弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。弁護士として考えたことや日々のお役立ち情報を発信していきたいと思ってます!

2020年07月

こんにちは!
弁護士の満村です。

今回は、自分にも未払い残業代請求権が発生しているのか?を知るための基礎知識についてまとめた記事です。ごく簡潔に書きます。

最後には、「未払い残業代発生していそう!」と気づいた方向けにどういう証拠を集めておくといいかについても言及します。

では、見ていきましょう。

1 残業代とは

なんとなく「残業代」と言われるものの法律上の正体は労働基準法第37条に書いている「割増賃金」の一つで「法定時間外労働」とも言います。

「割増賃金」には、「残業代」以外に「休日手当」「深夜手当」も含まれます。
が、分かりにくくなるので以下では「残業代」だけを扱います。


では、この「残業代」が発生しているかどうか、どのように判断するといいでしょうか。

労働者は、1週間40時間、1日8時間の法定労働時間を超えて労働する義務を負いません(労基法32条)。
しかし、会社は労組などと36協定を締結した上で、この法定労働時間を超えて労働させることができます。
法定労働時間を超えてした労働が「残業」ということになります。
例えば、「今週は1日7時間労働だったが、6日働いた」という場合は、1日8時間の枠には入っていますが、1週間で42時間働いているので、最後の2時間分は残業です。

そして、残業をさせた場合には、その時間の賃金を払わないといけないことは当然のこととして、通常の賃金より額を増やした割増賃金にしないといけないのです
割増率は1.25倍です。
会社としては当然払いたくないわけです。

2  固定残業代とは

未払残業代が発生する1番の原因とも言えるかもしれないのがこの「固定残業代」です。

これは、一定時間残業するとあらかじめ見なして、毎月残業代を固定で支払うこととするものです。
会社としてはいちいち残業代を細かく計算する必要がなくなり便利なので採用するとことは多いです。

もっとも、固定残業代制を採用していても、この「一定時間分」を超える残業がなされた場合には超えた分の残業代を支払わなければなりません。
これを支払ってないとして紛争に発展するケースが多いです。

では、この固定残業代は「固定残業代」と言う名目で支払われているかというと、①「業務手当」「精勤手当」などの名目にしていたり、②「基本給」の一部が固定残業代だと会社が思っているケースが割とあります。
皆様の給与明細はどうなっているでしょうか?

そして、果たしてどの手当が固定残業代なのか、もしくは基本給のどの部分が固定残業代なのかは、雇用契約に関する契約書等の記載や、事前の会社からの説明内容などに照らして判断するというのが判例法理となっています。

「何の説明もされてないよ!」という方は、もしかすると会社は払っているつもりでも、法的には残業代が全く支払われていない状態かもしれません。要確認です。

3  残業代請求権額の算定

では、いよいよ残業代請求権額を算定します。

あなたの所定労働時間は「午前9時から午後6時(休憩1時間)、土日休日」だったとします。
ちなみに、所定労働時間とは、実際に働いた時間ではなく、就業規則や雇用契約書で定められている労働時間のことです。休憩時間は除きます。

①まず、上の所定労働時間を超えて働いた時間(=残業時間)を把握します。

最終的には請求したい期間全部の残業時間を把握しなければいけませんが、試算するだけならとりあえず今月の残業時間をざっくり把握してください。

②そして、次に自分の時間給を把握します。

給与明細等に書いている「基本給」や諸手当を合計します(月給制なら先月の額を確認してみてください)。
ただし、「家族手当」「住宅手当」などは、場合によってはここに入れられません。
とりあえず気にせず入れてもらってもいいですが、詳しくはこちらhttps://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-5a.pdf  をご覧ください。

また、当然、残業代として払われているものもここには入れませんよ。

そして、この合計額を1か月分の所定労働時間で割ります。
月給合計÷月の所定労働時間=時間給ということです。
あなたの所定労働時間は、1日8時間、土日休日なので、仮にその月の平日が23日とすると、8時間×23日=184時間です。

厳密にいうと、例えば年末年始の休みなどイレギュラーなものがあるので、1年の労働時間数を出して、÷12をしますが、煩わしければ上のように今月の労働時間数を出してください。そんなに変わりません。


時間給いくらくらいでしたか?

