弁護士の満村です!
今回はYouTuberの動画を無断で切り抜いた(キャプチャした)画像をネット掲示板に貼り付けたら発信者情報開示請求を受けてしまった、という場合に気になる損害賠償金額について、参考になる裁判例を紹介したいと思います。
簡潔に、著作権侵害をした場合の損害賠償金額算定等の考え方についての解説をしてから裁判例紹介をしようと思うので、解説が不要な方は下記目次から裁判例の方に飛んでください!
目次
①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?
②令和の虎切り抜き画像投稿事件判決の紹介
③まとめ
この事件で「そもそもなぜこれが著作権侵害なのか」等については前回の記事で解説しています。
しかし、なぜこの金額になったか知っている人は意外に少数かもしれません。
著作権侵害の場合の損害額の計算については著作権法上いくつかの算定基準が与えられています。
損害額の立証困難への救済規定とも言われます。
それが著作権法114条です。
この1項は、「著作権侵害行為によって作成された侵害品の譲渡数量×侵害行為がなければ販売できた物(DVDとか)の単位数量当たりの利益額」という基準を与えています。
また、3項では、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」すなわち、「ライセンス料相当額の損害額を請求できる」という基準を与えています。
ネット上でも、この素材を使うには〇〇円みたいな写真とかありますよね。まあ、あんな感じと考えてもらえばいいかと思います。
先ほどのファスト映画判決の記事では、 とされています。
この「1回の再生につき200円」というのは、YouTube上での各映画作品のレンタル視聴のための価格400円~500円を基準に導いた金額のようですが、ここから3項を適用して総再生回数を掛け算して「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出したようです。
ただ、これ、レンタル価格があるので導き出せた数字ですよね・・・?
そのような単体でのレンタル価格がないYouTube動画の場合どうなるんでしょうか? それをこれから本記事のメインとなる裁判例の紹介で見ていきたいと思います。
「令和の虎」というYouTubeの人気チャンネルの運営会社が原告となり、「令和の虎」のYouTube動画からキャプチャした静止画(「本件静止画」)を自身の複数のブログ記事(「本件各記事」)に大量に貼り付けたブロガーの被告に損害賠償請求をした事件でした。
しかしやはりここで、YouTube動画による収益はあるとはいえ、被告が貼り付けたのは動画そのものではなく画像だし、そもそも売ってる物でもないし、どうやって賠償額を算定するの?という疑問が沸き上がります。
そこで、原告は以下のように主張しました。 これを受けて、裁判所は、この原告主張の方向性を概ね認めつつも、被告による本件静止画の使い方が、1本の動画につき30~60枚程度キャプチャ画像を時系列で貼っていき、それぞれ本件静止画ごとに説明を追記するというもので、ほぼ動画を丸ごと把握できる内容になっていたことから、「むしろ動画としてそのまま使用する場合の使用料を基準にすべき」ということを言って最終的に以下のように判示しました。 「実際の被害状況的に700万円超えはちょっとやりすぎな感じがするし、まあ、200万円くらいが相当じゃない?」という結論ありきの判決のような気もしますが、このNHKとかのメディアのライセンス料を基準とするやり方は今後も通用していくでしょうね。
本事件では「令和の虎」の動画内容をほぼ説明しきるような画像の使い方だったため、映像のライセンス料が基準となりましたが、掲示板に1枚、2枚画像を貼り付けて批判したりするような使い方だと原告主張のように静止画のライセンス料が基準となり、1枚につき2万円とかになっていくのではないかなと考えられます。
著作権侵害した場合の賠償金ってすごい高いんでしょ?と漠然と思っている人も多かったと思いますが、実際には、侵害した対象の著作物によって全然違ってきたりするんですね。
少しでも参考になれば幸いです。
著作権やネット上のトラブルその他法的トラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
弁護士法人長堀橋フィル 弁護士満村和樹
( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで。
では!
今回はYouTuberの動画を無断で切り抜いた(キャプチャした)画像をネット掲示板に貼り付けたら発信者情報開示請求を受けてしまった、という場合に気になる損害賠償金額について、参考になる裁判例を紹介したいと思います。
簡潔に、著作権侵害をした場合の損害賠償金額算定等の考え方についての解説をしてから裁判例紹介をしようと思うので、解説が不要な方は下記目次から裁判例の方に飛んでください!
