弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係、労働関係の法律問題についての発信をしています。

カテゴリ: 労働

こんにちは!
弁護士の満村です。

今回は、どのような行為がセクハラ・パワハラになるのかについて書いていきたいと思います。
慰謝料相場や証拠収集についても書いています。

「もしかしたら、職場でされている行為はセクハラorパワハラかもしれない?」と思われている方に読んでいただきたい記事です。 

セクハラ・パワハラの定義について

案外、多くの人はセクハラもパワハラも大雑把に何となく理解しているだけで、どのような場合にこれらに該当するのか厳密に考えたことはないかもしれません。

また、近年は「〇〇ハラ」などと色んなハラスメントが生まれてきているので、余計に判断が難しいですよね。
そこで、法律上のこれらの定義を見ていきましょう。

セクシュアルハラスメント
とは、
職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの、又は、当該性的な言動により、労働者の就業環境が害されるものと定義されます(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条1項)。 

パワーハラスメント
とは、
職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものと定義されます(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。

そして、それぞれ、このようなことが起こらないよう、会社には必要な防止措置をとることが義務付けられているのです。

勿論、これらに該当しない場合でも、いじめ・いやがらせ等違法な行為があれば法的な責任追及が可能なのですが、これらに該当すると、
①明示的に禁止された行為なので違法性が認められやすい
②防止できなかった会社の責任も追及しやすい

という意味があると思われます。

以下では、ハラスメントについて簡潔に説明していきます。
目次で大きく項目を分けているので、ご自身の興味関心に応じて適宜スキップしていただければと思います。



セクハラについて

(1)「職場」でなければセクハラでは無いのか?

「職場」の範囲は必ずしも物理的な仕事場に限定されるものではありません。

平成28年7月20日名古屋高裁判決では、同じ職場の従業員(加害者)が、被害者に対して、
 ①就業時間中に近くに来て繰り返し交際を申し込む
 ②就業時間外に被害者宅に押しかけ、面会を求める
 ③被害者退職後も、複数回、被害者宅近くに長時間自動車を停車させる
という行為に及んだことなどがセクハラと認められました。

仕事と直接関係なさそうな②と③もセクハラと認められたのは、裁判所が、物理的な「職場」を超えて、「職場」で働くことをきっかけとして行われた性的嫌がらせもセクハラと認めたということが言えますね。
例えば、仕事後の飲み会でされた性的嫌がらせであっても、セクハラと認められることは大いにあり得ますよ。

(2)同性間でのセクハラも認められるのか。

認められます。

平成28年11月29日千葉地裁松戸支部判決では、大学講師である被害者(男性)が、受け持つクラスの男子生徒から、その臀部を触られるなどしたことについて、「精神的衝撃は決して小さなものではない」などとして不法行為が認められました。

この裁判例からは、同性間のセクハラも成立するという他にも、セクハラには地位の上下は関係ないということも分かりますね。

(3)1回のセクハラでアウト?

相手の意に反する身体的接触を受け、被害者が強い精神的苦痛を受けた場合では、1回でも就業環境を害すると判断され、セクハラに該当します。

(4)加害者にしか慰謝料請求ができないのか。

会社への請求も認められます。

上述しましたが、会社には、セクハラが起こらないように必要な措置をとることが義務付けられています。
何の対策も取らず、漫然とこれを放置していたような場合には会社にも慰謝料請求できることになります。
例えば、
 就業規則にハラスメントの禁止や対処方針等が何も規定されていない
 ハラスメントの相談窓口がない
 窓口や上司にセクハラの相談をしたがまともに対応してもらえなかった
などの場合には会社にも責任が生じる場合があるということです。

パワハラについて

(1)「職場」でなければセクハラでは無いのか?

「職場」の範囲は必ずしも物理的な仕事場に限定されるものではありません。

平成28年12月20日東京地裁判決では、被害者が加害者である上司から、勤務時間外の飲み会において、鼻の頭にたばこの火を押し付けられたり、カラオケ店のマイクで殴打されるという暴行を受けたことについて、いじめ・パワハラであり不法行為を構成すると判断しました。

「職場」といっても、物理的な仕事場所のみに限定するものでないことが分かります。

(2)使用者や上司からの行為に限定されるのか?