③最後に、(①の残業時間)×(②の時間給)×1.25をしてください
それがあなたの月の残業代です。



ここで一つ気づいた方がいるかもしれません。
会社が、固定残業代と思って支給していたお金が、実は残業代と見なせないものであった場合、これはあなたの時間給の算定基礎に含まれますので、時間給が増えることになります。
そうすると、会社から見れば、あなたの残業代の合計額が増えてしまうばかりか、残業代も全く支払っていなかったことになるので、一気に大金を請求されるということになっていましますね。
業界的にはこれを「ダブルパンチ」などと言います。

4 証拠収集

ここまで見てきて、もしかすると未払い残業代があったという方もおられるかもしれません。

これを本格的に請求していこうとすると基本的には証拠が必要になります。
タイムカードがオーソドックスな証拠となりますが、以下のものでも証拠になりえます。

・出退勤管理システムの記録
・PCのログイン・ログオフ記録
・オフィスの入退館記録
・会社アカウントから自分が出した電子メール
・交通系ICカードの利用記録
・業務日報
・日記

来るべき残業代請求に備えてしっかり証拠を残しておきましょう。

証拠が手元に無いという場合にでも、弁護士に相談し、会社に記録を開示請求することもできますよ。

5 最後に

いかがでしたでしょうか。
未払いの残業代はありましたか?

在職中に残業代請求をするのは心理的に中々難しいということが多いですから、例えば転職を期にこれまでの未払い残業代を請求するということも検討してもいいかもしれません。

残業代についての相談があればご連絡ください。
mitsumura@vflaw.net
それでは!

こんにちは!
弁護士の満村です。

皆さん、残業代請求権についてどれくらい知っていますか?
いま会社で働かれている方や少し前まで働いていたという方にはぜひ知っておいて欲しいのがこの残業代請求権です。

「そんなにいっぱい働いているわけでもないし、周りの同僚も何も言ってないし、残業代なんて無いでしょー」と思われている方も多いかと思いますが、会社の時間管理の不徹底等によって実は未払い残業代が発生しているなんてことは意外に多いです

また、「固定残業代」を払われている場合でも、
実際の残業代が固定残業代を超えているケースもよくあり、その場合は、差額を会社に請求することができます。

残業代をどうやって計算するか、についてはまた別の記事で紹介しますが、今回は、残業代請求権の消滅時効期間が延長された、ということを紹介していきます。

①どれだけ延長される? 

今までの残業代請求権の消滅時効期間は2年間でした(労働基準法第115条)。

しかし、これが「労働基準法の一部を改正する法律(令和二年法律第十三号)」によって、
3年間」に延長されました。

さらに、この3年間というのは経過措置で、最終的には「5年間」に延長されることになります。

「残業代請求権の消滅時効期間が延長されて何がいいの?」と思われるかもしれませんが、
これまで、残業代を請求していく段階で2年以上前に働いた分の残業代は消滅してしまっていました。

これが、3年、5年と延長されていくと、当然、増えた分だけ請求額が増加することになります

ちなみに、これまでの労働基準法では、残業代請求権を含む賃金請求権の消滅時効の起算日が不明確となっていたので、これを「賃金支払日」と定めました。

ということは、今後は、「本来その残業代が支払われるべきだった日」から3年間は(将来的には5年間)その請求権は消滅しないということになります。

②いつから延長される? 

この改正法が施行されたのは令和2年4月1日です(「施行」=「法令が現実に効力を発した日」)。

よって、令和2年4月1日までに支払日が来ている残業代については、残念ながら旧法適用で、消滅時効期間は2年になります。

そして、令和2年4月1日以降に支払日が来る残業代については、新法適用で、消滅時効期間は3年となります。

「消滅時効期間が5年間になるのはいつなの?」ということについては、まだ正確な予測ができませんが、
改正労働基準法附則第3条に「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定について、 その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とあるので、
5年後以降にさらなる延長の検討がなされることになるでしょう。

いかがでしたでしょうか。残業代請求権については今後も取り上げていこうと思います。

この記事を見て、「実は自分にも未払い残業代があるのでは」と思われた方、一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。かなり大きな額が請求できるかもしれません。

残業代に関する相談は下記メールアドレスまで☟
mitsumura@vflaw.net

それではまた!

こんにちは!
弁護士の満村です。

今回は、「誹謗中傷、どこからが違法?」シリーズの最終記事になります。

ネット上のなりすましというのは案外被害が多く見受けられます。

例えば、Twitterのアカウントを乗っ取ったり、勝手に同姓同名のアカウントを作って、本人の評価を低下させるような投稿をするというものです。

これは、僕の実体験ですが、
いきなり学生時代の知人女性からLINEで連絡があり、そんなに親しくなかったのに何事?と思って内容を見れば「コンビニでアマゾンのギフト券を買ってください」でした。。
 
では、このなりすましはどういう基準で違法性が判断されるかというと、これまでの記事に書いた通りの名誉棄損やプライバシー侵害の要件を充足しているかによります
ただ、AさんがBさんに「ばか、あほ」と言うのではなく、Bさんに成りすます誰かがBさんとして「僕はばかでーす」と言うことによってBさんの評価を落とすと言うことなので、考えるポイントが少し異なってきます。裁判例と共に説明します。

