弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係等の法律問題についての発信をしています。

弁護士の満村です。

皆さまは、民事訴訟の口頭弁論の期日がリモートでできるようになったことをご存じでしたか?
2024年3月1日から改正民事訴訟法が施行されたことにより、今までできなかったリモート口頭弁論ができるようになったんです。

「あれ?これまでもよくリモートで裁判やってなかった?」と思われる方がおられるかもしれませんが、これまでは、弁論準備手続き期日等の非公開の争点整理手続きでウェブ会議が導入されていたにとどまっていました。

これが口頭弁論の期日まで広がったわけです。

「口頭弁論?」とはてなマークかもしれませんが、まあ簡単に言えば、皆さんのよく知っている法廷で行う手続きで、訴訟のメインの手続きとも言えます。これを省いて裁判をすることは基本的にできません。

では、本日、このリモート口頭弁論(高裁の第1回口頭弁論期日)に、諸事情でこちらだけ現地参加したので、軽くレポートしたいと思います。

まず、期日の10分弱前くらいに部屋に入ると裁判官がすでに3人そろっていて、職員の方があたふたと機材の準備をしていました。

書記官の座っている机の上に会議用マイクスピーカーが置いていて、「できればこのマイクが拾いやすいように話してください」と言われました。

撮影用カメラが証言台の位置に設置してあり、裁判官と私を画面に収めていました。


最初に書記官が口火を切って、「今から期日を開始します。第一審被告代理人の先生は聞こえていますか?」などと確認し、それから相手方の代理人の弁護士が被告側の席近くに設置されたモニターの画面に映し出されました。

このように法廷に沢山の機材が設置されていて新鮮な感じがしました。


この改正によって、弁護士の出張はさらに減少するでしょう。
そうすると、弁護士の業務時間は減り、より効率化することが考えられます。

(他方で、地方出張が無くなっていき、がっかりする弁護士もいるでしょう・・・笑)

依頼者様についても、無駄に弁護士の出張費用を負担することが無くなり、歓迎すべき法改正なのかなと思います。

これから、WEB上での書面提出に移行するような動きも加速するでしょう。

若いマインドをもった法律事務所からどんどんペーパレス化に向けて動き出すでしょうね。

以上、現場からの報告でした!

弁護士の満村です。

皆さまは、2023年5月に公布されたフリーランス保護新法をご存じでしょうか?

正式名称は、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」です。

この法律、2024年秋頃までに施行予定となっております。

その名の通り、これまで弱い立場に置かれがちであったフリーランスと、フリーランスに仕事を発注する事業者との間の関係性を調整・適正化するための法律ですね。

ですので、フリーランスの方だけでなく、働くほとんどの人が直面する可能性のある法律です。

以下、制定の背景から見ていきましょう!

目次

フリーランス保護新法が制定された背景

これまで日本では、企業による雇用を前提として、労働・雇用・社会保障に関するルール作りが進んできました。

例えば、解雇規制だったり、残業の規制だったり。

他方で、雇用関係にならないフリーランスは、必要な保護を受けられないままに不利な立場に置かれがちでした

2020年に行われたフリーランスの現状把握に関する調査では、フリーランスの5割超が取引先とのトラブルの経験があると回答しました。
トラブルに至らない場合でも、フリーランスの6割は取引先から業務に関する書面の交付がないか、あった場合にも内容が不十分であると感じているとのことです。

また、事業者から業務委託を受けるフリーランスの4割もの人が特定の1社のみと取引している現状から、発注者への依存度が高く、トラブルにあってもなかなか解決に至ることは難しい状況でした。

しかし、コロナ禍を経て、テレワークが増え、PCひとつでできる仕事も増え、フリーランス的な働き方が浸透し、今後、確実にフリーランス人口の増加が見込まれていました。

そのようにして、いよいよ、フリーランスを保護するルール作りが急務となってきていたわけです。

フリーランス保護新法の内容

この法律では、フリーランスのことを「特定受託事業者」と定義しましたが、分かりにくいので本記事では「フリーランス」でいきます。

簡潔に説明すると、本法律の決めたことは以下の通りです。

①書面等による取引条件の明示 (契約書が必須!)
②報酬支払期日の設定・期日内の支払
③禁止事項  
 a フリーランスの責めに帰すべき事由なく、
   成果物の受領を拒否すること  
   報酬を減額すること   
   返品を行うこと  
 b 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること  
 c 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること  
 d 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること  
 e フリーランスの責めに帰すべき事由なく発注内容を変更させ又はやり直させること
④ 募集情報の的確表示
⑤ 育児介護等と業務の両立に対する配慮
⑥ ハラスメント対策に係る体制整備
⑦ 中途解除等の事前予告

罰則

フリーランスに業務を委託する事業者がフリーランス保護新法に違反すると、公正取引委員会ならびに中小企業庁長官または厚生労働大臣により、助言や指導、報告徴収・立入検査などが行われます(履行確保措置)。

また、命令違反および検査拒否などがあれば、50万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。

また、フリーランス保護新法における50万円の罰金には法人両罰規定です。
発注した事業者が違反行為を行えば、違反者当人だけではなく、事業主も罰則の対象となります。

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか?

