弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係等の法律問題についての発信をしています。

タグ:著作権

映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」(8月2日公開)の製作委員会が、主人公の名前を「小説ドラゴンクエストV」から無断で使用したとして、著者の久美沙織さんから訴えられた事件で、久美さんの請求が棄却されたとのニュースが飛び込んできました。

ところが、「なぜ請求が棄却されたか」について詳しく解説するような記事はあまり見当たりませんので、私なりに著作権法の知識の紹介と共に解説していきたいと思います!

事件の概要をご存じの方は目次で「著作物性が認められなかった理由」の方に飛んでください。

目次

ドラクエ事件の概要

ドラクエのゲームでは主人公の名前を自由に設定できるところ、久美さんは小説版の主人公を「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」として、これのニックネームとしては「リュカ」としていました。

この命名に自身の創作性が認められるべきなのに、映画版ドラクエでは、主人公の名前を「リュカ・エル・ケル・グランバニア」と無断で改変して使ったとして、これが著作権侵害だと主張していたとのことです。

名前としては、かなり長い部類ですし、創作的な感じもするので著作物とされてもおかしくないのでは??と思う方もいるかと思います。

しかしながら、これについて判決では「人物の名称は、思想または感情を創作的に表現し、文芸や美術などに属するとは言えない」とされ、著作物ではないと判断されてしまったようです。

この判決文通りだとすると、人物の名称はどのようなものであっても著作物でないと考えるべきようにも考えられますよね。

では、ここから、なぜこのような判断となったかについて書いていきたいと思います。

著作物性が認められなかった理由

まず、「著作物」と言えるためには、「思想または感情を創作的に表現し、文芸や美術などに属するもの」と言えなければいけません(著作権法第2条1項1号)。

これだけ見るとかなり高尚な芸術でないと著作物ではないのかと錯覚しますが、実際のところ「特に高邁な学問的内容・哲学的思索・文学的薫り等が要求されるものではなく,人の考えや気持ちが現れているものであれば足りると解されている。人の思想・感情のレベルは裁判所で判断すべきものではなく,またしてはならないものであると考えられるので,幼稚園児の絵も著作物たり得る。」と考えられています(著作権法 第3版/中山信弘)。

では、キャラ名についてはどう考えられるでしょうか?

分かりやすく、例えば、ポケモンの「サトシ」の名前を考えてみましょう。

「サトシ」というのは、日本人男性の名前としてよくあるものと捉えられますが、いくらここで例えば「このポケモンのストーリーからすればサトシという主人公の名前はベストであって、長い期間と労力をかけて考え出された名前である」と主張したところで、ありふれた名前としか言いようがなく、また、「サトシ」という名称があらゆる場面で簡単に使用できなくなると考えると「それはダメだろ!」とすぐ分かりそうです。

この点、東京地裁決判平成22年12月21日(廃墟写真事件)では、「廃墟を発見ないし発掘するのに多大な時間や労力を要したとしても,そのことから直ちに他者が当該廃墟を被写体とする写真を撮影すること自体を制限することはできない」と述べられています。
このことからも、著作物性を判断する際には、「いか考えたか、労力を要したか」といったプロセスはほとんど考慮されないと考えられます。

また、キャッチフレーズなどの短文の著作物性について判断された裁判例を紹介しますと、英会話教材キャッチフレーズ事件があります。
「英語がどんどん好きになる」「ある日突然、英語が口から飛び出した!」という宣伝用のキャッチフレーズが著作物だと主張されたのですが、「他の表現の選択肢がそれほど多くなく、個性が現れる余地が小さい場合には、創作性が否定される場合はあるというべきである」として、これらキャッチフレーズの著作物性が認められることはありませんでした。

宣伝用キャッチフレーズという性質も関係していましたが、これと単純な文字量も相俟って「個性が現れる余地が小さい」と考えられたと言えます。

では、「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」は名前としてはかなり長く、奇抜な印象も抱きますが、とはいえ名前として把握される文字の羅列という枠を超えるものではなく、そして名前なので一般論としてそれぞれの文字に何か語義があってそれぞれ組み合わせることで新たな意味が発生するというものでもなく、また、単純に文字量として見ても多いとは言えませんので、個性が現れる余地が小さいと言わざるを得ないと思われます。
名前を、それを考えた人の著作物とすることでその名前を使用できなくなることへの純粋な違和感もありますし、やはり、キャラ名が著作物性を獲得することはできないでしょう。