パワハラは、「優越的な関係を背景とした言動」と定義されています。
しかし、それは使用者や上司の言動には必ずしも限定されません。

厚労省のパワハラ指針によると、優越的な関係については、
 ①職務上の地位が上位の者による場合
 ②自身が同僚又は部下である場合
 ③同僚又は部下からの集団による場合
が例示されており、使用者や上司によるものに限定していません。

その上で、同指針では、「優越的な関係」とは、労働者(被害者)になされた言動に対して、抵抗又は拒絶できない蓋然性が高い関係を指すものと説明されています。

3)1回のパワハラでアウト?

言動の頻度と継続性は考慮されますが、強い身体・精神的苦痛を与える態様の言動の場合は1回でも就業環境を害する場合があり得ると理解されています。

たった一度の行為でも、度が過ぎればパワハラとして違法行為となってしまうわけです。

(4)加害者にしか慰謝料請求ができないのか。

会社への請求も認められます。

上述しましたが、会社には、パワハラが起こらないように必要な措置をとることが義務付けられています。
何の対策も取らず、漫然とこれを放置していたような場合には会社にも慰謝料請求できることになります。
例えば、就業規則にハラスメントの禁止や対処方針等が何も規定されていない、ハラスメントの相談窓口がない、窓口や上司にパワハラの相談をしたがまともに対応してもらえなかった、などの場合には会社にも責任が生じる場合があるということです。


慰謝料相場について

数十万円から100万円程度が相場と言えるでしょう。
特にひどい場合には、100万円を超えることもあります。

優越的関係の程度、頻度・期間、退職にまで至っているか、うつ病等を発症しているか、複数人からによるものかどうか等により慰謝料額は増額する傾向にあります。
セクハラの場合には特に性交渉を強要するにまで至っているか等、性への干渉の程度が当然増額原因になります。


被害に遭ったときの証拠収集について

ハラスメントは密室で行われることも多く、証拠が残っていないこともよくあるのですが、それでは慰謝料請求ができなくなってしまう恐れもあります。そこで、以下のような証拠をとっておくといいでしょう。

 ①LINEやメールなどの履歴(スクショしておくとなお良し)
 ②証人になってくれる第三者
 ③医師の診断書(治療費請求のため領収書も大事)
 ④防犯カメラなどの映像記録
 ⑤被害直後のメモなどの記述
 ⑥録音記録

 ②について
責任追及する段階になってから証人になってくれるような人を探しても中々見つからないことが多いです。
ハラスメントの実情を知っているのは会社内部の人のみであることは多いですが、会社内部の人は会社からお金を貰って働いている手前、中々会社に不利なことを言ってくれません。
被害を受けたタイミングで、会社外の人に相談しておくといったことは一つの手です。

 ③について
ハラスメントがきっかけで心身に不調が出たら、すぐに病院にかかることも重要です。
その時点でのハラスメントの事実が立証しやすいですし、ハラスメントと認められれば治療費も請求できます。




以上、セクハラ・パワハラについて解説しました。

もし、この記事を読んでいただいた方の中で、実際に被害に悩んでいる方がおられれば一度ご相談ください。
メール、電話、Zoom等でも相談受け付けます。最初の連絡はこちらまで
mitsumura@vflaw.net

ではでは。

弁護士の満村です!

前回の記事では残業代請求の基礎知識や具体的な準備について書きましたが、


今回は、休日や深夜に出勤した場合の給料について簡潔に書きます。

① 休日手当
休日出勤をした場合に支払われる給料は「休日手当」ということになり、通常の給料の1.35倍となります。

ただ、「自分の会社は週休2日だから、土日両方出勤でもしたらものすごい手当が出るのか」と思われた方、ちょっと注意しなければならないことがあります。

ここでいう「休日」というのは、労働基準法35条1項で定められた「法定休日」のことで、これは週1日とされているんです。
あなたの休日が2日であるのは、会社がそう定めてくれているというだけです。

なので、週休2日のあなたが週7日出勤したとしたら、「休日手当」として割増賃金になるのは1日分だけです。

ただ、法律で「休日」と扱われない休日の出勤であっても、その週に40時間以上働いている場合はその出勤は残業扱いとなるので1.25倍の割増賃金になりますよ。
なぜか分からない人は前回の記事も見てみてください。

②深夜労働
午後10時から午前5時までの時間帯に働いていれば、「深夜労働」として、その間の給料は1.25倍となります。

また、深夜労働が残業としてなされた場合(例えば、午前10時から午後11時まで働いたときの最後の1時間)は、残業の割増と深夜労働の割増の足し算として扱われます。
両方25%の割増なので、50%の割増となり、通常の給料の1.5倍で計算します。

