弁護士みつむらの法律blog

大阪の弁護士です。ネット関連の法律問題(誹謗中傷・知的財産等)や労働関係の法律問題についての発信をしています。

ご無沙汰しております、弁護士の満村です。

警視庁がガーシー氏の複数の関係先へ捜索に入ったことからガーシー氏の逮捕もあるのか?ということが話題になっていますが、ネット上における表現については日に日に社会の関心が増していると言えます。

また、弁護士としての日々の業務を通じて、ネット上のトラブルが増加傾向にあることも感じます。

そんな中にあって、四面楚歌の状況に立たされているのが物申す系・炎上系YouTuberではないでしょうか。

この記事では、物申す系・炎上系YouTuberが直面する問題を整理すると共に、彼らがこれからも生き残り、成功していけるのか考えてみました。
このように本ブログではこれからYouTubeを題材とした記事をちょくちょく出していこうかと思っております。

1 刑事罰の問題
YouTubeを通じて人や組織を誹謗中傷すれば、名誉棄損罪や侮辱罪等に当たり、逮捕される可能性があります。

例えば、YouTuberの「よりひと」さんは2021年10月に人気女性YouTuberが過去にいじめを行っていたという発言を繰り返したことで、名誉毀損容疑で逮捕され、同11月には強要未遂容疑で再逮捕されました。
そして、2022年3月に懲役2年6月、執行猶予4年の判決が言い渡されました。

「いじめを行っていたって言っただけで犯罪者になるの!?」と驚く方もいるかもしれませんが、しつこいとそうなってしまうという例ですね。
本人も「まったく捕まると思っていなかった」と発言しているようです。

現状、YouTuberがコンテンツ上の言動により名誉棄損や侮辱罪で逮捕や起訴された件数は多くないようですが最近ではガーシー氏の例もありますし、侮辱罪が厳罰化されたこともあり、今後YouTuberの逮捕が増えていく可能性はあります。

また、誹謗中傷をすれば、刑事罰に留まらず、被害者からの損害賠償請求を受けることにもなり得ます。

2 利用規約・コミュニティガイドライン違反

YouTuberは上記のような違法行為を行っていなくても、別途、YouTubeの利用規約コミュニティガイドラインに違反すれば、各種ペナルティを受けることになります。

最も違反しやすそうなものとして、「下品な表現に関するポリシー」がありますが、これには例えば「性的に露骨な表現や口調を使用している」「コンテンツで過度に冒とく的な表現を使用している」等が挙げられています。
これに違反すれば、動画が削除されたり、年齢制限が課せられます。
また、違反を繰り返せばチャンネル又はアカウントの停止も予定されています。

特に「これから注目を集めて有名になるぞ!」という駆け出しYouTuberであれば、少々手荒いことをやって注目を集めたいと思うものですが、努力も虚しくコンテンツが消されてしまうわけですね・・・。
確実に成功のハードルの高いプラットフォームとなっていると言えそうです。

3 悪口禁止強化へ
2019年6月に改訂された規約により、YouTubeの広告掲載規制が強化されました。

「炎上目的・侮辱的」な動画について、広告表示無しや広告制限となる例が追加されました。
だれかを悪く言う動画については程度にもよりますが、広告がつかず収益を得られないことになったんですね。

物申す系・炎上系YouTuberはこれでかなりダメージを受けたようです。

「悪口はもうだめ」というのはあまりに規制が広いなあという気がしますし、誰が判断するんだよという不満も出てきそうです。
この判断をしているのはAIとされています。
「AIに判断できるの?」と疑問も出てきそうですが、最近のAIは優秀なんですね。

もっとも、間違った判断があって広告が規制されたと思う場合は「人間による審査をリクエスト」できますので試してみるのはありですね(https://support.google.com/youtube/answer/7083671?hl=ja)。

4 物申す系・炎上系はもう出てこないのか
これまで見てきたように、物申す系・炎上系YouTuberの未来は決して明るいとは言えません。

ただ、無名のYouTuberにとっては「物申す」「炎上」は無くてはならない武器かもしれません。

刑事罰に当たる行為をしてはいけないのは当然で、また、利用規約・コミュニティガイドライン違反をしていてはアカウントを継続できないので避けるべきですが、広告を諦めて多少手荒いことをやって知名度を上げるという戦略はこれからも続くような気もします

そして、そのような方々に気を付けて欲しいのは、①嘘の事実で人を貶めない、②人の人格攻撃をしない、③物申すにしても、発生した「事実」をベースに、それを批判するという内容にする、といったことでしょう。

正当な表現の自由の行使であれば弁護士も未来のYouTuberを応援しています!

弁護士に話を聞いてみたいと思った方は是非ご連絡ください。
30分3300円(税込)で法律相談を受けております。では!