商標権について

本件で、仮に久美さんが「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」を商標登録していれば、映画版の無断利用について商標権侵害の責任を問えた可能性があります。

商標とは、市場において、自社の商品やサービスを、他社のものと区別して需要者に示すためのいわば「めじるし」であり、商品名やサービス名、あるいはロゴマークなどが商標の代表例です。

キャラ名も商標登録が可能です。

商標は著作物と違って、登録しなければ商標権は認められないところ、久美さんはこれを特に商標として登録していませんでした。

そして、商標権侵害に問うためには、①登録商標の使用または類似範囲での使用及び②商標的使用に該当することが必要とされるため、使用された場合に全てにおいて商標権侵害が認められるわけではありませんが、本件では商標権侵害となる可能性はあると考えられます。

上記要件①②については、またどこかで解説記事を出せればと思います。


今回は以上です!

著作権法は難解で、弁護士でも専門でなければ取り扱えない人はたくさんいると思います。
著作権やネット上のトラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
お問い合わせは、弁護士法人長堀橋フィル( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで!

弁護士の満村です!

今回はYouTuberの動画を無断で切り抜いた(キャプチャした)画像をネット掲示板に貼り付けたら発信者情報開示請求を受けてしまった、という場合に気になる損害賠償金額について、参考になる裁判例を紹介したいと思います。

簡潔に、著作権侵害をした場合の損害賠償金額算定等の考え方についての解説をしてから裁判例紹介をしようと思うので、解説が不要な方は下記目次から裁判例の方に飛んでください!

目次
①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?
②令和の虎切り抜き画像投稿事件判決の紹介
③まとめ

①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?

読者様の中には、「ファスト映画」の著作権侵害事件で巨額の賠償金が認められたことが記憶に新しい方がいらっしゃるかもしれません。 なんと投稿者二人に5億円の損害賠償責任が認められました。 実際のニュース記事はこんな感じです☟

映画を10分ほどの長さに短く無断編集した「ファスト映画」を動画投稿サイトに公開され著作権を侵害されたとして、東宝や松竹、東映などの大手映画会社やテレビ局など13社が無断投稿した男女2人に計5億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であった。杉浦正樹裁判長は著作権侵害を認め、請求通り全額の支払いを命じた。

出典:ファスト映画の損害額「1回再生で200円」、無断投稿の2人に5億円賠償命令…東京地裁 2022/11/18 配信
まともに支払えば人生崩壊レベルの賠償額です。

この事件で「そもそもなぜこれが著作権侵害なのか」等については前回の記事で解説しています。



しかし、なぜこの金額になったか知っている人は意外に少数かもしれません。

著作権侵害の場合の損害額の計算については著作権法上いくつかの算定基準が与えられています。
損害額の立証困難への救済規定とも言われます。

それが著作権法114条です。

この1項は、「著作権侵害行為によって作成された侵害品の譲渡数量×侵害行為がなければ販売できた物(DVDとか)の単位数量当たりの利益額」という基準を与えています。

また、3項では、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」すなわち、「ライセンス料相当額の損害額を請求できる」という基準を与えています。
ネット上でも、この素材を使うには〇〇円みたいな写真とかありますよね。まあ、あんな感じと考えてもらえばいいかと思います。

先ほどのファスト映画判決の記事では、

判決は、2人が著作権を侵害したと認定した上で、損害額についても原告側の主張を認めた。ユーチューブで正規に鑑賞できる映画のレンタル価格が1作品あたり400円を下回らないことなどを踏まえ、1回の再生につき200円が相当と判断した。

とされています。
この「1回の再生につき200円」というのは、YouTube上での各映画作品のレンタル視聴のための価格400円~500円を基準に導いた金額のようですが、ここから3項を適用して総再生回数を掛け算して「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出したようです。

ただ、これ、レンタル価格があるので導き出せた数字ですよね・・・?

