弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係等の法律問題についての発信をしています。

2020年06月

こんにちは!
コロナの影響も徐々に薄れていき、美術館も開いていたので久々に行ってきました。
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大阪市立美術館です。

 天王寺駅前にあります。

フランスの17世紀〜19世紀にかけての絵画作品の展示なんですけど、すごい綺麗な作品ばかりで満足できました!ということでそこで撮影した絵画を載せますね!
上の絵画は1782年に製作された、エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブランという画家の絵で・・・

って、これって法律的にいいんでしたっけ?
著作権とかそういうのあるんでしょ・・・?
と思われた方のための記事です。笑
最近では、こういうブログでもSNSでも、いろんな写真や動画を乗っけることを誰でもやる時代になっていますから著作権の話は気になっている人は多いんじゃないでしょうか。
では、以下で解説していきます!

 

写真撮影やネット投稿のまずさ

まず、この問題は、①写真撮影した時点と、②それをネットにアップした時点と二つの時点で他人の著作権侵害の可能性があります。

①著作権法では,「印刷,写真,複写,録音,録画その他方法により有形的に再製すること。」を複製と定められていて,絵画を撮影する行為は著作権者の複製権を侵害する行為にあたり,禁止されています。

②また,絵画を撮影した写真をインターネットで送信すると著作権者の公衆送信権を侵害する行為にあたりますので,これも禁止されています。
インターネットの関係では,実際に送信する行為だけでなく,サーバにアップロードして何時でもインターネット上で閲覧することができる状態に置いただけでも著作権侵害となりますので,アップロード自体が禁止されています。
ブログへのアップも公衆送信権侵害になってしまうんですね・・・。

「弁護士がそんなことしていていいのか?」と聞こえてくるような気がしますが、 いやいやちょっと待ってください。
もうちょっと弁解させてください。

私的使用のための複製?

複製権公衆送信権を規定する著作権法には、複製権侵害の例外規定として、私的使用目的での複製を許容する30条があります。

私的に使うのであれば、その限りで自由に撮影して楽しむのはOK!ということなんですね。

もっと詳しく言うと、「私的使用」とは,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用をいい,私的使用を目的としたものであれば,著作物の種類を問わず,公表されたものか否かをも問わず,その複製が認められます。
「個人的に楽しむために写真にとったりするくらいなら、作品を作った人にそんなに不利益にならないし許してあげようよ」と言うことですね。

あれ?でも、ネットにあげちゃったら私的使用目的じゃなくない??

はい、その通りです。
公衆送信目的の撮影なのでガッツリアウトですね。
では、もう一つ別の弁解をさせてください。。。

著作権の保護期間

著作権には保護される期間が定められており,絵画ですと,創作した方が亡くなられてから50年経過すると著作権法により保護されなくなります。
ですから,創作した方が亡くなられてから50年以上経過した絵画は,著作権法による保護を受けることができない著作物となるのです。(改正により現在では死後70年)
ちなみに映画作品についてなど例外はあります。

これでようやく僕の写真アップ行為が違法でないことが分かりますね・・・。
18世紀の作品なのでまあまさか作者が生きているはずもなく。
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しかし、美術館で撮影が明示的に許可されていない部屋での撮影はやめた方がいいですね。
周りの人の迷惑になりますし、フラッシュで絵画が劣化することもあるらしいので。

ちなみに僕の上げた絵画はこの写真の通り「撮影OK!SNSで共有してね!」という表示のされた部屋のものです笑

流行りの音楽をバックに動画を投稿したら・・・。

おまけですが、何らかの動画の発信をするときにBGMをつけることは多いですよね。
これも問題となることがあるので気をつけてください。

著作権の一つに演奏権というものがあり、音楽作品の公衆へ向けて聞かせる行為は演奏権侵害です。
しかも、既製品であるCDをそのままかけると、レコード会社の原盤権を侵害することにもなってしまうんです。録音、編集などの努力にも権利が認められているのですね。

そうすると、
「他人の曲を自分で歌った動画を投稿する場合」→演奏権侵害
「他人の曲のCDや録音をそのままBGMにした動画を投稿する場合」→演奏権、原盤権侵害
になります。

ただ、YouTubeをはじめとした一部動画配信サービスでは、JASRACなどの著作権管理団体と包括的許諾契約を締結していて、大体の曲の使用はOKになっているようです。
ただ、自分で歌ったりせず、CDをそのままかける場合には、基本的には個別にレコード会社から許諾を取る必要があります。
これをやっていない人は結構多いんじゃないですかね・・・笑

まとめ

以上の通り、著作権法はかなり複雑で、著作物を日々利用して生活していたり、場合によっては他人の著作物を利用して収益したりしている人の中でも、知識をちゃんと備えている人は多くないのではないかと思います。

しかし、人の著作権を侵害すれば損害賠償請求をされる等大変なことになる可能性もあります。
気をつけながら、絵画、映画、音楽などの作品を楽しみたいものですね。
もし、「いやこれは間違っているよ!」というご指摘があればコメントください!
なかなか複雑で難しい分野なのでぜひ議論しましょう!

