弁護士の満村です!
最近、時間がなくて書けていませんでしたが、久々の投稿です。
今回のテーマは「スラップ訴訟」です。
Twitter上ではすっかりメジャーな言葉になりつつあるような気がしますが、
スラップ訴訟とは何か?
と聞かれてすぐに答えられる人はどれくらいいるでしょうか。
以下で解説します。
まず、この言葉の発祥はアメリカです。
SLAPPと書きますが、これは、
Strategic Lawsuit against Public Participation
の略です。
これで意味が分かった方はいますか?
難しい単語が並んでいるわけではないですが、いったい何のことでしょう。
日本語にすると、「公的参加を妨げるための戦略的訴訟」と訳すことができます。
この「公的参加」がよくわからないと思いますが、簡単に言うと、
公的な関心事に対する批判的言論を封殺するための訴訟ということですね。
もっと大雑把に、「違法な法的措置の行使」のように考えている方もいるかもしれませんが、元々は以上のような意味を持った用語なのです。
この語源から、もっとかみ砕くと、
大きな影響力を持った団体等がその影響力も相まって批判を受けたときに、
(この批判こそが市民によるPublic Participation)
その批判を止めさせ自らの影響力を維持するために強力な手段である訴訟を選択する
(まさにStrategic Lawsuit)
ということであり、古くは、日本でも、不都合な事実をつつかれた大手企業が出版社を訴えたり、政策を批判された地方公共団体が反対派議員を訴えたり等、大きな金と権力を携えた団体がスラップ訴訟を行った事例が積み重ねられてきています。
これが今は、著名人VS一般人という構図になってネットを騒がせています。
勿論、今行われている名誉棄損訴訟の中で、スラップ訴訟の可能性があるのは一部でしょう。
スラップ訴訟かそうでないかを見分けることは容易ではありません。
ここで、訴訟提起が違法になる基準を提供した有名な最高裁判決があります。
最高裁第三小法廷判決昭和63年1月26日です。
「訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。」ということが判示されました。
ネットの名誉棄損訴訟であれば、当該投稿が、自分の社会的評価を低下させるほどのことではないとわかっていながら訴訟をするというのがスラップ訴訟となるでしょう。
話は少し変わりますが、
発信者情報開示請求を経た損害賠償請求訴訟がスラップとなる可能性があるかということについて自分なりの見解を述べて本記事を終わりにしたいと思います。
もっとも、個人的にはこの議論は少々ばかばかしい議論だと思っています。
スラップ訴訟に当たるような訴訟は少なくとも発信者情報開示請求の本案訴訟では蹴られる可能性は高いですから、そもそも発信者に訴状が届くまでになることは稀でしょう。
しかし、「そこで蹴られるからいいじゃん」じゃなくて、
名誉棄損に当たらないことを最初からある程度認識しながら、それでも嫌がらせや金目的等で、
人様に訴訟を起こそうとする、
その心理的態度や、少なからぬ相手への影響(意見照会書による恐怖等)が問題なのです。
その前提で、ちょっとだけ見解を述べます。
発信者情報開示請求の要件には、「権利侵害の明白性」というのがあります。
総務省逐条解説では、「「明らか」というのは、権利の侵害がなされたことが明白であるという趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味する」とされています。
まあ、なかなか厳格な要件ととらえてもいいと思います。
発信者情報開示請求は最初「仮処分」で始まることが多いです。
「仮処分」では、「疎明」が求められますが、「疎明」は「証明」と違って、ハードルは低いです。
なので、後から覆ることは大いにあり得ます。
とりあえず今回はこの段階のことを話します。
「疎明」とは言え、裁判所に「権利侵害の明白性」が認められれば、ある程度の根拠に基づいて「自分の主張は認められるんだ!」と思うのが普通でしょうから、その後の訴訟も基本的にスラップ訴訟などとされることは少ないでしょう。
しかし、その後の訴訟はまず被告が違いますよね。原告が隠せていた新たな事実が出てくる可能性があります。
この場合は、その新事実を最初から認識していたのに、それを隠して法的手続きを進めていたのであり、スラップ訴訟の可能性はありますね。
まあ、そんなところですが、やはりこんなこと議論するのはばかばかしいのです。
「やってはいけないこと」に対して、その一部を見せてお墨付きをもらったとて、「やってはいけないこと」に変わりはないのです。
当初からの慎重な検討なくして、人を訴えてはいけないんです。
と、いうことで、今回の記事は以上です。
ではでは!