また、「休日」に出勤して、それが深夜労働になれば、35%+25%=60%の割増になります。

③大企業の場合の特別手当
あなたの勤める会社が一定の大企業の場合には、残業が月60時間を超えれば1.25倍ではなく1.5倍で残業代を計算することとされています(労働基準法37条1項但書)。

なぜ大企業だけかというと、このルールは現在のところ、労働基準法138条に言う「中小事業主」を除外することとされているからです。
この除外ルールは令和5年4月1日から廃止され、中小事業主も1.5倍ルールに従うことになります。

④まとめ
以上、いかがでしたでしょうか?

そうです。割増賃金の計算は非常に難しいです笑

自分でペンと紙とタイムカードを用意しただけではかなり時間と労力を使う必要があるでしょう。
ただ、前回の記事とこの記事で書いたことを参考にして概算だけでもしてみるのはありです。
思いのほか、未払いの残業代などが見つかるかもしれません。

分からないこと追加で聞きたいという要望があれば、
mitsumura@vflaw.netまでお問い合わせ下さい。

可能な限り質問に答えたいと思います。

ではでは!














 

こんにちは!
弁護士の満村です。

今回は、自分にも未払い残業代請求権が発生しているのか?を知るための基礎知識についてまとめた記事です。ごく簡潔に書きます。

最後には、「未払い残業代発生していそう!」と気づいた方向けにどういう証拠を集めておくといいかについても言及します。

では、見ていきましょう。

1 残業代とは

なんとなく「残業代」と言われるものの法律上の正体は労働基準法第37条に書いている「割増賃金」の一つで「法定時間外労働」とも言います。

「割増賃金」には、「残業代」以外に「休日手当」「深夜手当」も含まれます。
が、分かりにくくなるので以下では「残業代」だけを扱います。


では、この「残業代」が発生しているかどうか、どのように判断するといいでしょうか。

労働者は、1週間40時間、1日8時間の法定労働時間を超えて労働する義務を負いません(労基法32条)。
しかし、会社は労組などと36協定を締結した上で、この法定労働時間を超えて労働させることができます。
法定労働時間を超えてした労働が「残業」ということになります。
例えば、「今週は1日7時間労働だったが、6日働いた」という場合は、1日8時間の枠には入っていますが、1週間で42時間働いているので、最後の2時間分は残業です。

そして、残業をさせた場合には、その時間の賃金を払わないといけないことは当然のこととして、通常の賃金より額を増やした割増賃金にしないといけないのです
割増率は1.25倍です。
会社としては当然払いたくないわけです。

2  固定残業代とは

未払残業代が発生する1番の原因とも言えるかもしれないのがこの「固定残業代」です。

これは、一定時間残業するとあらかじめ見なして、毎月残業代を固定で支払うこととするものです。
会社としてはいちいち残業代を細かく計算する必要がなくなり便利なので採用するとことは多いです。

もっとも、固定残業代制を採用していても、この「一定時間分」を超える残業がなされた場合には超えた分の残業代を支払わなければなりません。
これを支払ってないとして紛争に発展するケースが多いです。

では、この固定残業代は「固定残業代」と言う名目で支払われているかというと、①「業務手当」「精勤手当」などの名目にしていたり、②「基本給」の一部が固定残業代だと会社が思っているケースが割とあります。
皆様の給与明細はどうなっているでしょうか?

そして、果たしてどの手当が固定残業代なのか、もしくは基本給のどの部分が固定残業代なのかは、雇用契約に関する契約書等の記載や、事前の会社からの説明内容などに照らして判断するというのが判例法理となっています。

「何の説明もされてないよ!」という方は、もしかすると会社は払っているつもりでも、法的には残業代が全く支払われていない状態かもしれません。要確認です。

3  残業代請求権額の算定

では、いよいよ残業代請求権額を算定します。

あなたの所定労働時間は「午前9時から午後6時(休憩1時間)、土日休日」だったとします。
ちなみに、所定労働時間とは、実際に働いた時間ではなく、就業規則や雇用契約書で定められている労働時間のことです。休憩時間は除きます。

