弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や遺産相続関係、労働関係の法律問題についての発信をしています。

弁護士の満村です!

今回はYouTuberの動画を無断で切り抜いた(キャプチャした)画像をネット掲示板に貼り付けたら発信者情報開示請求を受けてしまった、という場合に気になる損害賠償金額について、参考になる裁判例を紹介したいと思います。

簡潔に、著作権侵害をした場合の損害賠償金額算定等の考え方についての解説をしてから裁判例紹介をしようと思うので、解説が不要な方は下記目次から裁判例の方に飛んでください!

目次
①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?
②令和の虎切り抜き画像投稿事件判決の紹介
③まとめ

①著作権侵害の賠償金っていくらになるの?

読者様の中には、「ファスト映画」の著作権侵害事件で巨額の賠償金が認められたことが記憶に新しい方がいらっしゃるかもしれません。 なんと投稿者二人に5億円の損害賠償責任が認められました。 実際のニュース記事はこんな感じです☟

映画を10分ほどの長さに短く無断編集した「ファスト映画」を動画投稿サイトに公開され著作権を侵害されたとして、東宝や松竹、東映などの大手映画会社やテレビ局など13社が無断投稿した男女2人に計5億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であった。杉浦正樹裁判長は著作権侵害を認め、請求通り全額の支払いを命じた。

出典:ファスト映画の損害額「1回再生で200円」、無断投稿の2人に5億円賠償命令…東京地裁 2022/11/18 配信
まともに支払えば人生崩壊レベルの賠償額です。

この事件で「そもそもなぜこれが著作権侵害なのか」等については前回の記事で解説しています。



しかし、なぜこの金額になったか知っている人は意外に少数かもしれません。

著作権侵害の場合の損害額の計算については著作権法上いくつかの算定基準が与えられています。
損害額の立証困難への救済規定とも言われます。

それが著作権法114条です。

この1項は、「著作権侵害行為によって作成された侵害品の譲渡数量×侵害行為がなければ販売できた物(DVDとか)の単位数量当たりの利益額」という基準を与えています。

また、3項では、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」すなわち、「ライセンス料相当額の損害額を請求できる」という基準を与えています。
ネット上でも、この素材を使うには〇〇円みたいな写真とかありますよね。まあ、あんな感じと考えてもらえばいいかと思います。

先ほどのファスト映画判決の記事では、

判決は、2人が著作権を侵害したと認定した上で、損害額についても原告側の主張を認めた。ユーチューブで正規に鑑賞できる映画のレンタル価格が1作品あたり400円を下回らないことなどを踏まえ、1回の再生につき200円が相当と判断した。

とされています。
この「1回の再生につき200円」というのは、YouTube上での各映画作品のレンタル視聴のための価格400円~500円を基準に導いた金額のようですが、ここから3項を適用して総再生回数を掛け算して「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を算出したようです。

ただ、これ、レンタル価格があるので導き出せた数字ですよね・・・?

そのような単体でのレンタル価格がないYouTube動画の場合どうなるんでしょうか? それをこれから本記事のメインとなる裁判例の紹介で見ていきたいと思います。

②令和の虎キャプチャ画像投稿事件判決の紹介

東京地方裁判所令和4年11月24日判決です。

「令和の虎」というYouTubeの人気チャンネルの運営会社が原告となり、「令和の虎」のYouTube動画からキャプチャした静止画(「本件静止画」)を自身の複数のブログ記事(「本件各記事」)に大量に貼り付けたブロガーの被告に損害賠償請求をした事件でした。

しかしやはりここで、YouTube動画による収益はあるとはいえ、被告が貼り付けたのは動画そのものではなく画像だし、そもそも売ってる物でもないし、どうやって賠償額を算定するの?という疑問が沸き上がります。

