弁護士の満村です。
今回は「偽造開示請求」について。実際のご依頼を参考に書きます。
ネット関連のご相談を日々受けていますが、その多くは発信者情報開示請求に関する相談です。
むやみやたらと発信者情報開示請求をすることについての批判的意見がネット上を飛び交うこともありますが、多くの請求は少なくとも認められる余地のある妥当なものです。
しかし、法的に認められる余地のない投稿について、脅しや威嚇目的で発信者情報開示請求をすることは、倫理的に問題があるばかりか、プロバイダ責任制限法4条1項2号の「発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」をまず充たさない法に反した請求ということになります。
つい最近ご依頼を受けた件で次のような「トンデモ」請求がありました。
請求者が実際の投稿に酷い文章を付け加えるという偽造を行ったうえでの発信者情報開示請求でした。
これを本記事では「偽造開示請求」と命名して書いていきます。
依頼者様の承諾を得ましたので、以下ではブログ記事用に具体的事実を脚色して事案の内容を紹介すると共に、対処法等を書いていこうと思います。
1 事案
佐々木さん(仮名)は、ある日YouTubeで、特定の芸能人Aをやたらとこき下ろすような動画を見て、気分を害し、「そのような動画を上げるのはやめた方が良い」というコメントをしました。
すると、投稿者から「つまらんコメントしてくんなよ。お前非表示にするな。」と返信が来て、そのコメントは見れなくなってしまいました。
「このまま放っておいて、Aに対する根拠ないアンチ意見だけ残るのは良くない。」と思った佐々木さんは、その動画の概要欄に書いてあったその動画投稿者のブログと思われるサイトに移り、そのブログの記事に、「Aを根拠なくこき下ろすのはよくない。YouTubeもやめた方が良い。」とコメントしました。
すると、後日、契約するプロバイダから意見照会書が佐々木さんの自宅に届きました(意見照会書=発信者情報開示請求がなされたとき、請求を受けたプロバイダから投稿者に意見を求める書面 発信者情報開示請求=あるネット上の投稿をした者の個人情報取得を目指した請求)。
その意見照会書の内容は驚くべきものでした。佐々木さんのした投稿は、
「Aを根拠なくこき下ろすのはよくない。YouTubeもやめた方が良い。あと、お前殺しに行くからな。覚悟して待ってろよ。お前は死んだ方がいいんだから。」という内容になっていました。太字部分が付け加えられています。
慌てて佐々木さんは弁護士に相談しました。
2 どう対処する?
私は、このような偽造開示請求の相談を受けたのは初めてでしたが、このような請求はこれまでにも無かったわけでもないようです。
ポイントは「ブログにコメントしたこと」です。
ブログによっては、ブログ管理人が閲覧者ののコメントを勝手に編集することができるのでこのようなことが起こるということだと考えられます。
本当にとんでもない請求です。この請求自体、不法行為と言ってもいいと思います。
では、どのような反論をすればいいのでしょうか?
実際にした反論を紹介します(意見照会書に対する回答書における反論)。
(1)実際にコメントの偽造ができるのか検証してみた
ご依頼を受けてから、その請求者の使っていた無料ブログで新たにブログを開設しました。
意見照会書を見れば、請求対象の投稿がなされたページのURLが載っていますから、それで請求者の使っている無料ブログが判明しました。
そして、記事を作り、別端末からコメントを書き込みました。
管理者アカウントでコメントを見ると、コメントの下部に「編集」というボタンがありました(左下矢印部分)。

何とこの「編集」を押すとコメントの編集ができてしまいます。
これによって、コメントの偽造が可能になるのでしょう。
これら偽造に至る一連の操作を証拠化して、容易にコメントの偽造ができることを証明することにしました。
(2)同様の被害者との協力
本件では、たまたま同じ請求者から同じ被害を受けている方を見つけられました。
その方と連絡を取り、互いに「陳述書」を作成しました。
要は、別の方も同じ被害に遭っていることを書き記した書面を作成し、証拠にしました。
このようなケースでは、同じ被害が複数発生しているというのは、自分の反論に説得力を付与する心強い事実になります。
(3)当初の投稿の調査をプロバイダに促す
プロバイダは自らを媒介として行われたネット上の通信を管理しているわけですから、この偽造されたコメントの当初の内容の調査が可能でしょう。
この調査を十分にしてほしい旨念押しで主張しました。
3 注意喚起
事案の内容や実際にした対処法は以上のような感じです。
先にも述べましたが、このような偽造開示請求は大問題であり、不法行為にも該当しうる行為と思われます。
カッとなったとしてもやっていい行為ではありません。
また、他者のブログに攻撃的なコメントをするのもやめるべきでしょう。
コメントを偽造できる場合があることを知ってください。
実際に、偽造開示請求に遭ってしまった場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
この問題に限らず、ネット上のトラブルについてのご相談を広くお受けしていますので、mitsumura@vflaw.net まで気軽にご相談ください。
ではでは!


