弁護士みつむらの法律blog

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カテゴリ: 知的財産権

お久しぶりです。
弁護士の満村です。

新たに法律事務所を開業してバタバタしたこともあり、しばらく発信活動は控えていましたが、今日は話題の(?)裁判例について紹介していければと思います。

東京地裁の令和3年12月10日判決、いわゆる「スクショによる引用リツイート」は違法だと判断した判決です。
以前の記事でこの問題について言及し、「他人のツイートのスクショを使った引用リツイートが違法と判断される可能性はあり、やめておいた方がいい」といった考えを示していましたが、がっつりアウトの判断が東京地裁によって下されました。以前の記事↓



「このスクショによる引用リツイート」とは下のような感じのものです。引用されているツイートは、スクリーンショットにより切り抜かれ保存された画像データです。
Web キャプチャ_4-2-2022_122222_twitter.com



Twitterには、正規の「引用リツイート」の機能があり、Twitterでは他人のツイートを引用する際には、この機能を使うことが推奨されています。
もっとも、現実には、正規の「引用リツイート」よりも「スクショリツイート」の方が多いのではないか??と思うほど、「スクショリツイート」は盛んに行われてきました。

なぜなのか?

日常的な使われ方を見ていると、①引用元のツイートをした人に、自分が引用していることをできれば知られたくない(「引用リツイート」だと通知が行っちゃう)、という感情によるものが多いのではないでしょうか。
そのツイートに対して否定的な見解を述べる場合に多用されてそうですから。
あとは、②引用元のツイートをした人にブロックされていて、正規のリツイートができないといったことやそれ以外の理由もあると思います。

では、なぜ「スクショリツイート」が違法となったのか。
裁判例に即してその理由を紹介していきます。

1 著作物性について


以前の記事でも紹介しましたが、著作権法によって保護される「著作物」と言えるためには、
その人の個性が現れている表現行為」、
もう少し分解すると、
その人の考えや感情が表れている表現行為」であればいいことになっています。
多くのツイートはこれに当てはまり、著作物として保護されることになります。
「今日は晴れてたので公園に行きました!」とかは単に事実の報告として著作物ではないでしょうが。。

ではでは、今回の裁判で対象となったツイートとはどんなものだったか。
対象となったツイートは複数ありますが、その一つは

「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう

「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く 同じ」だって言ってるんだよ。 結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃ ねーか。お前も含めてな。」
というものです。

著作物でしょうか?

著作物なんです。

裁判所はその理由を以下のように示しました。

「(上記の投稿)は,140文字以内という文字数制限 の中,意見が合わない他のユーザーに対して,短い文の連続によりその意見 を明確に修正した上,高圧的な表現で同人を罵倒するものであり,その構成 2には作者である原告の工夫が見られ,また,表現内容においても作者である 原告の個性が現れているということができる」

「高圧的な表現である」ことも著作物性の根拠になっているようですね。
まあ、それほどツイート主の感情が詰まっているのだからということでしょう。
このように、内容の良し悪しと著作物性とは関係が無いということですね。

さて、このツイートが著作物であることはいいとして、問題は、「引用」が認められるかどうかです。

2 引用の成否について

著作権法32条には、「引用」についての規定が置かれており、簡単に言うと、
すでに公表された著作物を常識的な範囲内で使用することは著作権侵害じゃないですよ
というものです。

今回の発信者は、上の「卑怯者のクソ野郎じゃねえかツイート」をスクショで引用し、
「私に対してのリプ  何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」と呟きました。
意訳すると、「なんかすごい恫喝されてるけど皆これどう思います?ひどいですよね?私何もしてませんよ?」
ということで、これを言うために問題のツイートをスクショで引用したのです。

このスクショの引用が無いと、何を言っているのか分かりませんし、引用元ツイートの方が文字数が多いとはいえ「私に対してのリプ  何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」をメインとして伝えたいというのはわかるので、常識的な範囲内かなとも思えます。

ただ、裁判所はこう言いました。
「ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しな ければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうする と,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用すること なく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反す るものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。 また,前記認定事実によれば,本件各投稿と,これに占める原告各投稿の スクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。したがって,原告各投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しツイ ッターに掲載することは,著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないというべきである。」

①Twitterの規約違反やん!と、②スクショでかいし、これを晒すのが目的やろ?
です。

ネット上の記事を見ると、
①Twitterの規約違反をごり押しして「引用」を認めないのはおかしいのではないか?実質的な理由ではないですよね?という見解が見られます。