そこで、原告は以下のように主張しました。

権利侵害者が著作権の行使に対して支払わなかった使用料(利用許諾料)相当額は、権利侵害者にとって不当利得であり、著作権者はこの返還を請求することができるところ、法114条 3項の趣旨は、その不当利得の金額を著作権者が受け損害の額とみなして、その賠償を請求することができることとした点にある。
このため、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」は、過去における著作物の使用料や業界における料金相場を参考に算定される。 ・・・ 映像コンテンツから静止画をキャプチャした場合の当該静止画の画像利用料については、日本放送協会(以下「NHK」という。)が料金表を公表している。
当該料金表は、「写真として保存された素材か、映像からキャプチャした素材かで複製料が大きく異なる」と断った上で、「国内撮影」、「カラー」のキャプチャ画像の最低額を1カット (枚)あたり2万円に設定している。
被告は、本件各記事において、本件各動画から静止画をキャプチャして利用しているところ、NHKの画像利用料の最低額である1カット(枚)あたり2万円を適用した場合、被告による本件静止画の使用料は、以下のとおり、合計728万円となる。

これを受けて、裁判所は、この原告主張の方向性を概ね認めつつも、被告による本件静止画の使い方が、1本の動画につき30~60枚程度キャプチャ画像を時系列で貼っていき、それぞれ本件静止画ごとに説明を追記するというもので、ほぼ動画を丸ごと把握できる内容になっていたことから、「むしろ動画としてそのまま使用する場合の使用料を基準にすべき」ということを言って最終的に以下のように判示しました。

原告が本件各動画の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(法114条3項)の算定に当たっては、映像の使用料に係る各規定を主に参照しつつ、上記各規定を定める主体の業務や対象となる映像等の性質及び内容等並びに本件各動画ないし原告チャンネルの性質及び内容等をも考慮するのが相当である。
加えて、著作権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、使用に対し受けるべき額は、通常の使用料に比べて自ずと高額になるであろうことを踏まえると、原告が本件各動画の著作権の行使につき受ける べき金銭の額に相当する額(法114条3項)は、合計200万円とするのが相当である。

「実際の被害状況的に700万円超えはちょっとやりすぎな感じがするし、まあ、200万円くらいが相当じゃない?」という結論ありきの判決のような気もしますが、このNHKとかのメディアのライセンス料を基準とするやり方は今後も通用していくでしょうね。

本事件では「令和の虎」の動画内容をほぼ説明しきるような画像の使い方だったため、映像のライセンス料が基準となりましたが、掲示板に1枚、2枚画像を貼り付けて批判したりするような使い方だと原告主張のように静止画のライセンス料が基準となり、1枚につき2万円とかになっていくのではないかなと考えられます。

③まとめ

どうでしたでしょうか?

著作権侵害した場合の賠償金ってすごい高いんでしょ?と漠然と思っている人も多かったと思いますが、実際には、侵害した対象の著作物によって全然違ってきたりするんですね。
少しでも参考になれば幸いです。

著作権やネット上のトラブルその他法的トラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
弁護士法人長堀橋フィル 弁護士満村和樹
( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで。

では!


こんにちは!
弁護士の満村です。

弁護士として仕事をしていてよく思うのは、「著作権ってみんな存在は知っているはずなのになぜそんなに軽視するのか?」ということです。

その答えは、「ワードとして知っているけど中身はよく知らない」というものかもしれません。

特に今は個人が簡単にネット上で発信を行う時代。

日々大量の著作権侵害が発生しています。

そんな中で起こった悲劇的な著作権侵害事件が「ファスト映画」をめぐる事件でしょう。

東京地方裁判所は2022年11月17日、「ファスト映画」を著作権者に無断でYouTubeにアップロードした2人対し、著作権侵害による損害賠償金5億円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

また被告らは刑事事件としても有罪判決を受け、執行猶予付きとはいえ、懲役刑が課せられ、罰金刑も併科されました。
人生崩壊レベルの悲劇ですが、著作権侵害の怖さが分かりますね。

さて、では、この事件何がいけなかったのでしょうか?どのようにすれば責任を逃れられたのでしょうか?簡潔に説明していきます。

1 著作権って何?
著作権は著作物について認められる権利で、簡単に言うと、その著作物を公表したり、編集したり、売ったりできる権利です。
著作物をネット上にアップすることも著作権者ができることで、基本的に他の人はできません。

