判決では「人物の名称は、思想または感情を創作的に表現し、文芸や美術などに属するとは言えない」とされ、著作物ではないと判断されてしまったようです。

この判決文通りだとすると、人物の名称はどのようなものであっても著作物でないと考えるべきようにも考えられますよね。

では、ここから、なぜこのような判断となったかについて書いていきたいと思います。

著作物性が認められなかった理由

まず、「著作物」と言えるためには、「思想または感情を創作的に表現し、文芸や美術などに属するもの」と言えなければいけません(著作権法第2条1項1号)。

これだけ見るとかなり高尚な芸術でないと著作物ではないのかと錯覚しますが、実際のところ「特に高邁な学問的内容・哲学的思索・文学的薫り等が要求されるものではなく,人の考えや気持ちが現れているものであれば足りると解されている。人の思想・感情のレベルは裁判所で判断すべきものではなく,またしてはならないものであると考えられるので,幼稚園児の絵も著作物たり得る。」と考えられています(著作権法 第3版/中山信弘)。

では、キャラ名についてはどう考えられるでしょうか?

分かりやすく、例えば、ポケモンの「サトシ」の名前を考えてみましょう。

「サトシ」というのは、日本人男性の名前としてよくあるものと捉えられますが、いくらここで例えば「このポケモンのストーリーからすればサトシという主人公の名前はベストであって、長い期間と労力をかけて考え出された名前である」と主張したところで、ありふれた名前としか言いようがなく、また、「サトシ」という名称があらゆる場面で簡単に使用できなくなると考えると「それはダメだろ!」とすぐ分かりそうです。

この点、東京地裁決判平成22年12月21日(廃墟写真事件)では、「廃墟を発見ないし発掘するのに多大な時間や労力を要したとしても,そのことから直ちに他者が当該廃墟を被写体とする写真を撮影すること自体を制限することはできない」と述べられています。
このことからも、著作物性を判断する際には、「いか考えたか、労力を要したか」といったプロセスはほとんど考慮されないと考えられます。

また、キャッチフレーズなどの短文の著作物性について判断された裁判例を紹介しますと、英会話教材キャッチフレーズ事件があります。
「英語がどんどん好きになる」「ある日突然、英語が口から飛び出した!」という宣伝用のキャッチフレーズが著作物だと主張されたのですが、「他の表現の選択肢がそれほど多くなく、個性が現れる余地が小さい場合には、創作性が否定される場合はあるというべきである」として、これらキャッチフレーズの著作物性が認められることはありませんでした。

宣伝用キャッチフレーズという性質も関係していましたが、これと単純な文字量も相俟って「個性が現れる余地が小さい」と考えられたと言えます。

では、「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」は名前としてはかなり長く、奇抜な印象も抱きますが、とはいえ名前として把握される文字の羅列という枠を超えるものではなく、そして名前なので一般論としてそれぞれの文字に何か語義があってそれぞれ組み合わせることで新たな意味が発生するというものでもなく、また、単純に文字量として見ても多いとは言えませんので、個性が現れる余地が小さいと言わざるを得ないと思われます。
名前を、それを考えた人の著作物とすることでその名前を使用できなくなることへの純粋な違和感もありますし、やはり、キャラ名が著作物性を獲得することはできないでしょう。

商標権について

本件で、仮に久美さんが「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」を商標登録していれば、映画版の無断利用について商標権侵害の責任を問えた可能性があります。

商標とは、市場において、自社の商品やサービスを、他社のものと区別して需要者に示すためのいわば「めじるし」であり、商品名やサービス名、あるいはロゴマークなどが商標の代表例です。

キャラ名も商標登録が可能です。

商標は著作物と違って、登録しなければ商標権は認められないところ、久美さんはこれを特に商標として登録していませんでした。

そして、商標権侵害に問うためには、①登録商標の使用または類似範囲での使用及び②商標的使用に該当することが必要とされるため、使用された場合に全てにおいて商標権侵害が認められるわけではありませんが、本件では商標権侵害となる可能性はあると考えられます。

上記要件①②については、またどこかで解説記事を出せればと思います。


今回は以上です!

