弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や労働関係の法律問題についての発信をしています。

2020年10月

弁護士の満村です。

ここ数か月の間に発信者情報開示請求についての複数の相談を受けました。

一般論として、本当に不法行為となるような表現なのか疑わしい場合には裁判例などを通して十分な検討が必要ですし、交渉の場で請求されている慰謝料額が相当な額なのかという検討も必要で、やはり応じるべきでない相手方の主張には反論を加えなければなりません

その点、やはりこの問題は弁護士が入らないと難しいところがあるかと思います。

今回は報酬額も含め、僕が弁護士としてどういったことをしているか簡単に紹介したいと思います。

1 プロバイダからの意見照会について

発信者情報開示請求の「発信者」とされてしまった方が最初にそのことに気づくのは多くはプロバイダからの「意見照会書」かと思います。
そこには、あなたがどのサイトで、いつ、どういった内容の投稿をしたかが特定されており、
この投稿について開示を請求されていますよ、ということが書いています(開示を請求されているのはあなたではなくプロバイダです)。

これには「回答書」が一緒についていて、そこに
開示に同意するor同意しない、かどちらかを選ぶ欄があり、同意しない場合にはその理由を書きこみます。これをプロバイダに返送することになります。

ここに書かれた不同意の理由はプロバイダにとって、開示を請求してきている相手方とのやりとりの出発点にもなるものですので、まだ訴訟当事者でない我々にとってもテキトーにあしらうことはできないものになります。

例えば、「同意しない 理由:何が悪いか分からない。あいつが悪いと思う。」
なんて書けば、プロバイダにまともな理由が無いと伝えるようなもので、
せっかく自分の代わりに相手方と対峙してくれているプロバイダを敵に回すようなものです。

この回答書の作成を、裁判例などを調査した上で代わりにやる業務をしています。

これを分量に応じて4万円~5万円(税抜き)投稿数が1件増えるごとに1万円増額でやっています。
この場合、法律相談料はいただきません。

業界平均より安いかどうかは納得感のためにもご自身で調べていただければと思います。

2 示談交渉について

この回答書を出しても、投稿内容次第で個人情報が開示されてしまうことは当然あります。
そうなるとおそらく次は相手方から「あなたの投稿で傷つけられました。示談するには〇〇万円払って下さい」等が書かれた通知書(弁護士が作成していることでしょう)が届きます。

このとき、既に上の「回答書」に書いた不同意理由としてこちらの反論の骨子は提供できているはずなので、ご自身でこの通知書に返答することはできなくはないと思います。

また、回答書作成の料金の範囲で大体の慰謝料額の相場もお伝えするので相手方の言う示談金額が相当かどうかの判断もある程度はできるかと思います(相談時に分かっている情報の範囲内の話にはなりますが)。

弁護士費用これ以上は出せない・・・ということもあると思うのでここからはご自分で対応されることはナシではないかなと思います。
ただ、弁護士がついているか否かで相手の出方も変わり得ますし、相手方の主張を理解できないこともでてくるでしょうから勿論つけていた方が安心です。

この示談交渉については、
着手金10万(税込11万円)~15万円(税込16.5万円)
成功報酬 10万円(税込11万円)
法律相談料 なし

としています。

3 損害賠償請求訴訟について

示談が不成立となった場合は、次は損害賠償請求訴訟を提起されることになります。
もっとも、費用対効果の面で相手方もここまで踏み切るか確実なところは言えません。
と、いうか、相手方(及び代理人)次第では、訴訟はしたくないから示談交渉でごり押ししてくることが想像に難くありません。

ただ訴訟になってしまった場合は、弁護士費用も別途かかってきてしまいますし、訴訟での弁護士費用はその手間やかかる時間からいって、安くても30万円くらいはかかってきてしまうと思います。

ここ最近の例で見たところ、権利侵害の性質として多くは名誉感情侵害(侮辱)が主張されていますから、裁判所で認容される慰謝料額はせいぜい2、30万円多くて50万円とかでしょう(1ケタ万円などかなり低額の裁判例もあります)。
勿論投稿内容や回数などによってはもっと高額になることもありますが。

これに相手方の弁護士費用の一部が損害額としてのってきて(特に発信者情報開示請求の費用)全部で50万円~100万円くらいかなあと思います
発信者情報開示請求の弁護士費用は全額認められるのか一部なのか裁判例でもわかれているので難しいんですが、、ある程度一律の基準が確立されてほしいものです。

で、すでにこちらの反論の骨子が弁護士による「回答書」である程度は分かっている上に、
発信者情報開示請求の本案訴訟で負けているというこの段階(新たな事実主張ができない限り権利侵害性が認められる可能性はそれなりに高い)
でさらに弁護士費用を払うのか、というのは考えてしまう問題だと思います。

勿論、つけた方が安心ですし、弁護士として無責任に「もう弁護士つけなくていいよ!」と言うことはできません。
ただ、弁護士なしの本人訴訟は制度上当然できますし、裁判所とも適宜話し合いながら所定の書式にすでに提供された反論の骨子を書き、「この事実は認める」「これは事実ではない」などと慎重に主張していくことは可能です。

もちろん積極的におすすめはしませんが、弁護士を頼まないのは選択肢としてはナシではないでしょう。

僕が受ける場合は、
着手金 15万円(税込16.5万円)~25万円(27.5万円)請求額や分量により決定
成功報酬 経済的利益(減額幅)の16%
法律相談料 なし