では、著作物とは何か、ということですが、以下の通り説明できます。

(1)「思想又は感情」を表現したものであること → 単なるデータが除かれます。
(2) 思想又は感情を「表現したもの」であること → アイデア等が除かれます。
(3) 思想又は感情を「創作的」に表現したものであること → 他人の作品の単なる模倣が除かれます。
(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること → 工業製品等が除かれます。

(文化庁HPより 著作物について

こう見ると、何か芸術的なすごい物にしか認められないのではと思うかもしれませんが、例えば日々のツイートやこういうブログ記事なんかにも認められることが多いです。

映画が著作物に当たるというのは当然ですね。

2 映画の要約動画は元の映画の著作権を侵害するの?
「ファスト映画」はいろんなチャンネルからいろんなものが配信されていました。
でも基本的にその内容はある映画のダイジェスト版を作り、ナレーションを加えて作品を紹介するというものです。

映画そのものではないし、創意工夫して映画を宣伝しているようなものだからいいのではないか?と思う人もいるかもしれません。

ただ、先にも述べたように著作物を編集したり手を加えることも著作権者しかできないはずです。
そして、手を加えたものを全国に無断でばらまいたわけですから悪質です。

彼らが唯一言い逃れできる余地もありました。 それは「引用」(著作権法 第32条第1項)です。

自身の著作物を作成するにあたり、他人の著作物を常識的で正当な範囲内で拝借することは「引用」として適法とされるのです。

ただ、この「常識的で正当な範囲内で拝借する」と言えるためには、あくまで自分の作品が主で、他人の著作物が従(サブ)と言えるような力関係が必要になります。また、拝借してくる必要性もないといけません。

例えば参考文献的にちょろっと他人の書籍の一文を示す、といった具合ですね。

「ファスト映画」はこの点明らかに映画を見せることがメインであり、サブ的にナレーションを加えたりしてるわけですね。 主従逆転しており、さすがに「引用」は認められません。

このようにして「ファスト映画」は明確な、そして甚大な著作権侵害として多くの責任を作成者に課す結末となりました。

3 著作権侵害にならないためには
残念ながら、映画のシーンを切り取って使うことも、また、ストーリーを紹介してしまうことも基本的に著作権を侵害してしまいます。

もっともごくごく簡潔なあらすじを短い文章で抽象的に書く(話す)くらいであれば大丈夫と考えられます。
そして、あくまでも自らの思想や、社会問題に対する問題意識を語るような「意見・評論」をメインにした動画にするのが重要です。独自の映画論を語るというのでもいいでしょう。
映画をちょっとした題材として、ほんの少しその存在を拝借する程度に留めれば、「引用」ということができると考えられます。

これは、自らの元から持っていた意見を言うために映画のストーリーの一部を題材にする必要性が認められるからと言えます。

これに対して、映画のワンシーンを切り取った動画、又は静止画については、軽微なものでも基本的に「引用」は認められず、違法だと思った方がいいですね。映像まで拝借する必要性・必然性ってあるんですか?という話になります。(ただ、かなり軽微であれば刑事告訴したり、損害賠償請求してくる映画会社も無いかもなので、まあ実質セーフですかね・・・笑)

でもできれば、その映画の雰囲気と似たフリー素材の画像を使うなどして、創意工夫した動画を作ってみてください!

4 まとめ
以上、YouTube上で起こった「ファスト映画」の事件を参考に著作権について説明しましたが、著作権の問題はなにも映画だけの問題ではありません。
ツイッターのアイコンをアニメのキャラにしている人、テレビ番組の面白い一幕を撮影してSNSに上げている人等々、挙げだしたら著作権侵害事例はキリがありません。
いつ責任追及されるか分からない現状にあるので、著作権についてはよくよく気を付けてください。

著作権やネット上のトラブルでお困りの方は、ご相談をお受けいたします(30分5500円税込み)。
弁護士法人長堀橋フィル( k-mitsumura@nflaw.jp or 06-6786-8924 )まで。

ご無沙汰しております、弁護士の満村です。

警視庁がガーシー氏の複数の関係先へ捜索に入ったことからガーシー氏の逮捕もあるのか?ということが話題になっていますが、ネット上における表現については日に日に社会の関心が増していると言えます。