著作権法は難解で、弁護士でも専門でなければ取り扱えない人はたくさんいると思います。
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お久しぶりです。
弁護士の満村です。

新たに法律事務所を開業してバタバタしたこともあり、しばらく発信活動は控えていましたが、今日は話題の(?)裁判例について紹介していければと思います。

東京地裁の令和3年12月10日判決、いわゆる「スクショによる引用リツイート」は違法だと判断した判決です。
以前の記事でこの問題について言及し、「他人のツイートのスクショを使った引用リツイートが違法と判断される可能性はあり、やめておいた方がいい」といった考えを示していましたが、がっつりアウトの判断が東京地裁によって下されました。以前の記事↓



「このスクショによる引用リツイート」とは下のような感じのものです。引用されているツイートは、スクリーンショットにより切り抜かれ保存された画像データです。
Web キャプチャ_4-2-2022_122222_twitter.com



Twitterには、正規の「引用リツイート」の機能があり、Twitterでは他人のツイートを引用する際には、この機能を使うことが推奨されています。
もっとも、現実には、正規の「引用リツイート」よりも「スクショリツイート」の方が多いのではないか??と思うほど、「スクショリツイート」は盛んに行われてきました。

なぜなのか?

日常的な使われ方を見ていると、①引用元のツイートをした人に、自分が引用していることをできれば知られたくない(「引用リツイート」だと通知が行っちゃう)、という感情によるものが多いのではないでしょうか。
そのツイートに対して否定的な見解を述べる場合に多用されてそうですから。
あとは、②引用元のツイートをした人にブロックされていて、正規のリツイートができないといったことやそれ以外の理由もあると思います。

では、なぜ「スクショリツイート」が違法となったのか。
裁判例に即してその理由を紹介していきます。

1 著作物性について


以前の記事でも紹介しましたが、著作権法によって保護される「著作物」と言えるためには、
その人の個性が現れている表現行為」、
もう少し分解すると、
その人の考えや感情が表れている表現行為」であればいいことになっています。
多くのツイートはこれに当てはまり、著作物として保護されることになります。
「今日は晴れてたので公園に行きました!」とかは単に事実の報告として著作物ではないでしょうが。。

ではでは、今回の裁判で対象となったツイートとはどんなものだったか。
対象となったツイートは複数ありますが、その一つは

「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう

「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く 同じ」だって言ってるんだよ。 結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃ ねーか。お前も含めてな。」
というものです。

著作物でしょうか?

著作物なんです。

裁判所はその理由を以下のように示しました。

「(上記の投稿)は,140文字以内という文字数制限 の中,意見が合わない他のユーザーに対して,短い文の連続によりその意見 を明確に修正した上,高圧的な表現で同人を罵倒するものであり,その構成 2には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である 原告の個性が現れているということができる」

「高圧的な表現である」ことも著作物性の根拠になっているようですね。
まあ、それほどツイート主の感情が詰まっているのだからということでしょう。
このように、内容の良し悪しと著作物性とは関係が無いということですね。

さて、このツイートが著作物であることはいいとして、問題は、「引用」が認められるかどうかです。

2 引用の成否について

著作権法32条には、「引用」についての規定が置かれており、簡単に言うと、
すでに公表された著作物を常識的な範囲内で使用することは著作権侵害じゃないですよ
というものです。

今回の発信者は、上の「卑怯者のクソ野郎じゃねえかツイート」をスクショで引用し、
「私に対してのリプ  何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」と呟きました。
意訳すると、「なんかすごい恫喝されてるけど皆これどう思います?ひどいですよね?私何もしてませんよ?」
ということで、これを言うために問題のツイートをスクショで引用したのです。

このスクショの引用が無いと、何を言っているのか分かりませんし、引用元ツイートの方が文字数が多いとはいえ「私に対してのリプ  何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」をメインとして伝えたいというのはわかるので、常識的な範囲内かなとも思えます。

ただ、裁判所はこう言いました。
「ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しな ければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうする と,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用すること なく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反す るものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。 また,前記認定事実によれば,本件各投稿と,これに占める原告各投稿の スクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。したがって,原告各投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しツイ ッターに掲載することは,著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないというべきである。」

①Twitterの規約違反やん!と、②スクショでかいし、これを晒すのが目的やろ?
です。

ネット上の記事を見ると、
①Twitterの規約違反をごり押しして「引用」を認めないのはおかしいのではないか?実質的な理由ではないですよね?という見解が見られます。