今回は「偽造開示請求」について。実際のご依頼を参考に書きます。
ネット関連のご相談を日々受けていますが、その多くは発信者情報開示請求に関する相談です。
むやみやたらと発信者情報開示請求をすることについての批判的意見がネット上を飛び交うこともありますが、多くの請求は少なくとも認められる余地のある妥当なものです。
しかし、法的に認められる余地のない投稿について、脅しや威嚇目的で発信者情報開示請求をすることは、倫理的に問題があるばかりか、プロバイダ責任制限法4条1項2号の「発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」をまず充たさない法に反した請求ということになります。
つい最近ご依頼を受けた件で次のような「トンデモ」請求がありました。
請求者が実際の投稿に酷い文章を付け加えるという偽造を行ったうえでの発信者情報開示請求でした。
これを本記事では「偽造開示請求」と命名して書いていきます。
依頼者様の承諾を得ましたので、以下ではブログ記事用に具体的事実を脚色して事案の内容を紹介すると共に、対処法等を書いていこうと思います。
1 事案
佐々木さん(仮名)は、ある日YouTubeで、特定の芸能人Aをやたらとこき下ろすような動画を見て、気分を害し、「そのような動画を上げるのはやめた方が良い」というコメントをしました。
すると、投稿者から「つまらんコメントしてくんなよ。お前非表示にするな。」と返信が来て、そのコメントは見れなくなってしまいました。
「このまま放っておいて、Aに対する根拠ないアンチ意見だけ残るのは良くない。」と思った佐々木さんは、その動画の概要欄に書いてあったその動画投稿者のブログと思われるサイトに移り、そのブログの記事に、「Aを根拠なくこき下ろすのはよくない。YouTubeもやめた方が良い。」とコメントしました。
すると、後日、契約するプロバイダから意見照会書が佐々木さんの自宅に届きました(意見照会書=発信者情報開示請求がなされたとき、請求を受けたプロバイダから投稿者に意見を求める書面 発信者情報開示請求=あるネット上の投稿をした者の個人情報取得を目指した請求)。
その意見照会書の内容は驚くべきものでした。佐々木さんのした投稿は、
「Aを根拠なくこき下ろすのはよくない。YouTubeもやめた方が良い。あと、お前殺しに行くからな。覚悟して待ってろよ。お前は死んだ方がいいんだから。」という内容になっていました。太字部分が付け加えられています。
慌てて佐々木さんは弁護士に相談しました。
2 どう対処する?
私は、このような偽造開示請求の相談を受けたのは初めてでしたが、このような請求はこれまでにも無かったわけでもないようです。
ポイントは「ブログにコメントしたこと」です。
ブログによっては、ブログ管理人が閲覧者ののコメントを勝手に編集することができるのでこのようなことが起こるということだと考えられます。
本当にとんでもない請求です。この請求自体、不法行為と言ってもいいと思います。
では、どのような反論をすればいいのでしょうか?
実際にした反論を紹介します(意見照会書に対する回答書における反論)。
(1)実際にコメントの偽造ができるのか検証してみた
ご依頼を受けてから、その請求者の使っていた無料ブログで新たにブログを開設しました。
意見照会書を見れば、請求対象の投稿がなされたページのURLが載っていますから、それで請求者の使っている無料ブログが判明しました。
そして、記事を作り、別端末からコメントを書き込みました。
管理者アカウントでコメントを見ると、コメントの下部に「編集」というボタンがありました(左下矢印部分)。

何とこの「編集」を押すとコメントの編集ができてしまいます。
これによって、コメントの偽造が可能になるのでしょう。
これら偽造に至る一連の操作を証拠化して、容易にコメントの偽造ができることを証明することにしました。
(2)同様の被害者との協力
本件では、たまたま同じ請求者から同じ被害を受けている方を見つけられました。
その方と連絡を取り、互いに「陳述書」を作成しました。
要は、別の方も同じ被害に遭っていることを書き記した書面を作成し、証拠にしました。
このようなケースでは、同じ被害が複数発生しているというのは、自分の反論に説得力を付与する心強い事実になります。
(3)当初の投稿の調査をプロバイダに促す
プロバイダは自らを媒介として行われたネット上の通信を管理しているわけですから、この偽造されたコメントの当初の内容の調査が可能でしょう。
この調査を十分にしてほしい旨念押しで主張しました。
3 注意喚起
事案の内容や実際にした対処法は以上のような感じです。
先にも述べましたが、このような偽造開示請求は大問題であり、不法行為にも該当しうる行為と思われます。
カッとなったとしてもやっていい行為ではありません。
また、他者のブログに攻撃的なコメントをするのもやめるべきでしょう。
コメントを偽造できる場合があることを知ってください。
実際に、偽造開示請求に遭ってしまった場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
この問題に限らず、ネット上のトラブルについてのご相談を広くお受けしていますので、mitsumura@vflaw.net まで気軽にご相談ください。
ではでは!


コメント
コメント一覧 (2)
ブログ主の偽造は証明されましたか?
このコメントを偽造された2名の方は、神田知宏先生の掲示板に書き込んでいた825さん、826さんなんでしょうか?
https://kandato.jp/bbs/11426/#comment-825
すごく悪質な手法で気がかりです。心配しています。
lawyer4715
が
しました