ただ、この①の理由の裏には、私が以前の記事でも述べた以下の理由が潜んでいるのだと思います。

スクショ画像が改変される可能性がある、投稿者本人がツイートを消した場合にも拡散することができるのでその場合明らかに投稿者の意思に反する拡散になってしまう、引用リツイートと違って見た人が元ツイートにワンクリックで容易にたどり着けるものでないため投稿者の利益とはなりにくい(むしろ晒されるだけになってしまう)等の問題がある
というものです。

なぜこれら理由が潜んでいると言えるのかというと、そもそもこれらの理由によりTwitter社は、利用規約で、正規の引用リツイート以外のリツイートを推奨していないと考えられるからです。

判決文にもこれら実質的理由が盛り込まれればよかったですが、実際は少し疑問符の付く判決になってしまいましたね。

以上から、私の見解としては、「スクショリツイートはやはり著作権侵害。訴えられる前にやめよう!」というものです。
ただ、この裁判、被告側が控訴しているようです。 もしかすると、高裁でこの判断はひっくり返るかもしれません。
注目していきたいですね。

このような著作権の問題のみならず、誹謗中傷やプライバシー侵害等ネット上のトラブルについて幅広く、ご相談を受け付けております。 御用の方は、mitsumura@vflaw.net までご連絡ください。では!

弁護士の満村です!

ネットの利用が拡大するにあたって増えている問題として著作権の問題があります。

伝統的には著作権は大型紛争(映画、有名な絵画、人気キャラクター等を巡る盗作、無断転載など)が主流で、これらを通じて裁判例も蓄積されてきたという印象ですが、最近はネットの広がりの中で必然的に小型紛争が日々発生しているという分野になってきています(勿論、弁護士を利用するほどの案件は多くないと思いますが)。

実は、著作権法ふくむ知的財産法は司法試験の選択科目(他には、倒産法、税法等)なのですが、選択科目であるがゆえに知的財産法についてあまり知識の無い弁護士はけっこういます(ちなみに私は知的財産法選択でした)。

で、弁護士でもそうですから当然法律家でない方の知識レベルも高いとは言えず、それ故、あまりよくわからない中で「著作権侵害だ!」と言ってみたり、実は他人の著作権を侵害しているコンテンツを知らず知らずのうちに享受してしまったりしています。

そんなこんなで、著作権についての発信をしようと思うわけですが、今回はTwitterにおける「ツイート」にまつわる著作権侵害について書いていきたいと思います。

“人のツイートを拡散したらその投稿者の著作権を侵害するか”ということが議論の対象です。

場合分けして、
①リツイート
②ツイートのスクショ等を添付してのツイート
③パクツイ(他人の投稿内容を自分の投稿として発信する行為)
を見ていきます。


1 著作物性

著作権侵害が認められるためには、大前提として、対象のコンテンツが法的に「著作物」と認められる必要があります。

この「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(著作権法第2条1項1号)。

ただ、これだと少しわかりにくいので、「その人の個性が現れている表現行為」くらいに考えてもいいと思います(多少法的な厳密さは失われますが)。

では、ツイートのような単なる文章が著作物性を持つことはあるのでしょうか。

掲示板への書き込みを書籍に収録したことが問題となった東京高判平成14年10月29日によると、「著作物性が認められるための創作性の要件は厳格に解釈すべきではなく,むしろ,表現者の個性が何らかの形で発揮されていれば足りるという程度に,緩やかに解釈し,具体的な著作物性の判断に当たっては,決まり文句による時候のあいさつなど,創作性がないことが明らかである場合を除いては,著作物性を認める方向で判断するのが相当である。」と著作物性は緩やかに理解されています。

ツイートも単なる事実を述べたものや単なる挨拶のようなものではなく、その人の個性が現れたようなものであれば著作物性が認められるでしょう。
例えば、「今人気のカレーのお店に行ってきました!」くらいでは単に事実の報告であって著作物にはならないかと思いますが、そのカレーを自分なりにレビューするなどひと手間加われば著作物性が認められうるツイートになります。

2 著作権侵害

では、著作権を侵害するというのはどういう状態のことを言うのでしょう。

ここが著作権法の難しいところですが、著作物性が認められるとその著作物にはいろいろな権利が発生し、これらをまとめて著作権や著作者人格権などと言うことになります。
単に「著作権侵害だ!」と言っても、著作権法を知っている人からすると、「なに権について言っているんだこの人は・・・?」と悩むことになります。