目次
①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?
②令和の虎切り抜き画像投稿事件判決の紹介
③まとめ
①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?
読者様の中には、「ファスト映画」の著作権侵害事件で巨額の賠償金が認められたことが記憶に新しい方がいらっしゃるかもしれません。 なんと投稿者二人に5億円の損害賠償責任が認められました。 実際のニュース記事はこんな感じです☟ まともに支払えば人生崩壊レベルの賠償額です。この事件で「そもそもなぜこれが著作権侵害なのか」等については前回の記事で解説しています。
しかし、なぜこの金額になったか知っている人は意外に少数かもしれません。
著作権侵害の場合の損害額の計算については著作権法上いくつかの算定基準が与えられています。
損害額の立証困難への救済規定とも言われます。
それが著作権法114条です。
この1項は、「著作権侵害行為によって作成された侵害品の譲渡数量×侵害行為がなければ販売できた物(DVDとか)の単位数量当たりの利益額」という基準を与えています。
また、3項では、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」すなわち、「ライセンス料相当額の損害額を請求できる」という基準を与えています。
ネット上でも、この素材を使うには〇〇円みたいな写真とかありますよね。まあ、あんな感じと考えてもらえばいいかと思います。
先ほどのファスト映画判決の記事では、 とされています。
この「1回の再生につき200円」というのは、YouTube上での各映画作品のレンタル視聴のための価格400円~500円を基準に導いた金額のようですが、ここから3項を適用して総再生回数を掛け算して「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出したようです。
ただ、これ、レンタル価格があるので導き出せた数字ですよね・・・?
そのような単体でのレンタル価格がないYouTube動画の場合どうなるんでしょうか? それをこれから本記事のメインとなる裁判例の紹介で見ていきたいと思います。
②令和の虎キャプチャ画像投稿事件判決の紹介
東京地方裁判所令和4年11月24日判決です。「令和の虎」というYouTubeの人気チャンネルの運営会社が原告となり、「令和の虎」のYouTube動画からキャプチャした静止画(「本件静止画」)を自身の複数のブログ記事(「本件各記事」)に大量に貼り付けたブロガーの被告に損害賠償請求をした事件でした。
しかしやはりここで、YouTube動画による収益はあるとはいえ、被告が貼り付けたのは動画そのものではなく画像だし、そもそも売ってる物でもないし、どうやって賠償額を算定するの?という疑問が沸き上がります。
そこで、原告は以下のように主張しました。 これを受けて、裁判所は、この原告主張の方向性を概ね認めつつも、被告による本件静止画の使い方が、1本の動画につき30~60枚程度キャプチャ画像を時系列で貼っていき、それぞれ本件静止画ごとに説明を追記するというもので、ほぼ動画を丸ごと把握できる内容になっていたことから、「むしろ動画としてそのまま使用する場合の使用料を基準にすべき」ということを言って最終的に以下のように判示しました。 「実際の被害状況的に700万円超えはちょっとやりすぎな感じがするし、まあ、200万円くらいが相当じゃない?」という結論ありきの判決のような気もしますが、このNHKとかのメディアのライセンス料を基準とするやり方は今後も通用していくでしょうね。
本事件では「令和の虎」の動画内容をほぼ説明しきるような画像の使い方だったため、映像のライセンス料が基準となりましたが、掲示板に1枚、2枚画像を貼り付けて批判したりするような使い方だと原告主張のように静止画のライセンス料が基準となり、1枚につき2万円とかになっていくのではないかなと考えられます。
③まとめ
どうでしたでしょうか?著作権侵害した場合の賠償金ってすごい高いんでしょ?と漠然と思っている人も多かったと思いますが、実際には、侵害した対象の著作物によって全然違ってきたりするんですね。
少しでも参考になれば幸いです。
著作権やネット上のトラブルその他法的トラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
弁護士法人長堀橋フィル 弁護士満村和樹
( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで。
では!