弁護士の満村です!
前回の記事では、とある会社(A社)を投資詐欺会社として名指しで批判した弁護士XがA社から訴えられたことで、弁護士Xが逆にA社代理人の弁護士Yを訴えた訴訟について紹介しました。
そして、この訴訟では弁護士Yの一連の行為(A社を代理し、Xに対して刑事告訴、損害賠償請求訴訟提起等をした)は違法でないとされました。
この記事では、弁護士Yが赦されたのはなぜか、そしてA社自体は赦されなかったということについて説明していきます。
いつも通り、なるべくわかりやすい記事にするため敢えて簡単な用語を使うので、法律に詳しい人からしたら突っ込みたくなる言い回しも使うかもしれないですがご容赦ください。
そもそも、前回紹介した「弁護士X vs 弁護士Yの訴訟」は言わば傍論的な訴訟で、
メインは、最初にA社が弁護士Xを訴えた「弁護士X vs A社の訴訟(東京地裁平成28年(ワ)31015号及び東京地裁平成29年(ワ)30626号)」です。
最初に訴えたのはA社(本訴)で、これに対して弁護士XがA社に反訴提起したので、上のように事件番号が2つあります。
反訴・・・本訴と同じ手続きの中で審理されることを求めて被告が原告を訴えること。
A社は、「弁護士Xが自分たちをブログ内で詐欺師呼ばわりして、名誉を棄損し、業務を妨害した!」として、弁護士Xに対して損害賠償請求訴訟を提起したのでした。
これに対して、弁護士Xは、「A社は詐欺会社であるのに、それを暴いた私を刑事告訴し、懲戒請求し、さらにこの訴訟を提起した。これらは全て違法だ!」として、損害賠償請求の反訴を提起しました。
ここで、詐欺会社と書かれたA社が何をしていたかですが、「第三者から出資を受けて、福島第一原発事故に関する除染作業を行う作業員の宿舎を建設し、その宿舎をT社に貸して賃料をもらい、その賃料を出資者に配当する」というスキームを組み立てて出資者を勧誘していたのでした。
このスキームが本当に機能して出資者にもお金が還元される実体あるものであれば、A社は真っ当な会社であり、それを詐欺師呼ばわりした弁護士Xは損害賠償責任を負うことになります。
しかし、この裁判中に破産手続をしていたT社に対して裁判所が上の点を問いただしたところ(実際には裁判所の調査嘱託(民事訴訟法第186条)に対してT社破産管財人が回答した)、A社とT社間では宿舎の賃貸借契約書が作成されてはいたが、その対象となるはずの宿舎はどこにも存在せず、両社間には実際に賃貸借契約を締結する意思がなかった。そのため、出資者に賃料が配当されることはなかった。
ということが認定されました。
(注:もっとも、控訴審判決(令和2年8月5日)においては、上記のA社による投資話に実体が無かったという点が否定され、A社が詐欺会社であるような事実が否定されました。)
このように(地裁においては)A社が詐欺をしていたことが判明し、弁護士Xの記事投稿は市民を詐欺被害から守るためにしたことで、公共の利害に関する事実について専ら公益を図る目的で行われたものであり、その摘示事実は、真実であるから、A社の名誉を棄損したとしても違法性が阻却されると判断されたのです。
逆に、A社は当然自らの投資詐欺行為を認識しながら弁護士Xに各種の法的措置をとっていたのであるから、その行為は弁護士Xに多大な損失を与えるものであったとして、A社に100万円の賠償責任があるという判決になりました。
(注:この点も控訴審判決では前提となる事実が異なるために賠償責任に関する判断が覆り、逆に弁護士Xが100万円の賠償責任を負うこととなりました。)
A社を代理していた弁護士Yはというと・・・
・A社が本当は詐欺会社だったということは上のように裁判の場で客観的に明らかになった
・A社からの依頼を受けた時点ではちゃんと作られた賃貸借契約書等の資料を判断材料にするしかなかった
というようなロジックで、弁護士Yは赦されることになったのでした。
もっとも、注に入れているように、つい最近出された控訴審判決では、A社の投資話や事業には実体があったとされていますから、このような地裁判決の法的判断は「地裁判決の中で認められた事実を前提にすればこのように判断される」ことが示されたという風に理解できます。
はい!今回の記事はこんなところです!
根拠なく人を法廷に引きずりだしたり、警察に突き出したりすれば、自分が違法行為の主体になってしまうということが分かりますね。
弁護士も、依頼者から「聞いてください!あんなことも、こんなことも書かれて傷つきました!!」と泣きつかれたからといって、
軽はずみに「お助けしますよ!キラッ」と安請け合いしてはいけないということです。
その投稿は本当にあったのか?どういう文脈でそうなったのか?真っ当な批判ではないのか?
人を訴えるのならしっかり考えてからやりましょう。
では!