弁護士の満村です!
今回は、新たに改正される発信者情報開示請求制度について、簡単になると言われる手続きの中身や弁護士費用はどうなるかといった点を簡潔に解説したいと思います。

1 改正や新手続きの概要
発信者情報開示請求の根拠法令であるプロバイダ責任制限法の一部を改正する法律が成立しました。
そして、この「施行日」すなわち実際にその法律が効力を持つ日が令和4年10月1日に決まりました。

この改正の目的は、簡潔に言えば、インターネットでの誹謗中傷などの権利侵害の被害者救済をより迅速・確実に図ることということになります。
これまで、誹謗中傷をした匿名の発信者が誰かを調べるには、2段構えの裁判所での手続が必要でした(多少の例外はありますが)。

まず、投稿がなされたサイトの管理者から、裁判手続きを通してIPアドレスを開示してもらい(第1段階目)、次に、そのIPアドレスを管理する接続プロバイダ(J:COMやソフトバンク等)を調査して割り出し、これまた裁判手続きにより発信者の氏名・住所等の情報を開示してもらいます(第2段階目)。
かなり時間がかかる手続きでした。

新法では、「発信者情報開示命令」という制度が新たに作られ、上記2本あった手続きが1本化されることになりました。
分かり易いように下のような図を作りました(小さくて見えにくい場合は画面を拡大するか画像をクリックしてください)。

発信者情報開示請求新旧図解

新法では、請求者は、まず、サイト管理者を相手方とする「IPアドレスの開示命令」を裁判所へ申し立てるとともに、「提供命令」の申立てをします。
「提供命令」が発令されると、サイト管理者から請求者に対し、接続プロバイダの名称が提供されます。
この「提供命令」は比較的緩い要件のもと認められるため、すんなりと接続プロバイダが判明することでしょう。
次に請求者は、開示された接続プロバイダを相手方とする、「住所及び氏名の開示命令」を裁判所へ申し立てるとともに、「消去禁止命令 」の申立てをします(※この「消去禁止命令」は、投稿の足跡であるログを接続プロバイダに長期保存してもらうために申し立てます)。
請求者が、「接続プロバイダに対し開示命令の申立てをした」旨をサイト管理者に通知すると、サイト管理者は接続プロバイダに対し、IPアドレス等の情報を提供することになります。これを受け取った接続プロバイダは「投稿は誰が行ったものなのか」自社の契約者情報から検索することができるようになります。
このサイト管理者と接続プロバイダとの連携はこれまでありませんでした。

最後に、申立人の主張が認められ、接続プロバイダに対し開示命令が発令されると、投稿者の住所氏名が開示されます。


2 新制度のメリットとは
これまでは、IPアドレスの開示請求と、住所氏名の開示請求と別々に裁判手続を利用する必要があったため、発信者の住所氏名が判明するまでに、長いと1年近くかかったりしていました。

この期間がかなり短縮されることが予想されますので、解決までの期間が短くなります


特に、これからは、これまでのサイト管理者との間の第1段階目の裁判手続きを終えるよりも、かなり短い期間で「提供命令」が発令されると考えられます。
そのため、接続プロバイダが判明するまでの期間が短くなることになり、“サイト管理者との裁判手続きをやっている間にログ保存期間が過ぎてしまって投稿は違法なのに開示がされない”という非常に残念な事態が起こりにくくなります。
実際これが一番重要と考えることもできると思います。

3 弁護士費用は安くなるのか?
結論から言うと、多少弁護士費用の相場が安くなることが予想されます

もっとも、上で述べた通り、新制度では、請求者側は、
①サイト管理者への発信者情報開示命令申立
②提供命令申立
そして、
③接続プロバイダへの発信者情報開示命令申立
④消去禁止命令申立
をすることになります。

要は、証拠収集・書面作成・提出等、やることが多いという状況が抜本的に解消されるということにはなりません。

弁護士に依頼する場合、これらを全て弁護士が行うことになりますが、このようにこの改正で弁護士の業務量が劇的に減少するということには繋がらないため、中には弁護士費用を下げない法律事務所もあると思いますし、下げるとしても、「手続きが2つから1つになったんだから、これまでの半額にします!」というレベルで値引きする法律事務所はほとんど出てこないでしょう(勿論、これまでの費用が高い事務所ほど値下げはしやすいと思いますので、「半額」にします!という広告を目にすることはあるかもしれません・・・)。
もっとも、かける労力や時間は多少減少するでしょうから、その分の相場の引き下げは予想されるということになります。

この点について、弊所では、弁護士費用の減額を想定して動いています。
例えば、これまで全部で50万円程度いただいていた件では、大体40万円くらいに、40万円いただいていた件では、大体30万円ちょっとくらいになる感じの減額を検討中です。
勿論これは投稿件数や内容次第になります。

できる限り弁護士費用を抑えることが被害者救済に繋がりますし、訴えられた発信者が無駄に「調査費用」として相手方の弁護士費用を払わせられる状況を緩和することにも繋がりますので、その辺頑張りたいと思います。