また、弁護士としての日々の業務を通じて、ネット上のトラブルが増加傾向にあることも感じます。

そんな中にあって、四面楚歌の状況に立たされているのが物申す系・炎上系YouTuberではないでしょうか。

この記事では、物申す系・炎上系YouTuberが直面する問題を整理すると共に、彼らがこれからも生き残り、成功していけるのか考えてみました。
このように本ブログではこれからYouTubeを題材とした記事をちょくちょく出していこうかと思っております。

1 刑事罰の問題
YouTubeを通じて人や組織を誹謗中傷すれば、名誉棄損罪や侮辱罪等に当たり、逮捕される可能性があります。

例えば、YouTuberの「よりひと」さんは2021年10月に人気女性YouTuberが過去にいじめを行っていたという発言を繰り返したことで、名誉毀損容疑で逮捕され、同11月には強要未遂容疑で再逮捕されました。
そして、2022年3月に懲役2年6月、執行猶予4年の判決が言い渡されました。

「いじめを行っていたって言っただけで犯罪者になるの!?」と驚く方もいるかもしれませんが、しつこいとそうなってしまうという例ですね。
本人も「まったく捕まると思っていなかった」と発言しているようです。

現状、YouTuberがコンテンツ上の言動により名誉棄損や侮辱罪で逮捕や起訴された件数は多くないようですが最近ではガーシー氏の例もありますし、侮辱罪が厳罰化されたこともあり、今後YouTuberの逮捕が増えていく可能性はあります。

また、誹謗中傷をすれば、刑事罰に留まらず、被害者からの損害賠償請求を受けることにもなり得ます。

2 利用規約・コミュニティガイドライン違反

YouTuberは上記のような違法行為を行っていなくても、別途、YouTubeの利用規約コミュニティガイドラインに違反すれば、各種ペナルティを受けることになります。

最も違反しやすそうなものとして、「下品な表現に関するポリシー」がありますが、これには例えば「性的に露骨な表現や口調を使用している」「コンテンツで過度に冒とく的な表現を使用している」等が挙げられています。
これに違反すれば、動画が削除されたり、年齢制限が課せられます。
また、違反を繰り返せばチャンネル又はアカウントの停止も予定されています。

特に「これから注目を集めて有名になるぞ!」という駆け出しYouTuberであれば、少々手荒いことをやって注目を集めたいと思うものですが、努力も虚しくコンテンツが消されてしまうわけですね・・・。
確実に成功のハードルの高いプラットフォームとなっていると言えそうです。

3 悪口禁止強化へ
2019年6月に改訂された規約により、YouTubeの広告掲載規制が強化されました。

「炎上目的・侮辱的」な動画について、広告表示無しや広告制限となる例が追加されました。
だれかを悪く言う動画については程度にもよりますが、広告がつかず収益を得られないことになったんですね。

物申す系・炎上系YouTuberはこれでかなりダメージを受けたようです。

「悪口はもうだめ」というのはあまりに規制が広いなあという気がしますし、誰が判断するんだよという不満も出てきそうです。
この判断をしているのはAIとされています。
「AIに判断できるの?」と疑問も出てきそうですが、最近のAIは優秀なんですね。

もっとも、間違った判断があって広告が規制されたと思う場合は「人間による審査をリクエスト」できますので試してみるのはありですね(https://support.google.com/youtube/answer/7083671?hl=ja)。

4 物申す系・炎上系はもう出てこないのか
これまで見てきたように、物申す系・炎上系YouTuberの未来は決して明るいとは言えません。

ただ、無名のYouTuberにとっては「物申す」「炎上」は無くてはならない武器かもしれません。

刑事罰に当たる行為をしてはいけないのは当然で、また、利用規約・コミュニティガイドライン違反をしていてはアカウントを継続できないので避けるべきですが、広告を諦めて多少手荒いことをやって知名度を上げるという戦略はこれからも続くような気もします

そして、そのような方々に気を付けて欲しいのは、①嘘の事実で人を貶めない、②人の人格攻撃をしない、③物申すにしても、発生した「事実」をベースに、それを批判するという内容にする、といったことでしょう。

正当な表現の自由の行使であれば弁護士も未来のYouTuberを応援しています!

弁護士に話を聞いてみたいと思った方は是非ご連絡ください。
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