これからこの法律の施行によって、フリーランスの方々の処遇が徐々に改善される可能性が高いですが、かといって、すぐに事業者・企業側がこれに順応するかというとそうもいかないとも言えます。


フリーランスの方々は、この法律の中身をさらによく知って自らの利益を守ってください。 自分一人では不安な場合は、我々専門家に頼っていただければと思います。

事業者・企業側の皆様も、フリーランスの方への業務の発注について、新たに契約書を作成することが必要ですから、我々にご相談いただければと思います。
私の法律事務所では、顧問契約いただいている企業様には、メルマガにおいて新法対応の業務委託契約書ひな型を提供する運びですが、顧問契約がない企業様もご相談いただければ契約書作成のお手伝いをさせていただきます。

HP→弁護士法人長堀橋フィル  -大阪市中央区の法律事務所- (nflaw.jp)

お困りごとがありましたら、一度、ご相談ください!
法律相談料30分5,500円(税込み)
メール k-mitsumura@nflaw.jp   

弁護士の満村です。

昨今、有名人の性的スキャンダルが話題となり、芸能界やスポーツ界などを大いに揺るがしています。

情報源の多くは週刊誌ですよね。

そして、週刊誌の記事に対して、有名人側が法的措置をとることも耳にします。

ここでの争点は、“スキャンダルが真実かどうか” とされていることが多いですが、果たして真実なら週刊誌側に違法性はない、となるのでしょうか?

少しそこには誤謬が潜んでいるように思います。

今回はそこを簡潔に説明していければと思います。

1 名誉棄損の成立要件について少し

性的スキャンダルは、一般的にそれを公にされた人の名誉を毀損することは明らかです。
著しくその人の社会的な評価を低下させますからね。

とはいえ、名誉棄損は、
①公共の利害に関する事実に関するものであって(公共性)、
②専ら「公益を図る目的」があり(公益目的性)、
③摘示された事実が真実である(真実性)

と言えれば、その違法性が阻却されて、損害賠償の責任も無くなります。

多くの場合、有名人が週刊誌と争う場合、ここが争点になることが多いように思います。

では、社会において、一定以上の影響力のある有名人であれば、上の②公共性が簡単に認められるのでしょうか??

2 政治家の場合
 
刑法230条の2の2項では、名誉毀損罪に該当する行為が、「公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない。」と規定されていて、政治家も公務員であるため、名誉を毀損する内容が真実である場合には、名誉毀損罪が成立しないことになります。

これは、国会議員等の政治家は、国民の代表として、いわゆる「公人」として存在している以上、公人に関する事項は、公人の名誉よりもその事実を周囲に公表することにより国民の利益(知る権利等)を尊重すべきと考えられているからです。

3 芸能人の場合   
では、本記事のメインテーマである芸能人が、性的スキャンダルを報じられたような場合はどうでしょうか。

芸能人は当然,公務員ではありません。

ここで、とある最近の裁判例を紹介します。
 東京地方裁判所平成21年08月28日判決です。

元アイドルのタレントAさんが、元カレに法外な慰謝料をせびっているなどの男女トラブルを週刊新潮に書かれたという件で、このような判示がされています。

原告Aが、アイドルグループ「B」の元メンバーであり、同グループ脱退後も芸能活動に従事しているにしても、公職ないしそれに準ずる公的地位にあるものではなく、また芸能活動自体は、一般人の個人的趣味に働き掛けて、これを通じて公共性を持つものであるから、必ずしも私的な生活関係を明らかにする必要があるとの特段の事情は認められない。

はい、少なくとも、私生活上の事柄であれば、芸能人のスキャンダルが公共の利害や公益とは無関係だと考えているわけです(犯罪に至ったものなどは別であることには要注意)。  

よって、多くの場合、有名人側が週刊誌を訴えれば勝つわけです。

しかし、暴露された芸能人が、全員週刊誌を訴えないのはなぜかというと、

①法的紛争を抱えることがさらなるイメージダウンを招く、
②慰謝料をとれても、暴露された事実が真実であることがより固まってしまう(より詳細になる)、
③損害賠償として請求することができる金額は多くて数百万程度であり、内容によっては数十万程度しか認められない場合もある
④素直に謝罪することがイメージアップにつながることもある

等など考えられます。

そして、マスコミ側としても、少額の賠償を払うリスクよりも、その内容を記事にすることによる利益を優先してしまっているので、週刊誌による暴露が止まらないわけです。


4 思うこと
性的スキャンダルとひとえに言っても、それが本当に証拠に基づいて判断された性犯罪(又はそれに類する違法行為)であれば、週刊誌を始めマスコミがそれを報じることに公共性が認められます。

ただ、「本当に証拠に基づいて判断された性犯罪(又はそれに類する違法行為)」かどうかを判断するのは司法の領域です。

週刊誌が先陣を切って「今回の報道には自信を持っている」なんて言うのは少し滑稽です。

週刊誌が率先して芸能人やスポーツ選手を潰しに行くかのような今の状況は変えて欲しいと思っています。
しかし、週刊誌が利益を追求する以上、この状況は中々変わりません。

多くの人が意見しているように、私も、名誉棄損の慰謝料相場の引き上げしか答えが無いように思います。
この問題は、これから、国民全体での議論を必要とするでしょう。

では、今回の記事はこれまでです!

私の法律事務所では、こういった名誉棄損事件を始め様々な事件を取り扱っております。
HP→弁護士法人長堀橋フィル  -大阪市中央区の法律事務所- (nflaw.jp)
お困りごとがありましたら、一度、ご相談ください。
メール k-mitsumura@nflaw.jp

このページのトップヘ