そのような単体でのレンタル価格がないYouTube動画の場合どうなるんでしょうか? それをこれから本記事のメインとなる裁判例の紹介で見ていきたいと思います。

②令和の虎キャプチャ画像投稿事件判決の紹介

東京地方裁判所令和4年11月24日判決です。

「令和の虎」というYouTubeの人気チャンネルの運営会社が原告となり、「令和の虎」のYouTube動画からキャプチャした静止画(「本件静止画」)を自身の複数のブログ記事(「本件各記事」)に大量に貼り付けたブロガーの被告に損害賠償請求をした事件でした。

しかしやはりここで、YouTube動画による収益はあるとはいえ、被告が貼り付けたのは動画そのものではなく画像だし、そもそも売ってる物でもないし、どうやって賠償額を算定するの?という疑問が沸き上がります。

そこで、原告は以下のように主張しました。

権利侵害者が著作権の行使に対して支払わなかった使用料(利用許諾料)相当額は、権利侵害者にとって不当利得であり、著作権者はこの返還を請求することができるところ、法114条 3項の趣旨は、その不当利得の金額を著作権者が受け損害の額とみなして、その賠償を請求することができることとした点にある。
このため、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」は、過去における著作物の使用料や業界における料金相場を参考に算定される。 ・・・ 映像コンテンツから静止画をキャプチャした場合の当該静止画の画像利用料については、日本放送協会(以下「NHK」という。)が料金表を公表している。
当該料金表は、「写真として保存された素材か、映像からキャプチャした素材かで複製料が大きく異なる」と断った上で、「国内撮影」、「カラー」のキャプチャ画像の最低額を1カット (枚)あたり2万円に設定している。
被告は、本件各記事において、本件各動画から静止画をキャプチャして利用しているところ、NHKの画像利用料の最低額である1カット(枚)あたり2万円を適用した場合、被告による本件静止画の使用料は、以下のとおり、合計728万円となる。

これを受けて、裁判所は、この原告主張の方向性を概ね認めつつも、被告による本件静止画の使い方が、1本の動画につき30~60枚程度キャプチャ画像を時系列で貼っていき、それぞれ本件静止画ごとに説明を追記するというもので、ほぼ動画を丸ごと把握できる内容になっていたことから、「むしろ動画としてそのまま使用する場合の使用料を基準にすべき」ということを言って最終的に以下のように判示しました。

原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(法114条3項)の算定に当たっては、映像の使用料に係る各規定を主に参照しつつ、上記各規定を定める主体の業務や対象となる映像等の性質及び内容等並びに本件各動画ないし原告チャンネルの性質及び内容等をも考慮するのが相当である。
加えて、著作権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、使用に対し受けるべき額は、通常の使用料に比べて自ずと高額になるであろうことを踏まえると、原告が本件各動画の著作権の行使につき受ける べき金銭の額に相当する額(法114条3項)は、合計200万円とするのが相当である。

「実際の被害状況的に700万円超えはちょっとやりすぎな感じがするし、まあ、200万円くらいが相当じゃない?」という結論ありきの判決のような気もしますが、このNHKとかのメディアのライセンス料を基準とするやり方は今後も通用していくでしょうね。

本事件では「令和の虎」の動画内容をほぼ説明しきるような画像の使い方だったため、映像のライセンス料が基準となりましたが、掲示板に1枚、2枚画像を貼り付けて批判したりするような使い方だと原告主張のように静止画のライセンス料が基準となり、1枚につき2万円とかになっていくのではないかなと考えられます。

③まとめ

どうでしたでしょうか?

著作権侵害した場合の賠償金ってすごい高いんでしょ?と漠然と思っている人も多かったと思いますが、実際には、侵害した対象の著作物によって全然違ってきたりするんですね。
少しでも参考になれば幸いです。

著作権やネット上のトラブルその他法的トラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
弁護士法人長堀橋フィル 弁護士満村和樹
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では!


こんにちは!
弁護士の満村です。

弁護士として仕事をしていてよく思うのは、「著作権ってみんな存在は知っているはずなのになぜそんなに軽視するのか?」ということです。

その答えは、「ワードとして知っているけど中身はよく知らない」というものかもしれません。

特に今は個人が簡単にネット上で発信を行う時代。

日々大量の著作権侵害が発生しています。

そんな中で起こった悲劇的な著作権侵害事件が「ファスト映画」をめぐる事件でしょう。

東京地方裁判所は2022年11月17日、「ファスト映画」を著作権者に無断でYouTubeにアップロードした2人対し、著作権侵害による損害賠償金5億円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

また被告らは刑事事件としても有罪判決を受け、執行猶予付きとはいえ、懲役刑が課せられ、罰金刑も併科されました。
人生崩壊レベルの悲劇ですが、著作権侵害の怖さが分かりますね。