ただ、この①の理由の裏には、私が以前の記事でも述べた以下の理由が潜んでいるのだと思います。

スクショ画像が改変される可能性がある、投稿者本人がツイートを消した場合にも拡散することができるのでその場合明らかに投稿者の意思に反する拡散になってしまう、引用リツイートと違って見た人が元ツイートにワンクリックで容易にたどり着けるものでないため投稿者の利益とはなりにくい(むしろ晒されるだけになってしまう)等の問題がある
というものです。

なぜこれら理由が潜んでいると言えるのかというと、そもそもこれらの理由によりTwitter社は、利用規約で、正規の引用リツイート以外のリツイートを推奨していないと考えられるからです。

判決文にもこれら実質的理由が盛り込まれればよかったですが、実際は少し疑問符の付く判決になってしまいましたね。

以上から、私の見解としては、「スクショリツイートはやはり著作権侵害。訴えられる前にやめよう!」というものです。
ただ、この裁判、被告側が控訴しているようです。 もしかすると、高裁でこの判断はひっくり返るかもしれません。
注目していきたいですね。

このような著作権の問題のみならず、誹謗中傷やプライバシー侵害等ネット上のトラブルについて幅広く、ご相談を受け付けております。 御用の方は、mitsumura@vflaw.net までご連絡ください。では!

弁護士の満村です!

ネットの利用が拡大するにあたって増えている問題として著作権の問題があります。

伝統的には著作権は大型紛争(映画、有名な絵画、人気キャラクター等を巡る盗作、無断転載など)が主流で、これらを通じて裁判例も蓄積されてきたという印象ですが、最近はネットの広がりの中で必然的に小型紛争が日々発生しているという分野になってきています(勿論、弁護士を利用するほどの案件は多くないと思いますが)。

実は、著作権法ふくむ知的財産法は司法試験の選択科目(他には、倒産法、税法等)なのですが、選択科目であるがゆえに知的財産法についてあまり知識の無い弁護士はけっこういます(ちなみに私は知的財産法選択でした)。

で、弁護士でもそうですから当然法律家でない方の知識レベルも高いとは言えず、それ故、あまりよくわからない中で「著作権侵害だ!」と言ってみたり、実は他人の著作権を侵害しているコンテンツを知らず知らずのうちに享受してしまったりしています。

そんなこんなで、著作権についての発信をしようと思うわけですが、今回はTwitterにおける「ツイート」にまつわる著作権侵害について書いていきたいと思います。

“人のツイートを拡散したらその投稿者の著作権を侵害するか”ということが議論の対象です。

場合分けして、
①リツイート
②ツイートのスクショ等を添付してのツイート
③パクツイ(他人の投稿内容を自分の投稿として発信する行為)
を見ていきます。


1 著作物性

著作権侵害が認められるためには、大前提として、対象のコンテンツが法的に「著作物」と認められる必要があります。

この「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(著作権法第2条1項1号)。

ただ、これだと少しわかりにくいので、「その人の個性が現れている表現行為」くらいに考えてもいいと思います(多少法的な厳密さは失われますが)。

では、ツイートのような単なる文章が著作物性を持つことはあるのでしょうか。

掲示板への書き込みを書籍に収録したことが問題となった東京高判平成14年10月29日によると、「著作物性が認められるための創作性の要件は厳格に解釈すべきではなく,むしろ,表現者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りるという程度に,緩やかに解釈し,具体的な著作物性の判断に当たっては,決まり文句による時候のあいさつなど,創作性がないことが明らかである場合を除いては,著作物性を認める方向で判断するのが相当である。」と著作物性は緩やかに理解されています。

ツイートも単なる事実を述べたものや単なる挨拶のようなものではなく、その人の個性が現れたようなものであれば著作物性が認められるでしょう。
例えば、「今人気のカレーのお店に行ってきました!」くらいでは単に事実の報告であって著作物にはならないかと思いますが、そのカレーを自分なりにレビューするなどひと手間加われば著作物性が認められうるツイートになります。

2 著作権侵害

では、著作権を侵害するというのはどういう状態のことを言うのでしょう。

ここが著作権法の難しいところですが、著作物性が認められるとその著作物にはいろいろな権利が発生し、これらをまとめて著作権や著作者人格権などと言うことになります。
単に「著作権侵害だ!」と言っても、著作権法を知っている人からすると、「なに権について言っているんだこの人は・・・?」と悩むことになります。