前回の記事では、とある会社(A社)を投資詐欺会社として名指しで批判した弁護士XがA社から訴えられたことで、弁護士Xが逆にA社代理人の弁護士Yを訴えた訴訟について紹介しました。
そして、この訴訟では弁護士Yの一連の行為(A社を代理し、Xに対して刑事告訴、損害賠償請求訴訟提起等をした)は違法でないとされました。
この記事では、弁護士Yが赦されたのはなぜか、そしてA社自体は赦されなかったということについて説明していきます。
いつも通り、なるべくわかりやすい記事にするため敢えて簡単な用語を使うので、法律に詳しい人からしたら突っ込みたくなる言い回しも使うかもしれないですがご容赦ください。
そもそも、前回紹介した「弁護士X vs 弁護士Yの訴訟」は言わば傍論的な訴訟で、
メインは、最初にA社が弁護士Xを訴えた「弁護士X vs A社の訴訟(東京地裁平成28年(ワ)31015号及び東京地裁平成29年(ワ)30626号)」です。
最初に訴えたのはA社(本訴)で、これに対して弁護士XがA社に反訴提起したので、上のように事件番号が2つあります。
反訴・・・本訴と同じ手続きの中で審理されることを求めて被告が原告を訴えること。
A社は、「弁護士Xが自分たちをブログ内で詐欺師呼ばわりして、名誉を棄損し、業務を妨害した!」として、弁護士Xに対して損害賠償請求訴訟を提起したのでした。
これに対して、弁護士Xは、「A社は詐欺会社であるのに、それを暴いた私を刑事告訴し、懲戒請求し、さらにこの訴訟を提起した。これらは全て違法だ!」として、損害賠償請求の反訴を提起しました。
ここで、詐欺会社と書かれたA社が何をしていたかですが、「第三者から出資を受けて、福島第一原発事故に関する除染作業を行う作業員の宿舎を建設し、その宿舎をT社に貸して賃料をもらい、その賃料を出資者に配当する」というスキームを組み立てて出資者を勧誘していたのでした。
このスキームが本当に機能して出資者にもお金が還元される実体あるものであれば、A社は真っ当な会社であり、それを詐欺師呼ばわりした弁護士Xは損害賠償責任を負うことになります。
しかし、この裁判中に破産手続をしていたT社に対して裁判所が上の点を問いただしたところ(実際には裁判所の調査嘱託(民事訴訟法第186条)に対してT社破産管財人が回答した)、A社とT社間では宿舎の賃貸借契約書が作成されてはいたが、その対象となるはずの宿舎はどこにも存在せず、両社間には実際に賃貸借契約を締結する意思がなかった。そのため、出資者に賃料が配当されることはなかった。
ということが認定されました。
(注:もっとも、控訴審判決(令和2年8月5日)においては、上記のA社による投資話に実体が無かったという点が否定され、A社が詐欺会社であるような事実が否定されました。)
このように(地裁においては)A社が詐欺をしていたことが判明し、弁護士Xの記事投稿は市民を詐欺被害から守るためにしたことで、公共の利害に関する事実について専ら公益を図る目的で行われたものであり、その摘示事実は、真実であるから、A社の名誉を棄損したとしても違法性が阻却されると判断されたのです。
逆に、A社は当然自らの投資詐欺行為を認識しながら弁護士Xに各種の法的措置をとっていたのであるから、その行為は弁護士Xに多大な損失を与えるものであったとして、A社に100万円の賠償責任があるという判決になりました。
(注:この点も控訴審判決では前提となる事実が異なるために賠償責任に関する判断が覆り、逆に弁護士Xが100万円の賠償責任を負うこととなりました。)
A社を代理していた弁護士Yはというと・・・
・A社が本当は詐欺会社だったということは上のように裁判の場で客観的に明らかになった
・A社からの依頼を受けた時点ではちゃんと作られた賃貸借契約書等の資料を判断材料にするしかなかった
というようなロジックで、弁護士Yは赦されることになったのでした。
もっとも、注に入れているように、つい最近出された控訴審判決では、A社の投資話や事業には実体があったとされていますから、このような地裁判決の法的判断は「地裁判決の中で認められた事実を前提にすればこのように判断される」ことが示されたという風に理解できます。
はい!今回の記事はこんなところです!
根拠なく人を法廷に引きずりだしたり、警察に突き出したりすれば、自分が違法行為の主体になってしまうということが分かりますね。
弁護士も、依頼者から「聞いてください!あんなことも、こんなことも書かれて傷つきました!!」と泣きつかれたからといって、
軽はずみに「お助けしますよ!キラッ」と安請け合いしてはいけないということです。
その投稿は本当にあったのか?どういう文脈でそうなったのか?真っ当な批判ではないのか?
人を訴えるのならしっかり考えてからやりましょう。
では!