最近、時間がなくて書けていませんでしたが、久々の投稿です。
今回のテーマは「スラップ訴訟」です。
Twitter上ではすっかりメジャーな言葉になりつつあるような気がしますが、
スラップ訴訟とは何か?
と聞かれてすぐに答えられる人はどれくらいいるでしょうか。
以下で解説します。
まず、この言葉の発祥はアメリカです。
SLAPPと書きますが、これは、
Strategic Lawsuit against Public Participation
の略です。
これで意味が分かった方はいますか?
難しい単語が並んでいるわけではないですが、いったい何のことでしょう。
日本語にすると、「公的参加を妨げるための戦略的訴訟」と訳すことができます。
この「公的参加」がよくわからないと思いますが、簡単に言うと、
公的な関心事に対する批判的言論を封殺するための訴訟ということですね。
もっと大雑把に、「違法な法的措置の行使」のように考えている方もいるかもしれませんが、元々は以上のような意味を持った用語なのです。
この語源から、もっとかみ砕くと、
大きな影響力を持った団体等がその影響力も相まって批判を受けたときに、
(この批判こそが市民によるPublic Participation)
その批判を止めさせ自らの影響力を維持するために強力な手段である訴訟を選択する
(まさにStrategic Lawsuit)
ということであり、古くは、日本でも、不都合な事実をつつかれた大手企業が出版社を訴えたり、政策を批判された地方公共団体が反対派議員を訴えたり等、大きな金と権力を携えた団体がスラップ訴訟を行った事例が積み重ねられてきています。
これが今は、著名人VS一般人という構図になってネットを騒がせています。
勿論、今行われている名誉棄損訴訟の中で、スラップ訴訟の可能性があるのは一部でしょう。
スラップ訴訟かそうでないかを見分けることは容易ではありません。
ここで、訴訟提起が違法になる基準を提供した有名な最高裁判決があります。
最高裁第三小法廷判決昭和63年1月26日です。
「訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。」ということが判示されました。
ネットの名誉棄損訴訟であれば、当該投稿が、自分の社会的評価を低下させるほどのことではないとわかっていながら訴訟をするというのがスラップ訴訟となるでしょう。
話は少し変わりますが、
発信者情報開示請求を経た損害賠償請求訴訟がスラップとなる可能性があるかということについて自分なりの見解を述べて本記事を終わりにしたいと思います。
もっとも、個人的にはこの議論は少々ばかばかしい議論だと思っています。
スラップ訴訟に当たるような訴訟は少なくとも発信者情報開示請求の本案訴訟では蹴られる可能性は高いですから、そもそも発信者に訴状が届くまでになることは稀でしょう。
しかし、「そこで蹴られるからいいじゃん」じゃなくて、
名誉棄損に当たらないことを最初からある程度認識しながら、それでも嫌がらせや金目的等で、
人様に訴訟を起こそうとする、
その心理的態度や、少なからぬ相手への影響(意見照会書による恐怖等)が問題なのです。
その前提で、ちょっとだけ見解を述べます。
発信者情報開示請求の要件には、「権利侵害の明白性」というのがあります。
総務省逐条解説では、「「明らか」というのは、権利の侵害がなされたことが明白であるという趣旨であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことまでを意味する」とされています。
まあ、なかなか厳格な要件ととらえてもいいと思います。
発信者情報開示請求は最初「仮処分」で始まることが多いです。
「仮処分」では、「疎明」が求められますが、「疎明」は「証明」と違って、ハードルは低いです。
なので、後から覆ることは大いにあり得ます。
とりあえず今回はこの段階のことを話します。
「疎明」とは言え、裁判所に「権利侵害の明白性」が認められれば、ある程度の根拠に基づいて「自分の主張は認められるんだ!」と思うのが普通でしょうから、その後の訴訟も基本的にスラップ訴訟などとされることは少ないでしょう。
しかし、その後の訴訟はまず被告が違いますよね。原告が隠せていた新たな事実が出てくる可能性があります。
この場合は、その新事実を最初から認識していたのに、それを隠して法的手続きを進めていたのであり、スラップ訴訟の可能性はありますね。
まあ、そんなところですが、やはりこんなこと議論するのはばかばかしいのです。
「やってはいけないこと」に対して、その一部を見せてお墨付きをもらったとて、「やってはいけないこと」に変わりはないのです。
当初からの慎重な検討なくして、人を訴えてはいけないんです。
と、いうことで、今回の記事は以上です。
ではでは!