法律相談は、mitsumura@vflaw.netまで!
 

こんにちは!
皆さまは自動車の事故を目撃したり、自分が被害者になったことはあるでしょうか。
交通事故というのは、いつ自分が加害者にも被害者にもなるかわかりません。
今回は、自動車運転中自分が追突されたらどう動くべきか解説します。

なぜ、追突事故かというと、追突事故は全交通事故件数の半分弱を占めるほど一番よく起こる事故類型なんです!
急な事故に動揺して、適切な対処ができないと、後々損をすることになってしまいかねませんので記事を読んで基本的なことを理解してください。

事故発生時何をするか

事故発生直後は動揺して何をしていいか分からなくなるかもしれませんが以下のことをしてください。

①警察への通報
②保険会社への連絡
③連絡先の交換・証拠集め
④病院での診察
⑤人身事故の申請(負傷時)


では、それぞれなぜしなければならないか説明します。

①→どんなに軽微な事故であっても、警察への通報は法律上の義務で罰則もあるんです!
加害者が通報しない場合は自分で通報しましょう。
また、警察を呼ばないかぎり、事故が起きた事実を証明する『事故証明証』が発行されません。
事故証明証がないと、加害者への損害賠償請求や保険会社の補償が認められなくなる恐れがあります。

②→事故直後のサポートも受け付けている保険会社もありますので、警察に通報した後すぐ連絡すべきです!
弁護士費用特約に入っていれば、事故に関しての弁護士費用を支払ってもらえます。

③→警察が事故現場に到着するまでに、加害者と連絡先の交換を済ませておきましょう。
加害者本人との連絡が必要になる場合もあります。『名前』『住所』『電話番号』は聞いておきましょう。

警察も呼んでない、相手の情報も聞いていない、となると何の補償も受けられなくなりますよ・・・。

④→事故直後、体の異変に気付かなったが、実はむち打ちになっていたということもあります。
交通事故はケガをしているかどうかでその後の対応がかなり変わってきます。

⑤→賠償金の額や事故後の調査(実況見分)の有無、保険の適用範囲、加害者への処罰の有無など、物損事故は多くの面で人身事故に比べて不利です。
警察で物損事故として処理されている場合、診断書を提出して人身事故に切り替えてもらいましょう。


保険会社対応

追突事故の場合、ほとんどが被害者には過失はありません。
そして、こちらに過失がある場合には自分が加入している保険会社に示談交渉を代行してもらえるのですが、過失がない場合には代行してもらえないのです
なぜそんなことになるのでしょうか。
それは、こちらが無過失の場合、被害者は損害賠償責任を負わないので、被害者の加入している保険会社も当然何の責任も負いません。
と、いうことは、その保険会社は事件に利害関係を有しないので、代行するとすれば被害者の代理人として示談交渉をすることになりますが、それは非弁行為として違法になってしまいます。
弁護士以外が人を代理することは基本的に禁止されています(弁護士法72条)。
保険会社も責任を負う場合でないと示談交渉代行はできないのです。

では、追突事故の場合、ある程度自分で保険のことを知らないといけませんね。

まず、自賠責保険は強制加入の保険なので、事故の相手も当然加入しています。
ただ、自賠責保険は人身賠償しか対象としていませんし、傷害の場合の最高額は120万円と決められています。
そこで、物損(車の修理代等)や、120万円を超える人身損害については、相手方から取るか、相手方が任意保険に加入していれば、その保険会社から取るということになります。

ここで重要なのが、 通常、交通事故の慰謝料は保険会社が定める独自の基準で算出されますが、この基準は裁判を起こして請求できる慰謝料の相場よりも、低く設定されているケースがほとんどです。
そのため、弁護士に示談交渉を依頼して適切な慰謝料を請求してもらうことで、ほとんどの場合、示談金を増額できるのです。
また、依頼すれば、弁護士が交渉をしてくれるので、自ら保険会社と煩わしい交渉をする必要が無くなります。

まとめ

ここまで書いた知識があれば基本的に交通事故に適切に対応することができます。
難しい部分は専門家に任せてください。

ある日突然、事故の被害者になってしまった場合、自分でできることはしっかりして、あとは弁護士に任せてしまうのが一番いい選択と言えるのですね!

法律相談は、mitsumura@vflaw.netまで!