また、ハッキング等によりアウントを乗っ取った場合はこれらに加えて不正アクセス禁止法違反となり、警察に捕まることがあります。

では、例によってまた裁判例を見ていきましょう。


①女性タレントの人格乗っ取り事案
 原告である元女性タレントの名前でTwitterのアカウントを作り、現役当時にテレビ出演をしていた際の原告の画像を張り付けて以下のような卑猥な発言を繰り返したという事案(東京地判平成28年10月19日)。
 
「最近生活に刺激がなくてテンションが下がっていたんだけど二日前からパンティをはくのをやめたの。そしたらテンションがどんどん上がってきちゃって」
 
「私はこの番組に出たことでセフレ、すなわちセックスフレンドが3人から30人に増えたことかしら。」

判決 
本件各記事は、その内容の多くが卑わいなものであって、しかも、原告の画像を張り付けるなどすることにより、一般通常人を基準として、これらの各記事が原告自身の手で投稿された(いわゆるツイートされた)と受け止められるものであり、
その結果、原告がこのような卑わいな発言をする人物であるとして、原告の社会的信用を損なうものであることが認められる、として、名誉棄損を認めました。

コメント
なりすまし事例での一番の論点は、
「その投稿が人の社会的評価を低下させるか」というよりも、
「一般人からして、その投稿主が本人であると認識されるか」ということになります。
多くの裁判例でもそこが一大争点になっています。

例えば、安倍首相の名前と顔写真を使ってアカウントを作り、
「私、昨日からパンティはいてないのよー」と投稿したところで、それを本当に安倍首相の投稿と思うことはまず無いでしょう。
元女性タレントという肩書があったからこそ、上のような投稿に真実味が出たのです。

②風俗店店長へのなりすまし  
 何者かが、とある風俗店の店長になりすまし、「当店スタッフの言うことだけ信じましょう」、「日本人は韓国人の言いなりになりましょう」、「当店ではMERS感染の心配をする必要はありません、その理由は私がそう言ってるからです」という書き込みを行ったという事案(東京地判平成28年1月25日)。
 
これは文字だけで、顔写真は上げられていない。

判決
本件掲示板への投稿は全て匿名でされており、投稿するに当たってあえて実名を告げる者はいないと考えられるから、
冒頭に「□□の経営者です。」などと名乗っている本件投稿を見て、
それが本物の□□の経営者によって書き込まれたものと信じる者は、少なくとも、こうしたスレッドを閲読する者の間ではほとんどいないこと、
また、上のように自分の店の評価を落とすような投稿をまさか店長がするわけがないだろうと考えられることを考慮して、請求は棄却された。

コメント
その投稿が本人のものか、なりすまし犯のものかを見分けるときには、やはり、その人がそういう投稿をしそうなのか、という点が重視されていますね。

③エッチなお姉さんに勝手にされていた事案

 何者かが、被告の運営する出会い系サイトに原告の女性を男性との出会いを求める女性として掲載し、このサイトを閲覧した複数の男性に原告の電話番号を教えたため、それらの男性から原告が電話を受けるなどした事案(東京地判平成18年8月30日)。
 年齢・居住地や「お姉系、とにかくエッチです」などと掲載されていた。
 被告は、原告から最初に電子メールで本件情報の削除要請を受けた2日後に本件情報を削除しているが、原告は、被告には削除要請を受けてすぐに削除すべき義務があったと主張し慰謝料を請求した。


 判決
原告による最初の削除要請から削除までに2日間が経過したことが長期に過ぎるということはできず、被告が本件情報を削除する義務を懈怠したということはできない、とされた。

コメント
自分の情報があらぬ形で掲載されてしまえば、かなりの精神的苦痛を受けてしまうでしょう。

この場合、まずは迅速にサイト運営者に削除要請をするべきですが、運営者が事実を確認したにもかかわらず、必要な対応を取らない場合には慰謝料を支払う義務がありうることがこの裁判例から分かります。
ただ、事実確認に要する時間や、技術上の問題も考慮され、さすがにすぐに削除しないことをもって慰謝料が発生することはないと判断されていますね。

④最後に

「誹謗中傷、どこからが違法?」シリーズいかがでしたでしょうか。

「こういう事案が裁判になっているのか」「こういう判断がされているのか」など、
役に立つ情報が提供できたのであれば幸いです。

また、法律相談は、mitsumura@vflaw.netまで、お願い致します!

ではでは!

このページのトップヘ