全てを紹介できないので、ここではネットにおけるツイートの利用に関係しそうな公衆送信権複製権、氏名表示権を取り扱います。

公衆送信権・・・著作物をネットなどで公衆に対して送信し多くの人が見られるようにする権利

複製権・・・著作物を様々な媒体でコピーする権利

氏名表示権・・・自分の著作物を公表する時に、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば実名とするか変名とするかを決定する権利(著作者人格権)

名前の通りなので案外権利の中身は分かりやすいですね。
 (ちなみに、これら以外にも、音楽を演奏する権利、演劇を上演する権利、彫刻などを展示する権利なんかもあるんですよ。)

そして、①~③どれであっても、他人の著作物たるツイートをネットを使って公衆に送信し、また、同じ内容のツイートを自分のアカウント上に別途表示させているわけですからコピーしていることになります(①リツイートについては、全く同じツイートのTwitter上での表示させ方を変えるだけだという考え方から公衆送信権と複製権侵害を否定する向きがありますが分かりやすさの為ここでは捨象させてください)。

それでは、①~③は全てツイートをした人の上記権利を侵害することになってしまいそうですね。
ただし、これは法律の基本的な考え方の現れと言えますが、「本人が承諾しているならいいじゃない」という法理が適用されます。でも、「おれは承諾してないよ!」と言えば承諾していないことになるのか?
以下、Twitterの利用規約を見てみます。

Twitterの利用規約はいちいち長くてなんだかよく分からないと思った人も多いかと思いますが、
まず、
“ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社があらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、・・・配信するための、世界的かつ非独占的ライセンスを当社に対し無償で許諾することになります。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。”(一部省略)
と書いています。
「え、じゃあ使い放題?」と思われた方もいるかもしれないのですが、利用規約にはさらに、
“ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、・・・、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約・・・に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。”(一部省略)
と書いており、
「Twitter社が認める方法で使えよ」と読めます。
なので、Twitter上で明確に認められている「①リツイート」は既に投稿者の承諾を得ていてるのでOKになります。

なぜこれが認められているかを実質面で考察するとすれば、ツイートをその状態のまま表示させるのであれば誰が書いたものか分かるそのツイートが拡散されれば多くの場合投稿者にとってプラスになるそもそもその投稿者はツイートという形式で世界中に向けて自ら発信している、といったことが言えます。
そうだとすると、「②ツイートのスクショを添付してのツイート」も、だれの投稿か分かるし、その投稿者が発信したままの状態で拡散するというもので、いわゆる引用リツイートとほぼ同じですからOKと考えることができます。

しかし、この考えには落とし穴が無いわけではありません。
この②では、スクショ画像が改変されている可能性がある投稿者本人がツイートを消した場合にも拡散することができるのでその場合明らかに投稿者の意思に反する拡散になってしまう引用リツイートと違って見た人が元ツイートにワンクリックで容易にたどり着けるものでないため投稿者の利益とはなりにくい(むしろ晒されるだけになってしまう)等の問題があり、やはり引用リツイートとは性質が異なるため、Twitter社がこれを明確に禁止する可能性や裁判所が違法認定する可能性も無くは無いと思います。

Twitter社が明確に禁止しなくても、やはり「あまりしない方がいいこと」と言えるかもしれません。

これは難しい議論で、今後考え方は流動していきそうですが、このような著作権法について考える材料が少し提供できたのであれば幸いです。


あ、忘れていましたが、「③パクツイ」がありましたね。

言うまでもなくアウトです。

完全な盗用なので、利用規約により承諾が得られているものとも考え難く、他人の投稿から他人の名前を削って自分の投稿のように発信するものなので明らかに氏名表示権を侵害します。

バズっている投稿を見て、「あ、私もこれをやれば注目されるかも」と考えてしまうのは分からなくもないですが、やめた方が無難です。
「少し表現を変えればいいのか?」という疑問も湧くところですが、それについてはまた機会があれば記事にできればなと思います。

今回の記事は以上です。
もし著作権についての法律相談がありましたら受け付けておりますので、ご連絡ください。
場合によっては、削除請求や損害賠償請求が考えられますし、逆にそれらの請求を受けてしまったということもあり得ます。
ご相談はmitsumura@vflaw.netまで。

メールでの簡単な相談は無料でやっております。具体的な検討に入る場合には有料相談(30分3000円)とさせていただいております。電話やZoom等でも対応していますよ。
また、自分やそのご家族など当事者としての相談に限定させていただいておりますので、「自分には関係ないけどこれってどうなの?」などという相談は申し訳ありませんがお断りさせていただいております。

ではでは!

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