①まず、上の所定労働時間を超えて働いた時間(=残業時間)を把握します。

最終的には請求したい期間全部の残業時間を把握しなければいけませんが、試算するだけならとりあえず今月の残業時間をざっくり把握してください。

②そして、次に自分の時間給を把握します。

給与明細等に書いている「基本給」や諸手当を合計します(月給制なら先月の額を確認してみてください)。
ただし、「家族手当」「住宅手当」などは、場合によってはここに入れられません。
とりあえず気にせず入れてもらってもいいですが、詳しくはこちらhttps://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-5a.pdf  をご覧ください。

また、当然、残業代として払われているものもここには入れませんよ。

そして、この合計額を1か月分の所定労働時間で割ります。
月給合計÷月の所定労働時間=時間給ということです。
あなたの所定労働時間は、1日8時間、土日休日なので、仮にその月の平日が23日とすると、8時間×23日=184時間です。

厳密にいうと、例えば年末年始の休みなどイレギュラーなものがあるので、1年の労働時間数を出して、÷12をしますが、煩わしければ上のように今月の労働時間数を出してください。そんなに変わりません。


時間給いくらくらいでしたか?

③最後に、(①の残業時間)×(②の時間給)×1.25をしてください
それがあなたの月の残業代です。



ここで一つ気づいた方がいるかもしれません。
会社が、固定残業代と思って支給していたお金が、実は残業代と見なせないものであった場合、これはあなたの時間給の算定基礎に含まれますので、時間給が増えることになります。
そうすると、会社から見れば、あなたの残業代の合計額が増えてしまうばかりか、残業代も全く支払っていなかったことになるので、一気に大金を請求されるということになっていましますね。
業界的にはこれを「ダブルパンチ」などと言います。

4 証拠収集

ここまで見てきて、もしかすると未払い残業代があったという方もおられるかもしれません。

これを本格的に請求していこうとすると基本的には証拠が必要になります。
タイムカードがオーソドックスな証拠となりますが、以下のものでも証拠になりえます。

・出退勤管理システムの記録
・PCのログイン・ログオフ記録
・オフィスの入退館記録
・会社アカウントから自分が出した電子メール
・交通系ICカードの利用記録
・業務日報
・日記

来るべき残業代請求に備えてしっかり証拠を残しておきましょう。

証拠が手元に無いという場合にでも、弁護士に相談し、会社に記録を開示請求することもできますよ。

5 最後に

いかがでしたでしょうか。
未払いの残業代はありましたか?

在職中に残業代請求をするのは心理的に中々難しいということが多いですから、例えば転職を期にこれまでの未払い残業代を請求するということも検討してもいいかもしれません。

残業代についての相談があればご連絡ください。
mitsumura@vflaw.net
それでは!

こんにちは!
弁護士の満村です。

皆さん、残業代請求権についてどれくらい知っていますか?
いま会社で働かれている方や少し前まで働いていたという方にはぜひ知っておいて欲しいのがこの残業代請求権です。

「そんなにいっぱい働いているわけでもないし、周りの同僚も何も言ってないし、残業代なんて無いでしょー」と思われている方も多いかと思いますが、会社の時間管理の不徹底等によって実は未払い残業代が発生しているなんてことは意外に多いです

また、「固定残業代」を払われている場合でも、
実際の残業代が固定残業代を超えているケースもよくあり、その場合は、差額を会社に請求することができます。

残業代をどうやって計算するか、についてはまた別の記事で紹介しますが、今回は、残業代請求権の消滅時効期間が延長された、ということを紹介していきます。

①どれだけ延長される? 

今までの残業代請求権の消滅時効期間は2年間でした(労働基準法第115条)。

しかし、これが「労働基準法の一部を改正する法律(令和二年法律第十三号)」によって、
3年間」に延長されました。

さらに、この3年間というのは経過措置で、最終的には「5年間」に延長されることになります。

「残業代請求権の消滅時効期間が延長されて何がいいの?」と思われるかもしれませんが、
これまで、残業代を請求していく段階で2年以上前に働いた分の残業代は消滅してしまっていました。

これが、3年、5年と延長されていくと、当然、増えた分だけ請求額が増加することになります

ちなみに、これまでの労働基準法では、残業代請求権を含む賃金請求権の消滅時効の起算日が不明確となっていたので、これを「賃金支払日」と定めました。

ということは、今後は、「本来その残業代が支払われるべきだった日」から3年間は(将来的には5年間)その請求権は消滅しないということになります。

②いつから延長される? 