でやります。

4 最後に

今回書きたかったのは以上になります。


誤解もあるかもしれませんが、僕は権利侵害を無理にでも擁護してお金を儲けようなどとは思っていません(この件で儲けるつもりがそもそもありません)。
また、特定の人物や団体への対抗意識でやっているわけでもありません(そんな暇ではありません)。
ただこの件で困る人が増えるだろうなと思って、情報発信や助言等をしていて今に至るというだけです。

やったことはやったことと認める姿勢は必要です。
ただ、人の権利を侵害していないのであれば対抗しましょう。
権利を侵害してしまったのであれば反省しなければなりませんが、法的に正当な範囲で償う術を考えましょう。

この問題にこれまで関わってきた「いち弁護士」として今提供できることについて書きました。
メール、電話、Zoom等でも相談受け付けています。最初の連絡はこちらまでmitsumura@vflaw.net
回答書には期限もありますので出来る限り迅速に対応します。

なお、上でお示しした報酬額や一連の手続きに対する僕の考えについてのお問い合わせには、自分が当事者になったorなりそうという方に限定して対応することとなります。
多忙のためです。申し訳ありません。
上のような具体的な依頼はしないが、相談だけ聞いてもらいたいという方にも対応しています。
その場合、30分3000円(税込み3300円)としています。

では!

弁護士の満村です!
最近、時間がなくて書けていませんでしたが、久々の投稿です。

今回のテーマは「スラップ訴訟」です。

Twitter上ではすっかりメジャーな言葉になりつつあるような気がしますが、
スラップ訴訟とは何か?
と聞かれてすぐに答えられる人はどれくらいいるでしょうか。

以下で解説します。

まず、この言葉の発祥はアメリカです。

SLAPPと書きますが、これは、

Strategic  Lawsuit  against  Public Participation

の略です。

これで意味が分かった方はいますか?
難しい単語が並んでいるわけではないですが、いったい何のことでしょう。

日本語にすると、「公的参加を妨げるための戦略的訴訟」と訳すことができます。

この「公的参加」がよくわからないと思いますが、簡単に言うと、
公的な関心事に対する批判的言論を封殺するための訴訟ということですね。

もっと大雑把に、「違法な法的措置の行使」のように考えている方もいるかもしれませんが、元々は以上のような意味を持った用語なのです。

この語源から、もっとかみ砕くと、
大きな影響力を持った団体等がその影響力も相まって批判を受けたときに、
(この批判こそが市民によるPublic Participation)

その批判を止めさせ自らの影響力を維持するために強力な手段である訴訟を選択する
(まさにStrategic  Lawsuit)

ということであり、古くは、日本でも、不都合な事実をつつかれた大手企業が出版社を訴えたり、政策を批判された地方公共団体が反対派議員を訴えたり等、大きな金と権力を携えた団体がスラップ訴訟を行った事例が積み重ねられてきています。

これが今は、著名人VS一般人という構図になってネットを騒がせています。

勿論、今行われている名誉棄損訴訟の中で、スラップ訴訟の可能性があるのは一部でしょう。
スラップ訴訟かそうでないかを見分けることは容易ではありません。

ここで、訴訟提起が違法になる基準を提供した有名な最高裁判決があります。
最高裁第三小法廷判決昭和63年1月26日です。

「訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。」ということが判示されました。

ネットの名誉棄損訴訟であれば、当該投稿が、自分の社会的評価を低下させるほどのことではないとわかっていながら訴訟をするというのがスラップ訴訟となるでしょう。

話は少し変わりますが、
発信者情報開示請求を経た損害賠償請求訴訟がスラップとなる可能性があるかということについて自分なりの見解を述べて本記事を終わりにしたいと思います。

もっとも、個人的にはこの議論は少々ばかばかしい議論だと思っています。

スラップ訴訟に当たるような訴訟は少なくとも発信者情報開示請求の本案訴訟では蹴られる可能性は高いですから、そもそも発信者に訴状が届くまでになることは稀でしょう。

しかし、「そこで蹴られるからいいじゃん」じゃなくて、
名誉棄損に当たらないことを最初からある程度認識しながら、それでも嫌がらせや金目的等で、
人様に訴訟を起こそうとする、
その心理的態度や、少なからぬ相手への影響(意見照会書による恐怖等)が問題なのです。



その前提で、ちょっとだけ見解を述べます。

発信者情報開示請求の要件には、「権利侵害の明白性」というのがあります。
総務省逐条解説では、「「明らか」というのは、権利の侵害がなされたことが明白であるという趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味する」とされています。
まあ、なかなか厳格な要件ととらえてもいいと思います。

発信者情報開示請求は最初「仮処分」で始まることが多いです。
「仮処分」では、「疎明」が求められますが、「疎明」は「証明」と違って、ハードルは低いです。
なので、後から覆ることは大いにあり得ます。
とりあえず今回はこの段階のことを話します。

「疎明」とは言え、裁判所に「権利侵害の明白性」が認められれば、ある程度の根拠に基づいて「自分の主張は認められるんだ!」と思うのが普通でしょうから、その後の訴訟も基本的にスラップ訴訟などとされることは少ないでしょう。

しかし、その後の訴訟はまず被告が違いますよね。原告が隠せていた新たな事実が出てくる可能性があります。
この場合は、その新事実を最初から認識していたのに、それを隠して法的手続きを進めていたのであり、スラップ訴訟の可能性はありますね。


まあ、そんなところですが、やはりこんなこと議論するのはばかばかしいのです。
「やってはいけないこと」に対して、その一部を見せてお墨付きをもらったとて、「やってはいけないこと」に変わりはないのです。

当初からの慎重な検討なくして、人を訴えてはいけないんです。


と、いうことで、今回の記事は以上です。
ではでは!

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