さて、では、この事件何がいけなかったのでしょうか?どのようにすれば責任を逃れられたのでしょうか?簡潔に説明していきます。

1 著作権って何?
著作権は著作物について認められる権利で、簡単に言うと、その著作物を公表したり、編集したり、売ったりできる権利です。
著作物をネット上にアップすることも著作権者ができることで、基本的に他の人はできません。

では、著作物とは何か、ということですが、以下の通り説明できます。

(1)「思想又は感情」を表現したものであること → 単なるデータが除かれます。
(2) 思想又は感情を「表現したもの」であること → アイデア等が除かれます。
(3) 思想又は感情を「創作的」に表現したものであること → 他人の作品の単なる模倣が除かれます。
(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること → 工業製品等が除かれます。

(文化庁HPより 著作物について

こう見ると、何か芸術的なすごい物にしか認められないのではと思うかもしれませんが、例えば日々のツイートやこういうブログ記事なんかにも認められることが多いです。

映画が著作物に当たるというのは当然ですね。

2 映画の要約動画は元の映画の著作権を侵害するの?
「ファスト映画」はいろんなチャンネルからいろんなものが配信されていました。
でも基本的にその内容はある映画のダイジェスト版を作り、ナレーションを加えて作品を紹介するというものです。

映画そのものではないし、創意工夫して映画を宣伝しているようなものだからいいのではないか?と思う人もいるかもしれません。

ただ、先にも述べたように著作物を編集したり手を加えることも著作権者しかできないはずです。
そして、手を加えたものを全国に無断でばらまいたわけですから悪質です。

彼らが唯一言い逃れできる余地もありました。 それは「引用」(著作権法 第32条第1項)です。

自身の著作物を作成するにあたり、他人の著作物を常識的で正当な範囲内で拝借することは「引用」として適法とされるのです。

ただ、この「常識的で正当な範囲内で拝借する」と言えるためには、あくまで自分の作品が主で、他人の著作物が従(サブ)と言えるような力関係が必要になります。また、拝借してくる必要性もないといけません。

例えば参考文献的にちょろっと他人の書籍の一文を示す、といった具合ですね。

「ファスト映画」はこの点明らかに映画を見せることがメインであり、サブ的にナレーションを加えたりしてるわけですね。 主従逆転しており、さすがに「引用」は認められません。

このようにして「ファスト映画」は明確な、そして甚大な著作権侵害として多くの責任を作成者に課す結末となりました。

3 著作権侵害にならないためには
残念ながら、映画のシーンを切り取って使うことも、また、ストーリーを紹介してしまうことも基本的に著作権を侵害してしまいます。

もっともごくごく簡潔なあらすじを短い文章で抽象的に書く(話す)くらいであれば大丈夫と考えられます。
そして、あくまでも自らの思想や、社会問題に対する問題意識を語るような「意見・評論」をメインにした動画にするのが重要です。独自の映画論を語るというのでもいいでしょう。
映画をちょっとした題材として、ほんの少しその存在を拝借する程度に留めれば、「引用」ということができると考えられます。

これは、自らの元から持っていた意見を言うために映画のストーリーの一部を題材にする必要性が認められるからと言えます。

これに対して、映画のワンシーンを切り取った動画、又は静止画については、軽微なものでも基本的に「引用」は認められず、違法だと思った方がいいですね。映像まで拝借する必要性・必然性ってあるんですか?という話になります。(ただ、かなり軽微であれば刑事告訴したり、損害賠償請求してくる映画会社も無いかもなので、まあ実質セーフですかね・・・笑)

でもできれば、その映画の雰囲気と似たフリー素材の画像を使うなどして、創意工夫した動画を作ってみてください!

4 まとめ
以上、YouTube上で起こった「ファスト映画」の事件を参考に著作権について説明しましたが、著作権の問題はなにも映画だけの問題ではありません。
ツイッターのアイコンをアニメのキャラにしている人、テレビ番組の面白い一幕を撮影してSNSに上げている人等々、挙げだしたら著作権侵害事例はキリがありません。
いつ責任追及されるか分からない現状にあるので、著作権についてはよくよく気を付けてください。

著作権やネット上のトラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
弁護士法人長堀橋フィル( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで。