こんばんは。弁護士の満村です。

ブログを始めてから一週間と数日、ネット関連のことを中心に発信してきましたが、今回は整理解雇についてのお話です。

解雇ならわかるけど、整理解雇って何?と思われた方もいらっしゃるかもしれないですが、以下で解説していきます。

会社で働いている方も、会社を経営されている方にも知っておいていただきたい話です。

はじめに

整理解雇とは、経営不振による人員整理が解雇をもってなされる場合のことをいいます。
横領や度重なる無断欠勤などの労働者の責めに帰すべき事由によってなされる懲戒解雇などとは区別される類型の解雇です。

特に何かしたわけではないけど、会社が傾いていて、ある日突然肩たたきに遭うようなイメージですね。

そして、労働者の負い目が無いからこそ、会社は「経営が苦しいんだから、従業員には今すぐにでもやめてもらおう」と考えてしまいがちです。
しかし、法律上、労働者を解雇するのはそう簡単なことではないのです。

どのような場合に解雇は認められるのか

個別の労働者に対する一般的な解雇と同様、整理解雇についても、これが有効と認められるためには一定の要件が必要です。

それが「整理解雇の4要件(4要素)」と呼ばれるものです。
これについては、これらすべてを充たさない限り解雇はできないという「要件説」という考え方は長くありましたが、最近はこれら4つの要素を総合的に考慮して解雇の有効性を判断するという考え方の方が主流になってきているという傾向があります。
ただ、会社側としては、これら4つの要素をすべて真摯にとらえて慎重に解雇を行っていくべきです。

内容は以下で説明しますが、企業としては整理解雇にはそれなりに高いハードルがあると思って整理解雇に臨む方がいいでしょう。
逆に、労働者としては、急に解雇を言い渡された場合、「それって適法なのか?」と疑ってかかるべきです。
場合によっては、弁護士を頼るなどして自分の権利を守ってください。

整理解雇の4要素とは

(1)まず第1に検討されることとなるのは、人員削減の必要性です。  
 整理解雇は、経営不振等により人員削減が必要であるということを理由としてなされるわけですから、これが要件になるのは、当然のこととなります。  
 もっとも、今は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済的停滞という特別事情があるので、この要素はクリアされるケースが多いでしょう。

(2)次に、人員削減の手段として整理解雇を行う前に、労働者に対する打撃が少ない他の手段(配転・出向、希望退職の募集等)を行っているかが問題となります。  
 解雇回避努力義務の履践という言い方をされます。  
 過去の裁判例を見ると、配置転換・出向、そして希望退職の募集の検討・実施がほぼ必須とされていると考えられます。  
 さらには、現在は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、政府等の各種助成金がうけられるので、雇用調整助成金等を申請し、従業員を休業させるという手段が取れなかったかも重視されるでしょう。   解雇する前に、企業努力としてできる手段は尽くすべきと考えられるからです。
 
(3)また、解雇すべき人員の選定に合理性があることも必要となります。  
 具体的には、勤務地、所属部署、担当業務、勤務成績、会社に対する貢献度、年齢、家族構成等を勘案して人員が選定されることになると思われますが、いずれにしても、恣意的な人員選定は認められず、客観的で合理的な基準に基づいて、公正に人選がなされる必要があります。
 ただし、これらをすべて盛り込むような基準を作るのは困難ですし意義にも乏しいでしょう。  
 最近の裁判例を見ると、「これからの企業経営にとっての貢献可能性」を重視した基準は合理的とされる傾向があるように思えます(参考:東京地裁平成30年10月31日、東京地裁平成27年9月18日)。  
 次のような基準は客観的合理性があるとされやすいでしょう
 →① 休職者基準(休職者を優先して解雇する),② 病欠日数・休職日数基準,③ 人事考課基準(社内でのルールに基づいた評価の高低で人選する),④ 年齢基準。

(4)更に、整理解雇を実施するまでの間に、使用者は、労働組合又は労働者に対して整理解雇の必要性やその具体的内容(時期、規模、方法等)について十分に説明をし、これらの者と誠意をもって協議・交渉を行わなければなりません。
 手続きの妥当性などと言われます。  
 このような手続を全く踏まず、抜き打ち的に整理解雇を実施することは、認められません。
 例えば東京地裁平成24年3月30日では、「① 希望退職の募集に関する事柄,② 希望退職措置の応募状況,③ 人員削減の必要性に関する事柄,④ 稼働ベースの考え方,⑤ 被告が実施した解雇回避措置の内容,⑥ 原告らが提案するワークシェアリング等の解雇回避措置の実施の可否,⑦ 本件人選基準案の内容に関する事柄,⑧ 整理解雇を実施する場合の退職条件等の種々の事情について書面交付や面談などで真摯に説明した上で、想定外の質問に対しても真摯に対応したとして手続きの妥当性が肯定されています。

解雇の未来ー人材流動化社会ー

以上のように、会社が労働者を解雇するのはハードルがかなり高いです。
ただ、日本は労働者を厚く保護しすぎているということが言われることもあります。 
人材の流動化が進んでくれば、日本における「解雇のしやすさ」はどんどん加速していくかもしれません。
会社で働かれている方は、「会社内での自分の評価」よりも「業界内での自分の価値」を高めるように意識しながら日々働かれた方がいいのではないでしょうか。
自分はいつでももっといい会社にでも移れるという状態を作ることが、令和時代のサバイバル術かもしれません。
 
もし、コロナのあおりを受けて急に解雇されたけど納得いかない!という方はぜひ弁護士に相談されることをお勧めします。
別にもうあの会社に戻りたいわけでもない、という方でも、本来貰えるはずだったお金を回収できるかもしれません。

法律相談は、mitsumura@vflaw.netまで!
 では!

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