この改正法が施行されたのは令和2年4月1日です(「施行」=「法令が現実に効力を発した日」)。

よって、令和2年4月1日までに支払日が来ている残業代については、残念ながら旧法適用で、消滅時効期間は2年になります。

そして、令和2年4月1日以降に支払日が来る残業代については、新法適用で、消滅時効期間は3年となります。

「消滅時効期間が5年間になるのはいつなの?」ということについては、まだ正確な予測ができませんが、
改正労働基準法附則第3条に「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定について、 その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とあるので、
5年後以降にさらなる延長の検討がなされることになるでしょう。

いかがでしたでしょうか。残業代請求権については今後も取り上げていこうと思います。

この記事を見て、「実は自分にも未払い残業代があるのでは」と思われた方、一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。かなり大きな額が請求できるかもしれません。

残業代に関する相談は下記メールアドレスまで☟
mitsumura@vflaw.net

それではまた!

こんにちは!

以前リストラについて記事を書きましたが、今回は日本におけるリストラの新たな流れについて書きたいと思います。 

黒字リストラって聞いたことありましたか?

黒字リストラ」とは、好業績であっても将来的なリスクを見越して、組織をリストラクチャリング(再構築)することをいいます。

普通、これまでリストラは会社の業績不振による延命措置的な位置づけで行われてきました。

しかし、リストラ=赤字リストラの時代は終わってきているんです。

なぜ今黒字リストラか

2019年、トヨタの豊田章男社長が「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言して話題になりました。

また、経団連の中西会は「新卒一括採用、年功序列、終身雇用がセットになっている日本型雇用システムの見直しを議論すべき」と発言しています。


そして、かつては終身雇用、生涯安泰と言われたような大手企業による早期・希望退職募集のニュースが相次いでいます。
さらには今年に入ってコロナの影響でより厳しい局面にあります。


長い不景気が続き、まさに変革が求められる日本の経済において、ある種の従業員の社会保障を担ってきた会社のあり方が大きく変化しているといっていいでしょう。


次々と黒字リストラを行う企業の目的は大きく分けるとこの2つではないでしょうか。

①人件費削減

②将来目線での事業構造改革




人件費削減は簡単なことです。

能力の低い社員に辞めて貰えば、その分給料が浮いて経営のスリム化が図れます。

特に、年功序列の給与体系を取ってきた日本企業にとって、歳の分給料が高いだけの「働かないおじさん」を切れるのはかなりのメリットを享受できます。


これからのAI/IoT/ビッグデータ時代に備えて、企業も既存の事業の見直しを行っています。

その中で、いらない部門やいらない社員というのが必ず浮き彫りになりますよね。

企業はこれらの「いらない」を切り捨て、新しい時代に適合する事業や社員を欲しがっているのです。
その意味での黒字リストラもあるということですね。

人間が働かない時代

上では、これから、いらない人材がリストラされ、その分いる人材が補充されるというようなニュアンスになっていたかもしれません。

しかし、補充されるのはロボットかもしれません。

というより、企業は既にロボットと人を入れ替えるためにリストラをしているという指摘もできます。

これからAIがより高度化すれば、確実にロボットにさせた方がいい業務は増えてくるでしょう。

継続的に給料を支払わねばならず、「セクハラ」「パワハラ」「男女トラブル」など面倒ごとを発生させる人より、ロボットにドンっと初期投資した方がよっぽど合理的と判断する経営者は絶対に増えてくるはずです。

では、この黒字リストラ時代を生き抜くには自分がどのような人材になるべきか自ずと決まってくるような気もします。

仕事に辛さを感じることはすごく分かりますが、少なくとも、職場への不満を日々愚痴っていて、働く意欲を失っている人は、経営者から見たらすぐにでもロボットに変えたいと思うんじゃないでしょうか。

会社は今後どんどん、ある意味冷酷になっていきます。

「社員は家族」とは思ってくれません。

じゃあ、自分も今の会社のためにでなくて、自分のためにスキルを身につけたり、将来有望な会社に転職したりという策をとるべきではないでしょうか。

まとめ

過去の記事では、今後転職市場が拡大する、転職が普通になる、ということを書いていましたが、逆に、これまで書いたように会社側から社員を切るリストラも普通になってくるでしょう。

社員が会社に忠誠を尽くしたり、縛られたりする時代は終わりました。

ジョブ型雇用の記事も書きましたが、自分の「ジョブ(スキル)」を基準に社会人ライフを送っていただければと思います。


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