全てを紹介できないので、ここではネットにおけるツイートの利用に関係しそうな公衆送信権複製権、氏名表示権を取り扱います。

公衆送信権・・・著作物をネットなどで公衆に対して送信し多くの人が見られるようにする権利

複製権・・・著作物を様々な媒体でコピーする権利

氏名表示権・・・自分の著作物を公表する時に、著作者名を表示するかしないか、表示するとすれば実名とするか変名とするかを決定する権利(著作者人格権)

名前の通りなので案外権利の中身は分かりやすいですね。
 (ちなみに、これら以外にも、音楽を演奏する権利、演劇を上演する権利、彫刻などを展示する権利なんかもあるんですよ。)

そして、①~③どれであっても、他人の著作物たるツイートをネットを使って公衆に送信し、また、同じ内容のツイートを自分のアカウント上に別途表示させているわけですからコピーしていることになります(①リツイートについては、全く同じツイートのTwitter上での表示させ方を変えるだけだという考え方から公衆送信権と複製権侵害を否定する向きがありますが分かりやすさの為ここでは捨象させてください)。

それでは、①~③は全てツイートをした人の上記権利を侵害することになってしまいそうですね。
ただし、これは法律の基本的な考え方の現れと言えますが、「本人が承諾しているならいいじゃない」という法理が適用されます。でも、「おれは承諾してないよ!」と言えば承諾していないことになるのか?
以下、Twitterの利用規約を見てみます。

Twitterの利用規約はいちいち長くてなんだかよく分からないと思った人も多いかと思いますが、
まず、
“ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿または表示することによって、当社があらゆる媒体または配信方法を使ってかかるコンテンツを使用、コピー、・・・配信するための、世界的かつ非独占的ライセンスを当社に対し無償で許諾することになります。このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧可能とすることを承認することになります。”(一部省略)
と書いています。
「え、じゃあ使い放題?」と思われた方もいるかもしれないのですが、利用規約にはさらに、
“ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、・・・、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約・・・に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。”(一部省略)
と書いており、
「Twitter社が認める方法で使えよ」と読めます。
なので、Twitter上で明確に認められている「①リツイート」は既に投稿者の承諾を得ていてるのでOKになります。

なぜこれが認められているかを実質面で考察するとすれば、ツイートをその状態のまま表示させるのであれば誰が書いたものか分かるそのツイートが拡散されれば多くの場合投稿者にとってプラスになるそもそもその投稿者はツイートという形式で世界中に向けて自ら発信している、といったことが言えます。
そうだとすると、「②ツイートのスクショを添付してのツイート」も、だれの投稿か分かるし、その投稿者が発信したままの状態で拡散するというもので、いわゆる引用リツイートとほぼ同じですからOKと考えることができます。

しかし、この考えには落とし穴が無いわけではありません。
この②では、スクショ画像が改変されている可能性がある投稿者本人がツイートを消した場合にも拡散することができるのでその場合明らかに投稿者の意思に反する拡散になってしまう引用リツイートと違って見た人が元ツイートにワンクリックで容易にたどり着けるものでないため投稿者の利益とはなりにくい(むしろ晒されるだけになってしまう)等の問題があり、やはり引用リツイートとは性質が異なるため、Twitter社がこれを明確に禁止する可能性や裁判所が違法認定する可能性も無くは無いと思います。

Twitter社が明確に禁止しなくても、やはり「あまりしない方がいいこと」と言えるかもしれません。

これは難しい議論で、今後考え方は流動していきそうですが、このような著作権法について考える材料が少し提供できたのであれば幸いです。


あ、忘れていましたが、「③パクツイ」がありましたね。

言うまでもなくアウトです。

完全な盗用なので、利用規約により承諾が得られているものとも考え難く、他人の投稿から他人の名前を削って自分の投稿のように発信するものなので明らかに氏名表示権を侵害します。

バズっている投稿を見て、「あ、私もこれをやれば注目されるかも」と考えてしまうのは分からなくもないですが、やめた方が無難です。
「少し表現を変えればいいのか?」という疑問も湧くところですが、それについてはまた機会があれば記事にできればなと思います。

今回の記事は以上です。
もし著作権についての法律相談がありましたら受け付けておりますので、ご連絡ください。
場合によっては、削除請求や損害賠償請求が考えられますし、逆にそれらの請求を受けてしまったということもあり得ます。
ご相談はmitsumura@vflaw.netまで。

メールでの簡単な相談は無料でやっております。具体的な検討に入る場合には有料相談(30分3000円)とさせていただいております。電話やZoom等でも対応していますよ。
また、自分やそのご家族など当事者としての相談に限定させていただいておりますので、「自分には関係ないけどこれってどうなの?」などという相談は申し訳ありませんがお断りさせていただいております。

ではでは!

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