弁護士の満村です!
今回は発信者情報開示請求の手続きの流れを解説します。
この請求には複雑かつ込み入った手続きが必要で、けっこう費用も高くつくと言われている所以もわかるかなと思います(弁護士がぼったくりをしているわけではないということもです笑)。
あと、発信者情報開示請求の改正法施行を待って手続きに入りたいと思っておられる方がけっこうおられるのではないかと思いますが、それでは間に合わないケースもあることも分かるような内容になっているかと思います。 
 

ネットの仕組みを簡単に解説

皆さんは、例えばこうやって自分でブログの記事を書いて公開するとき、どういう手順でみんなが自分の書いた記事を見られるようになるのだろうと考えたことはありますか?

まず、インターネット上にある文章や画像などのことをウェブページと呼びますが、このウェブページは世界のどこかにある特定のサーバーコンピューターの上に乗っかっています。
そして、ある文章や画像を見たいという人は、URLを指定してこのサーバーコンピューターにその文章や画像のページを渡せと指令し、これに対して、サーバーコンピューターがその指令通りのものを提供しているのです。
逆に発信側としては、サーバーコンピューターに「この記事を加えておいて」と指令して、サーバーコンピューターが指令通りその記事をウェブページに加えることによって、みんながその記事を見れるようになります。
もちろん、実際に発信者の目に見えている世界は、所定の位置に文章を書いて、「投稿」のようなボタンをポチっているというものだけですけどね。

閲覧側にしても、発信側にしても、スマホやPCという端末からインターネットに入りサーバーコンピューターに上記のような指令を出すわけですが、このインターネットの通信を手助けしてくれる存在が(アクセス)プロバイダーということになります。

色々言ってきましたが、
ごく簡単に図解すると以下のような感じでしょう。

発信側端末   
 ↓
プロバイダー   
 ↓
サーバーコンピューター   
 ↓
プロバイダー   
 ↓
閲覧側端末

この中で、発信者の個人情報(住所・指名)を持っているのが、プロバイダーです。NTTとかですね。
基本的にtwitterや2ちゃんねるのようなサイト運営者はこの情報をもっていません。

ただ、サーバーコンピューターには、発信者の足跡のようなもの「アクセスログ」が残っていて、このうちどの端末から指令を受けたのかわかる「IPアドレス」の情報はサイト運営者が把握できています。
そこで次のような手続きをしていくことになるのです。

手続きの流れ

まずは、誹謗中傷や脅迫などが、どのサイトで行われたか確認します。 当然ですね。
ここで出来る限りの証拠を保存し、そのサイト運営者に対して、上記のIPアドレス等のアクセスログの開示を請求します。
具体的には、裁判所に発信者情報開示請求の仮処分を申し立てることになります。
裁判所において、サイト運営者の言い分も聴きながら、こちらの言い分が認められれば、サイト運営者からIPアドレス等のアクセスログの開示を受けます。

IPアドレス等のアクセスログがわかれば、プロバイダーが判明するので、次にプロバイダーに対して本案訴訟にて発信者の情報の開示を請求するのです。
なぜ、仮処分と本案訴訟で使い分けているのか、ということは難しい反面、知らなくても全体の流れは理解できますからここでは捨象します。
とにかく、発信者の情報をゲットするまででこのように2回の訴訟手続きをしなければならないということを理解いただけるといいと思います。

そしてそして、ここまで来てようやく、発信をしていた犯人を特定でき、損害賠償請求や刑事告訴等の措置が取れるのです。

損害賠償請求についても相手が観念して任意にお金を払わない限り訴訟となりますね。
そうなると一人と戦うために合計3回の訴訟をすることになります。
ちょっと、とほほ・・・と思いますよね笑
でもそれでも戦っている人は多くいるんです。
ここまでしたくない方はサイト運営者に「削除請求だけする」という選択もあります。 これだと費用も時間もそれほどはかかりません。

改正の議論がある!?そこまで待つべき?

皆さんご存知と思いますが、発信者情報開示の制度は現在、総務省で改正の動きがあります。
おそらく上のような複雑な手続きが簡略化され、費用も時間も今ほどかからなくなるでしょう。
望ましい改正です。
ただ、まだ議論は始まったばかりというのが現状で、新制度についての第1回会合が今年の4月にあり、次が6月4日とのことです。
急ピッチで法案成立までいったとしても、法律の施行(効力発生)までは期間を開けますから、結局のところ新制度開始というのは早くて来年の今頃とかではないでしょうか
もちろんどうなるかは流動的です。
そうなると、新制度を待つと、多くのサイト運営者やアクセスプロバイダーからは「もうアクセスログは消しちゃいましたよ」と言われると思います。
アクセスログの保存期間は法定されておらず、半年そこらで消去しちゃうんですね。
もちろん業者によりますが。
なので、「確実に同じような誹謗中傷が一年後二年後にもされ続けるだろう」という人でないと、新制度には乗っかれないのですね。
どう動くかはあなた次第です・・・。

今回の記事はここまでです。
発信者情報開示請求シリーズは一旦ここまでにしようかと思います。
同制度が適切に改正され、利用がどんどん進み、ネット上の誹謗中傷による被害がこの日本からなくなる未来を信じて、みなさん、頑張っていきましょう!

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