お久しぶりです。
弁護士の満村です。

新たに法律事務所を開業してバタバタしたこともあり、しばらく発信活動は控えていましたが、今日は話題の(?)裁判例について紹介していければと思います。

東京地裁の令和3年12月10日判決、いわゆる「スクショによる引用リツイート」は違法だと判断した判決です。
以前の記事でこの問題について言及し、「他人のツイートのスクショを使った引用リツイートが違法と判断される可能性はあり、やめておいた方がいい」といった考えを示していましたが、がっつりアウトの判断が東京地裁によって下されました。以前の記事↓



「このスクショによる引用リツイート」とは下のような感じのものです。引用されているツイートは、スクリーンショットにより切り抜かれ保存された画像データです。
Web キャプチャ_4-2-2022_122222_twitter.com



Twitterには、正規の「引用リツイート」の機能があり、Twitterでは他人のツイートを引用する際には、この機能を使うことが推奨されています。
もっとも、現実には、正規の「引用リツイート」よりも「スクショリツイート」の方が多いのではないか??と思うほど、「スクショリツイート」は盛んに行われてきました。

なぜなのか?

日常的な使われ方を見ていると、①引用元のツイートをした人に、自分が引用していることをできれば知られたくない(「引用リツイート」だと通知が行っちゃう)、という感情によるものが多いのではないでしょうか。
そのツイートに対して否定的な見解を述べる場合に多用されてそうですから。
あとは、②引用元のツイートをした人にブロックされていて、正規のリツイートができないといったことやそれ以外の理由もあると思います。

では、なぜ「スクショリツイート」が違法となったのか。
裁判例に即してその理由を紹介していきます。

1 著作物性について


以前の記事でも紹介しましたが、著作権法によって保護される「著作物」と言えるためには、
その人の個性が現れている表現行為」、
もう少し分解すると、
その人の考えや感情が表れている表現行為」であればいいことになっています。
多くのツイートはこれに当てはまり、著作物として保護されることになります。
「今日は晴れてたので公園に行きました!」とかは単に事実の報告として著作物ではないでしょうが。。

ではでは、今回の裁判で対象となったツイートとはどんなものだったか。
対象となったツイートは複数ありますが、その一つは

「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう

「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く 同じ」だって言ってるんだよ。 結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃ ねーか。お前も含めてな。」
というものです。

著作物でしょうか?

著作物なんです。

裁判所はその理由を以下のように示しました。

「(上記の投稿)は,140文字以内という文字数制限 の中,意見が合わない他のユーザーに対して,短い文の連続によりその意見 を明確に修正した上,高圧的な表現で同人を罵倒するものであり,その構成 2には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である 原告の個性が現れているということができる」

「高圧的な表現である」ことも著作物性の根拠になっているようですね。
まあ、それほどツイート主の感情が詰まっているのだからということでしょう。
このように、内容の良し悪しと著作物性とは関係が無いということですね。

さて、このツイートが著作物であることはいいとして、問題は、「引用」が認められるかどうかです。

2 引用の成否について

著作権法32条には、「引用」についての規定が置かれており、簡単に言うと、
すでに公表された著作物を常識的な範囲内で使用することは著作権侵害じゃないですよ
というものです。

今回の発信者は、上の「卑怯者のクソ野郎じゃねえかツイート」をスクショで引用し、
「私に対してのリプ  何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」と呟きました。
意訳すると、「なんかすごい恫喝されてるけど皆これどう思います?ひどいですよね?私何もしてませんよ?」
ということで、これを言うために問題のツイートをスクショで引用したのです。

このスクショの引用が無いと、何を言っているのか分かりませんし、引用元ツイートの方が文字数が多いとはいえ「私に対してのリプ  何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」をメインとして伝えたいというのはわかるので、常識的な範囲内かなとも思えます。

ただ、裁判所はこう言いました。
「ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しな ければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうする と,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用すること なく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反す るものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。 また,前記認定事実によれば,本件各投稿と,これに占める原告各投稿の スクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。したがって,原告各投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しツイ ッターに掲載することは,著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないというべきである。」

①Twitterの規約違反やん!と、②スクショでかいし、これを晒すのが目的やろ?
です。

ネット上の記事を見ると、
①Twitterの規約違反をごり押しして「引用」を認めないのはおかしいのではないか?実質的な理由ではないですよね?という見解が見られます。

ただ、この①の理由の裏には、私が以前の記事でも述べた以下の理由が潜んでいるのだと思います。

スクショ画像が改変される可能性がある、投稿者本人がツイートを消した場合にも拡散することができるのでその場合明らかに投稿者の意思に反する拡散になってしまう、引用リツイートと違って見た人が元ツイートにワンクリックで容易にたどり着けるものでないため投稿者の利益とはなりにくい(むしろ晒されるだけになってしまう)等の問題がある
というものです。