4 請求される側は改正でデメリットがあるの?メリットがあるの?
請求側の調査費用(発信者情報開示請求に要した弁護士費用)は一部又は全額が損害として請求される側の負担となりますから、その金額が減るかもしれないという点は請求される側にメリットがあります。
また、請求される側の方の悩みとして、「争いがかなり長期間になって精神的に辛い・・・」といったことをよくお聞きしますが、良くも悪くも結果が出るまでの時間が短縮されるので、そういった悩みは軽減されるかもしれません。
もっとも、自分の情報が開示される確実性が増すので、デメリットも大きいですが。。

5 まとめ
以上、ごく簡潔に「新・発信者情報開示請求制度」を解説しました。
そして、新制度による請求側のメリットとして、①早期解決が期待される、②それにより匿名投稿者の特定の確実性が増す、②弁護士費用が安くなる、ということを紹介しました。

ネット上の権利侵害にお悩みの方について、請求する側・請求される側問わずご相談を受け付けていますので、一度、mitsumura@vflaw.netにお問い合わせください。

では!

弁護士の満村です!

今回は、タイトルの裁判例を紹介します(福岡地判令和04年03月18日 事件番号:平成31年(ワ)第1170号)。

有名な東名高速道路あおり運転事件 ニュース記事 )の被告人と同姓であったために、とある掲示板上で被告人の父親だと名指しされたAさんが投稿者を訴えた事件です。
実際はAさんは父親ではありませんでした。

こういう特定班的なネットユーザーってよく見ますよね。
有名事件の真相を推測も交えて論じることでPVを稼ごうとするある種のトレンドブログのようなものもよく見かけます。
「犯人〇〇の家族は!?恋人はいるの??」みたいなやつです。

まあ、そういうお転婆なネットユーザーさんがちゃっかり訴えられたということですね。

今回注目する投稿は以下のものです。


訴えられた投稿:「これ? 違うかな。」 

です。

え??
という感じですが、
この投稿は、 「(被告人の)親って〇〇区で建設会社社長をしてるってマジ? 息子逮捕で会社を守るために社員からアルバイトに降格したの?」という内容の投稿に対する返信の形式で、B社(=Aさんの会社)の所在地や電話番号等が表示されるサイトへのハイパーリンクが設定されたURLも付してなされたものでした。

確かにこうなると前後の文脈からして、思いっきり特定の会社とその社長の社会的評価を低下させそうです。

でも、これって、「これ?」「違うかな」と質問形式なので、事実を断定していなくないですか?

当然、被告からはそのような反論が出ました。

しかし、裁判所は、
「これ? 違うかな」として断定した表現を避けてはいるものの、本件返信元記述の問いかけに答えるもので、本件返信元記述の記載内容の真実性に対して何ら疑問を呈することなく、かつ、本件投稿1を投稿した経緯の説明を付すことなく、本件返信元記述の内容を前提に、これに沿ったB社の情報を摘示したものであるから、本件返信元記述の信用性を高め、かつ、会社の名称や所在地を明らかにするハイパーリンクが設定されたURLを掲記し、情報の精度を上げるもので、本件投稿1の読者に対し、本件男性が本件会社に勤務し、B社の代表者が本件男性の親であるとの印象を与えるというべきである(一部単語の修正あり)」と判断しました。

投稿の違法性を判断するには、その投稿そのものだけを見ていればいいわけではないということがよく分かる事例ですね。

以上のように、この投稿について名誉棄損が認められました。

で、この慰謝料は、というと、 20万円+弁護士費用2万円でした。
安いですね~ここまでがっつりした名誉棄損なのに。

でも、これにはちょっと理由がありました。
・Aさんが報道機関に働きかけ、本件の虚偽情報が事実と異なる旨が繰り返し報道されるなどした
・Aは、B社とともに、本件虚偽情報に係る名誉毀損に関して、被告ら以外の者から合計約230万円の支払を受ていた
・被告らが、Aの告訴等を受けて本件各記述について、B社に対する名誉毀損罪が成立するとして、それぞれ罰金30万円の判決を受けた
とのことです。

報道があって、嘘がある程度修正されていると判断されれば慰謝料下がるんだ!
他人の慰謝料の支払でも関係あるんだ!
投稿者が刑事罰を受けていれば慰謝料が下がるんだ!
とか、少し気付きがありますよね。

はい、そんな感じでした。

ネット上では、大して調べもせず、「〇〇さんは××らしいよ」「〇〇さんの言ってたことは嘘で××が正しいらしいよ」みたいな推測の域を出ない発言が多く見られ、今日も人々の心を惑わしています。
我々法律家からすると、そのような「根拠なんて要らない」と言わんばかりの態度には驚くばかりです。
「根拠」の無いことへの危機意識をしっかり持ってこのネット社会を生きていきたいですね。
では!

法律相談は、mitsumura@vflaw.netまで。 

このページのトップヘ