なぜこれら理由が潜んでいると言えるのかというと、そもそもこれらの理由によりTwitter社は、利用規約で、正規の引用リツイート以外のリツイートを推奨していないと考えられるからです。

判決文にもこれら実質的理由が盛り込まれればよかったですが、実際は少し疑問符の付く判決になってしまいましたね。

以上から、私の見解としては、「スクショリツイートはやはり著作権侵害。訴えられる前にやめよう!」というものです。
ただ、この裁判、被告側が控訴しているようです。 もしかすると、高裁でこの判断はひっくり返るかもしれません。
注目していきたいですね。

このような著作権の問題のみならず、誹謗中傷やプライバシー侵害等ネット上のトラブルについて幅広く、ご相談を受け付けております。 御用の方は、mitsumura@vflaw.net までご連絡ください。では!

弁護士の満村です!

ネットの利用が拡大するにあたって増えている問題として著作権の問題があります。

伝統的には著作権は大型紛争(映画、有名な絵画、人気キャラクター等を巡る盗作、無断転載など)が主流で、これらを通じて裁判例も蓄積されてきたという印象ですが、最近はネットの広がりの中で必然的に小型紛争が日々発生しているという分野になってきています(勿論、弁護士を利用するほどの案件は多くないと思いますが)。

実は、著作権法ふくむ知的財産法は司法試験の選択科目(他には、倒産法、税法等)なのですが、選択科目であるがゆえに知的財産法についてあまり知識の無い弁護士はけっこういます(ちなみに私は知的財産法選択でした)。

で、弁護士でもそうですから当然法律家でない方の知識レベルも高いとは言えず、それ故、あまりよくわからない中で「著作権侵害だ!」と言ってみたり、実は他人の著作権を侵害しているコンテンツを知らず知らずのうちに享受してしまったりしています。

そんなこんなで、著作権についての発信をしようと思うわけですが、今回はTwitterにおける「ツイート」にまつわる著作権侵害について書いていきたいと思います。

“人のツイートを拡散したらその投稿者の著作権を侵害するか”ということが議論の対象です。

場合分けして、
①リツイート
②ツイートのスクショ等を添付してのツイート
③パクツイ(他人の投稿内容を自分の投稿として発信する行為)
を見ていきます。


1 著作物性

著作権侵害が認められるためには、大前提として、対象のコンテンツが法的に「著作物」と認められる必要があります。

この「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(著作権法第2条1項1号)。

ただ、これだと少しわかりにくいので、「その人の個性が現れている表現行為」くらいに考えてもいいと思います(多少法的な厳密さは失われますが)。

では、ツイートのような単なる文章が著作物性を持つことはあるのでしょうか。

掲示板への書き込みを書籍に収録したことが問題となった東京高判平成14年10月29日によると、「著作物性が認められるための創作性の要件は厳格に解釈すべきではなく,むしろ,表現者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りるという程度に,緩やかに解釈し,具体的な著作物性の判断に当たっては,決まり文句による時候のあいさつなど,創作性がないことが明らかである場合を除いては,著作物性を認める方向で判断するのが相当である。」と著作物性は緩やかに理解されています。

ツイートも単なる事実を述べたものや単なる挨拶のようなものではなく、その人の個性が現れたようなものであれば著作物性が認められるでしょう。
例えば、「今人気のカレーのお店に行ってきました!」くらいでは単に事実の報告であって著作物にはならないかと思いますが、そのカレーを自分なりにレビューするなどひと手間加われば著作物性が認められうるツイートになります。

2 著作権侵害

では、著作権を侵害するというのはどういう状態のことを言うのでしょう。

ここが著作権法の難しいところですが、著作物性が認められるとその著作物にはいろいろな権利が発生し、これらをまとめて著作権や著作者人格権などと言うことになります。
単に「著作権侵害だ!」と言っても、著作権法を知っている人からすると、「なに権について言っているんだこの人は・・・?」と悩むことになります。

全てを紹介できないので、ここではネットにおけるツイートの利用に関係しそうな公衆送信権複製権、氏名表示権を取り扱います。

公衆送信権・・・著作物をネットなどで公衆に対して送信し多くの人が見られるようにする権利

複製権・・・著作物を様々な媒体でコピーする権利

氏名表示権・・・自分の著作物を公表する時に、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば実名とするか変名とするかを決定する権利(著作者人格権)

名前の通りなので案外権利の中身は分かりやすいですね。
 (ちなみに、これら以外にも、音楽を演奏する権利、演劇を上演する権利、彫刻などを展示する権利なんかもあるんですよ。)

そして、①~③どれであっても、他人の著作物たるツイートをネットを使って公衆に送信し、また、同じ内容のツイートを自分のアカウント上に別途表示させているわけですからコピーしていることになります(①リツイートについては、全く同じツイートのTwitter上での表示させ方を変えるだけだという考え方から公衆送信権と複製権侵害を否定する向きがありますが分かりやすさの為ここでは捨象させてください)。

それでは、①~③は全てツイートをした人の上記権利を侵害することになってしまいそうですね。
ただし、これは法律の基本的な考え方の現れと言えますが、「本人が承諾しているならいいじゃない」という法理が適用されます。でも、「おれは承諾してないよ!」と言えば承諾していないことになるのか?
以下、Twitterの利用規約を見てみます。

Twitterの利用規約はいちいち長くてなんだかよく分からないと思った人も多いかと思いますが、
まず、
“ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社があらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、・・・配信するための、世界的かつ非独占的ライセンスを当社に対し無償で許諾することになります。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。”(一部省略)
と書いています。
「え、じゃあ使い放題?」と思われた方もいるかもしれないのですが、利用規約にはさらに、
“ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、・・・、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約・・・に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。”(一部省略)
と書いており、
「Twitter社が認める方法で使えよ」と読めます。
なので、Twitter上で明確に認められている「①リツイート」は既に投稿者の承諾を得ていてるのでOKになります。

なぜこれが認められているかを実質面で考察するとすれば、ツイートをその状態のまま表示させるのであれば誰が書いたものか分かるそのツイートが拡散されれば多くの場合投稿者にとってプラスになるそもそもその投稿者はツイートという形式で世界中に向けて自ら発信している、といったことが言えます。
そうだとすると、「②ツイートのスクショを添付してのツイート」も、だれの投稿か分かるし、その投稿者が発信したままの状態で拡散するというもので、いわゆる引用リツイートとほぼ同じですからOKと考えることができます。

しかし、この考えには落とし穴が無いわけではありません。
この②では、スクショ画像が改変されている可能性がある投稿者本人がツイートを消した場合にも拡散することができるのでその場合明らかに投稿者の意思に反する拡散になってしまう引用リツイートと違って見た人が元ツイートにワンクリックで容易にたどり着けるものでないため投稿者の利益とはなりにくい(むしろ晒されるだけになってしまう)等の問題があり、やはり引用リツイートとは性質が異なるため、Twitter社がこれを明確に禁止する可能性や裁判所が違法認定する可能性も無くは無いと思います。

Twitter社が明確に禁止しなくても、やはり「あまりしない方がいいこと」と言えるかもしれません。

これは難しい議論で、今後考え方は流動していきそうですが、このような著作権法について考える材料が少し提供できたのであれば幸いです。


あ、忘れていましたが、「③パクツイ」がありましたね。

言うまでもなくアウトです。

完全な盗用なので、利用規約により承諾が得られているものとも考え難く、他人の投稿から他人の名前を削って自分の投稿のように発信するものなので明らかに氏名表示権を侵害します。

バズっている投稿を見て、「あ、私もこれをやれば注目されるかも」と考えてしまうのは分からなくもないですが、やめた方が無難です。
「少し表現を変えればいいのか?」という疑問も湧くところですが、それについてはまた機会があれば記事にできればなと思います。

今回の記事は以上です。
もし著作権についての法律相談がありましたら受け付けておりますので、ご連絡ください。
場合によっては、削除請求や損害賠償請求が考えられますし、逆にそれらの請求を受けてしまったということもあり得ます。
ご相談はmitsumura@vflaw.netまで。

メールでの簡単な相談は無料でやっております。具体的な検討に入る場合には有料相談(30分3000円)とさせていただいております。電話やZoom等でも対応していますよ。
また、自分やそのご家族など当事者としての相談に限定させていただいておりますので、「自分には関係ないけどこれってどうなの?」などという相談は申し訳ありませんがお断りさせていただいております。

ではでは!

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